貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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204.代わり

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「危なかった…」

「間一髪ですね」

気を失っている高貴な服に身を包んだご婦人と娘を安全な場所に運んで戻ってくると、馬車は火に包まれていた…

「ローズ様!」

ロドム達が声をかけると…

「こっちです…」

ローズと兵士は瓦礫を退かした場所からひょっこりと顔を出した。

二人は地面に座り込みほっと息をつくと…

「みんな無事でよかったですね」

ローズが兵士に笑いかけた。

兵士は笑っているローズを見ると…

「ローズ様…無理しないで下さい!私の代わりはいますがローズ様の代わりはいないのですから!」

兵士がローズを怒るとローズはムッと顔をしかめる。

「何言ってるんですか!あなたの代わりだっているわけないですよ、あなたはあなたですよ、ガルムさん」

ローズはすすで汚れた顔でガルムを軽く睨む。

「え?私の名前を?」

「ええ、鍛錬場ではお世話になりました。兵士の皆さんの事はスチュアートさんやカイル様からよく聞いてますよ」

「あの二人が!?」

「はい、皆さんの成長を喜んで話したりしてましたよ」

「まさか…」

ガルムさんが驚くと

「いつも残って鍛錬をして頑張っているとか攻撃が一度当たった事があったとか…」

「あっ…」

覚えがあるのかガルムさんがハッとした顔を見せてローズを見つめると

「ね!ガルムさんの代わりになる人なんていません。ガルムさんだけじゃなくて代わりになる人なんて何処にもいませんよ…きっと誰もが誰かの唯一の存在だと思いますよ。スチュアートさんもカイル様もガルムさんに期待しています」

「はい…これからも精進致します…」

ガルムはじっと下を向きながら何度も呟いた…


「それにしても姉さん酷い顔だね、全然令嬢に見えないよ」

クリスが困った姉を見つめる。

「そう言うクリスだって真っ黒よ!でも…汚れてても可愛いわ」

ローズが汚れたクリスが可愛いことに首を傾げる。

「もう…何言ってるの…」

クリスが苦笑する。

「えっ?姉さん…て、もしかしてローズ様の弟さんですか?」

ロドムとジェシカがクリスを見つめると

「はい!私の弟のクリスです」

「初めまして、クリス・タウンゼントです」

クリスが二人に頭を下げると

「お話は聞いております!ローズ様よかったですね~弟さんに会えたて、それでお土産は渡したんですか?」

ロドムが笑いかけると

「えっ?…あー!」

ローズがクリスに買ったお土産を思い出す!

「お土産?」

クリスがローズを見ると

「あれ…言っちゃ駄目でしたか…」

ロドムが気まずそうに二人を見つめた。

「だ、大丈夫です!どうせ渡すつもりでしたから…クリス後でまた言ってね」

また忘れそうなローズはクリスにお願いすると

「僕のお土産を僕が催促するの!?」

クリスは驚いて姉を見つめた!

そんな様子にジェシカとロドムがクスクスと笑っていると

「ご婦人が目を覚ましましたよ!」

看病していた街の人が声をかけてきた。

「私が話を伺って来ますね」

ガルムさんが立ち上がると

「はい、私はここで少し休んでいます…」

さすがに疲れた様子のローズが腰掛けたまま声をかける。

「ローズ様…大人しく待っていて下さいね」

「わかってますよ」

ローズはバルトを膝に乗せると言われた通り大人しく待っていた。





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