貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

226.裏切り者

ローズはボストンのにやけ顔が近づいてくると、ゾクゾクと背筋が寒くなる。

｢やだ！むり！気持ち悪い！近づかないで！｣

逃げようとするがガブリエルの押さえる力は強くビクともしない…

｢うぅ…｣

ローズはあまりの気持ち悪さに目に涙が溜まった…

あと数センチでボストンの手がローズの肌に触れるところで…

｢やっぱり無理だ…全くあいつらはいつ来るんだ…｣

ガブリエルがそう呟くと…サッとローズを後ろに隠した。

｢えっ…｣

ローズはびっくりしてガブリエルの後ろで腰を抜かす。

｢ガ、ガブリエルさん？｣

｢いや、さすがにあれを見逃す訳には行かないからな…それにそんな事をしたら俺が殺されそうだ｣

ガブリエルは苦笑してローズを見ると

｢ガブリエル…どういう事だ…｣

ボストンがガブリエルを睨みつけた。

｢ここでこんな行動に出たんだ、悪知恵の働くあんたならわかるだろ？｣

ガブリエルがバカにするようにボストンに笑いかけた。

｢この…裏切り者が、今すぐにその娘を渡せばお前だけは見逃してやってもいいぞ…｣

｢いや、泣いてる女性を置いてそんな事は男としてできないでしょ？｣

ガブリエルは肩をすぼめて困ったように言うとローズにウインクした。

｢ふん、ならお前にはもっと良い奴を紹介してやる。お前みたいな綺麗な顔が好きな変態貴族をな！｣

ボストンは床に転がっていた手下の男を蹴りあげる！

｢起きろ！｣

ガシッガシ！と蹴ると

｢う、うーん…｣

腹を押さえながら目を覚ました…

｢おい、お前の上司が裏切った…あいつをどうにかすればお前の罪は許そう｣

ボストンが男にそう言うと、男はわけがわからずにガブリエルとローズ、ボストンを交互に見る…そして状況を理解すると…

｢なら…あの女の味見…俺にもさせてくれよ｣

男の言葉にボストンは嫌悪するが

｢私の後でいいなら好きにしろ｣

しょうがないと了承した。

｢へへへ！そう来なくっちゃ！やい！ガブリエル！俺はお前に会った時から気に食わなかったんだ…いきなりリーダー面しやがって！｣

｢いきなりって…お前達がなんにも出来ないから指示出してやってたんだろうが…俺だって出来るならもっとひっそりと潜伏してたかったのによ…｣

ガブリエルが呟くと

｢何をごちゃごちゃと言ってる！もう手加減しねぇからな！｣

男はガブリエルに襲いかかると

｢手加減してやってたのは俺だから｣

ガブリエルは男の腕を掴むとグイッと捻って後ろで絞る。

｢ぎゃぁー！い、痛い！折れる！｣

ギシギシと音を立てている男の腕をガブリエルはさらに捻ると…

ボキンッ…

綺麗な骨の折れる音がした。

｢あぁぁー！｣

男は腕をダランと下げて泣き叫ぶ…

｢おいおい、ローズなんか足が折れても泣きも叫びもしなかったぞ…それが男のお前が…恥ずかしい…｣

ガブリエルが首を振ると…

｢じゃあ次はあんただな…｣

ボストンを見つめた。

｢くっ！だ、誰かー！ここだ！早く来い！｣

開いた扉に向かって大声をあげた！

その声に反応してこちらに向かう足音が聞こえてくる。

｢ふふふ、少しはできるようだがここにいる人数相手に何処まで持つかな…｣

ボストンは部下が来るのを笑いながら待っていた。