貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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194.確認

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カイルとボストンが睨み合っていると…遺体を確認に行った側近と兵士が急いで戻ってきた。

レイン国王の元にまっすぐ行くと耳打ちをする…

「遺体の方を確認して来ました…ボストン大臣の言う通り損傷が激しく…かろうじて男とわかる程度でした…髪は隣国に多い茶系としか……ただ…」

「そうか…」

側近が何か囁くと、レイン国王がうーんと思考する。

「どうされましたか?確認出来ませんでしたか?」

ボストンがレイン国王を見つめると

「やはり損傷が激しい様だな、目撃された男によく似てはいるそうだが」

「なら斥候とは証明出来ないのでは?」

ロイが父を見ると

「なぜせっかく驚異が去ったのにそんなにも怯えるのです?」

ボストンがフンと鼻で笑うと

「あの森にいて、隣国の衣服を纏っていた…それ以外にどんな確証が欲しいのですか?」

ボストンが訴えるように国王を見つめる。

「そのように怖がっているから隣国から攻め込まれようとするのです…もっと強気な態度でこちらから仕掛ければいいものを…」

ボストンが煽ると

「むやみな争いをする事はない、傷つくのは民達だ…まぁ今回はボストン大臣よくやった…しかしまだ仲間や指示を出した者が近くにいるやもしれん警戒は怠るな」

『ハッ!』

兵士達が持ち場に戻ろうとすると…

「お待ちを!」

ボストン大臣が声をかける。

「ところでロイ王子の婚約者候補の件はどうなりましたか?」

「なぜ今そんな事を?」

ロイが不快そうにボストンを睨む。

「いえ…早く決めてしまわないとここに留まっている令嬢達もこんな状況では気が気じゃないと思いまして…」

「だがこんな時に呑気に出かけてなどいられない…父上、私とカイルは取りこぼしがないか確認に行ってきます」

カイルが頷くと

「それには及びません」

ボストンがニヤッと笑うと

「王子達の代わりに我らが私兵を向かわせますから…」

「必要ない…」

ロイが余計なお世話だと声を低くして睨みつけると

「見つけられなかった王子達より私の私兵の方がよろしいかと思いますが?それより王子は国の為に早くパートナーを見つける事を優先した方がいいのではないですか?」

レインはボストンを見つめると…

「わかった…ではロイは引き続き婚約者候補の方を…ボストン悪いが私兵を動かしてくれ」

「はい…」

ボストンは恭しく頭を下げるとニタリと笑った…


ボストン大臣が兵士を連れて出ていくと…たまらずロイが父親に噛み付く!

「なぜあんな奴の言いなりに!絶対に何か知ってますよあのタヌキ親父が!」

ロイがガンッ!と壁を叩きつけると

「わかっている、その遺体とやらも怪しいようだ…もう一度じっくりと確認せよ」

レインは側近に声をかけると

「もう手配済みでございます…」

側近が頭を下げた。

レインはニヤッと笑うと

「なんだ?まだ続きがあるのか?」

興味深そうに聞く。

「損傷が激しいと言いましたが…あれは不自然でした。確認できる顔が重点的に潰されており特徴的なものが有りそうな箇所もほとんどありません。確認できるのは髪と服だけ…というのはおかしいです」

「わかった…引き続き調べてみてくれ」

側近は頷くと部屋を出ていった。

「やはり代わりの遺体を用意して手柄を立てようとしたのではないのですか?」

みんなが思っていた事を言うと

「その可能性が高そうだ…やはり警戒はそのままで、いま一度森を捜索せよ」

『はい!』

兵士達が動き出すと…

「私も…」

ロイが自分もと言おうとすると…

「お前はあれを続けるんだ、こちらはブライアンとビル達に任せておけ」

ロイは兄達を見ると悔しそうにため息をついて頷いた。



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