上 下
152 / 318
連載

211.誘拐

しおりを挟む
カイルとスチュアートはローズ達と別れた場所へと急いで向かうと…途中城下の人達が集まって騒ぎがおきていた…

「スチュアートさん!あそこにクリスが!」

人混みにクリスを見つけると、カイルとスチュアートは人をかき分けクリスの元に向かう!

「クリス!」

「クリス様!なぜまだこんな場所に?」

二人の姿にクリスは顔を強ばらせた…

そんなクリスの様子にカイルは嫌な予感がする。

「ローズは!?」

カイルがガシッとクリスの肩を掴んだ。

「ね、姉さんは…今、行方不明です…ここで休んでいたはずなのに…急に姿が見えなくなって…今みんなで探していたところなんです…」

クリスがガクッとうなだれると

「僕が少し目を離した隙に…」

「一体何があったのですか?この惨状は?」

すぐ近くでは店に突っ込んだと思われる馬車が消し炭になっていた…火は消えているが周りにはまだ馬車の残骸が残っている。

「僕らが帰っている途中になんか視線を感じたので急いで戻っていたんです…そしたらすぐ近くで馬車が暴走したらしくこの有様で…火も出ていまして、僕らは乗っていた人の救出をしていました…」

「馬車…暴走…」

スチュアートさんが顔をしかめると

「中の人達は姉さんやガルムさんのおかげでどうにか無事でした…しかし中の人が目が覚めたようなのでガルムさんが確認に向かい…疲れた姉さんはここにバルトさんと座って待っていたんです…」

そこには木が置いてあり、座って休むにはちょうどいい場所だった。

「僕も様子を見に少し離れて…戻ってくるともう姿は無く…ジェシカさんやロドムさんが街の人に声をかけて探しているのですが…」

クリスはそこまで説明してぐっと拳を握る。

「クリスくん!ローズ様はいた?」

はぁはぁと息を切らしてジェシカさんが走って戻ってきた。

「あっ…スチュアートさん…」

スチュアートさんとカイルに気がつくと…

「すみません…今手伝ってもらい街中探しているんですが…」

ジェシカさんが謝ると

「いえ、あなた達のせいではありません。私達が追っていた男達の仕業でしょう…」

「えっ…それってどういう事ですか!」

クリスが詰め寄ると

「私達が捕まえた男達が言っておりました…私達を二手に分けたのは作戦だと…バルトさんとローズ様を狙っていたのでしょう…今や二人はあの木の果実の事を知る唯一の人物ですから…」

「しかしそれは口外していないはずです!」

「そうですが、ローズ様はあの果実をお茶会で披露してしまいました…いくらなんでもあの大人数の全ての口を塞ぐのは難しいと思っていました…」

「姉さんがそんな秘密を?バルトさんもただのカーバンクルとは思っていませんでしたが…なんで僕に話してくれなかったんだろ」

クリスが寂しそうな顔をする。

「それはもちろんクリス様を巻き込みたくなかったからでしょう」

スチュアートさんがそっとクリスの肩に手を置く。

「とりあえず戻りましょう。あの男達が何か知っているかも知れません!」

「そうですね」

クリスもコクッと頷くと

「そういえばガルムは?」

「それが責任を感じて酷い様子でしたので…馬車に乗っていた人の方を優先するように言ってしまいました…あのままだと自分の命を投げ打っても構わなそうだったので…そんな事したらきっと姉さんは喜びませんから」

クリスが力なく笑うと

「ありがとう…きっとローズは見つけて見せる」

カイルはしっかりと頷くと

「ぼくも行かせて下さい!きっと役になってみせますから!」

力強い眼差しにカイルとスチュアートは頷くと王宮へと走り出した。
しおりを挟む
感想 1,399

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
恋愛
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには許嫁の公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 メイヴィスはサイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。