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210.狙い

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「何を笑っている…」

カイルは不敵に笑う男の体を踏みつけると…

「ふふふ…これが笑わずにいられるか…」

「なんだと…」

カイルが足の力を強めると…

「グッフッ…」

男が辛そうに息を吐く…その様子に力を弱めると

「何が言いたい!」

「俺達の狙いはお前らを引きつける事なんだよ…」

男はクックックと可笑しそうに笑う。

「まんまとここまで着いてきやがって…ここに来た時点で俺達の作戦は完了してるんだよ!」

「どういう事だ…」

カイルが再び力を込めると…

「まさか…狙いはローズ様とバルトさん…」

「ローズ?ああ、あの女の名前か…名前なんざ聞いてねぇからな…カーバンクルの方が大事な品物だ」

「殺す…」

カイルは男に剣を突き立てると無表情で男の顔めがけて剣を下ろした。

「えっ?」

男は唖然と剣先を見つめていると…

「待ちなさい!」

スチュアートさんの声にカイルは止まった…

見ると男の眉間に剣先が触れているところで剣が止まっている…男の眉間からはツーっと血が流れていた…

「その男にはまだ聞きたいことがありますから殺してはいけません」

スチュアートの言葉にカイルは怒りのあまり睨みつけると

「こいつらローズを…」

カイルは言葉を止めた…見るとスチュアートさんからは笑顔が消えて殺気が漏れていた…

「カイル様…殺すことが終わりではありません…殺してくれと頼まれるほどの恐怖を与えることだって可能なのですよ」

「ひぃ…」

「ローズ様とバルトさんの無事が確認できない今、その男を殺すことは妥当な判断とは言えません…すぐに確保してローズ様の元に向かいましょう…ローズ様に何かあれば…」

スチュアートは近くにあったブロックの塊を掴むと…

「体の色んな部分を一つずつ潰して差し上げますからね…」

そう言って微笑むとブロックをクッキーでも砕くように粉々にして見せた。

カイルとスチュアートは男達をギュッとキツく縄で縛り付けると…

「ローズ達は大丈夫でしょうか…」

カイルが心配そうにしながら男達を運ぶ為に外に放り投げる。

「この時間ならもう王宮内に戻っているはずです。ガルムさんもついていますし、ローズ様もクリス様もそこらの兵士より戦えますから大丈夫でしょう」

スチュアートさんが頷くと

「余程予測の範囲外の自体がおきていなければ…」

「そ、そうですよね。とりあえずこの男だけ連れて戻ります」

「そうですね、さすがに一遍にこの人数を運ぶのは無理そうですから」

スチュアートとカイルは男を担ぐと王宮へと急いだ。

カイル達は城門に着くと気がついたカールが声をかける。

「カイル様、スチュアートさんおかえりなさい」

「カール!ローズ達は戻ってきているか?」

「ローズさんですか?いえ…まだ、スチュアートさん達と一緒に出かけましたよね?」

カールが不安そうに後ろのスチュアートに視線を合わせると

「向こうで二手に別れたんです。ガルムと一緒に戻るように言ったのですが…」

「王子達はもう既に戻られていますが…ローズさん達の姿は見ていません…ここを通らないはずはないと思うのですが」

「まさか…」

カイルとスチュアートは担いでいた男をカールに投げつけると

「そいつを牢にぶち込んでおいてくれ!」

そう怒鳴ると城下へと走って行った…

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