貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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202.二手

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「お二人共、イチャつくのはそのくらいにして下さい」

クリスが顔を赤くしている二人を注意すると

「「イチャついてないです!」」

二人が声を合わせて慌てた様子で振り返る。

「「しー!」」

クリスとスチュアートさんがうるさいと口の前で指を当てると…

「男が動きますよ!」

スチュアートさんが路地にいた男が動き出した事に気がつくと、四人と1匹は顔を見合わせる。

「ローズとクリスは王宮に戻るんだ」

「そうですね、お二人共ここまでお付き合い下さりありがとうございました。後は私とカイル様達に任せて下さい」

「「えー!」」

二人は納得出来ないと顔をしかめる。

すると男が路地奥に消えて行ってしまった!

「すみませんがあなた!このお二人を王宮までお連れして下さい!」

「頼むぞ!」

スチュアートさんとカイルは近くの兵士に声をかけると男の後を追った。

置いていかれた二人は…

「どうする?姉さん」

クリスがローズを見ると

「ここまで来て帰れなんて言われてもね」

ローズがニコッと笑う。

「いや!ダメですよ!お二人を帰さないと私があの二人に殺されます!」

「いやいや…大丈夫ですよぉ、そんな事あの二人がするわけないじゃないですか」

ローズが笑うと

「……」

兵士が神妙な顔で首を振る。

「あれ?」

ローズが兵士の真剣な表情に首を傾げた。

「どうかお願いします!お二人共大人しく王宮までついてきて下さい!」

兵士が人目もはばからずに土下座しだした。

「えー!ちょっと待って下さい!わかりました!わかりましたから!」

ローズが慌てて兵士を立たせると

「本当ですか!?よかった~」

兵士はほっとした顔で胸を撫で下ろす…ローズ達は兵士の手前仕方なく言う事を聞くしか無かった。

警戒しながら前を歩く兵士の後をローズとクリスがついて行くと

「姉さんこのまま帰るの?」

クリスがコソッとローズに耳打ちする。

「お前達…ここまで来ている事でさえどうなんだ?ここは大人しく帰っておけ」

バルトがローズの肩に乗りながら二人の会話を聞いていると…

「うーん…でも王宮まで帰らないとあの兵士さんの迷惑になっちゃうからね。ここは大人しく一旦戻ろう」

「そうだね、わかったよ」

クリスも頷くと大人しく後をついて行く…するとローズとクリスが急にピタッと足を止めた。

「どうしましたか?」

兵士がローズ達の様子に後ろを振り返ると…

「いえ…兵士さんすみませんが少し急ぎませんか?」

ローズがそんな事を言い出すと

「そうですね…僕もその方がいいと思います」

クリスも真剣な顔で頷く。

「わ、わりました…では少し足を早めますね…」

二人の真剣な様子に兵士はキョロキョロ周りを確認しようとすると…

「そのままで…」

ローズが止める。

「前見て歩いて下さい」

「はい」

兵士は言われた通りに歩き出すと

「見えませんが少し離れた所にさっきの男の人と同じ匂いがしました…もしかしたら仲間かも知れません」

ローズは歩きながら兵士に説明すると

「まさか先程の男はスチュアートさんとカイル様を離す為の囮だったと…」

「わかりませんが…こっちの後をつけているのは確かだと思います」

「うん、足音が僕らと同じ歩幅だよ」

クリスも頷くと

「お二人共もう少し速度をあげても大丈夫でしょうか?」

兵士がローズ達に聞くと

「ええ問題ないです」

「僕もです」

二人は落ち着ついて頷き返す。

「では…」

兵士は不自然にならない程度に速度をあげた。

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