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190.完敗

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メイド達がお茶とお菓子をテーブルにセットすると

「お前達は下がってくれ。何かあればまた呼ぶから」

「はい」

メイド達は頭を下げるとローズ達から離れて行った。

みんなの姿が見えなくなると…

「護衛もいなくて大丈夫ですか?私も今日は武器持ってきてませんよ」

ローズが心配そうにロイをみると

「武器って…いつも持ってるのかよ」

「そりゃもちろんです!領土では何がおきるかわかりませんから」

ロイは苦笑すると

「エリックがあそこから見てるから大丈夫だよ」

ロイが顔を向ける先をみると少し離れた木の下にエリックさんが鋭い目付きで周りを警戒しながら立っていた。

「あの距離ならさすがに声は届かないだろ…それで、話ってのは…なに?」

ロイは体をローズの方に向けて目を見つめる。

「それは、もちろんあれです。契約の話です!」

ローズがグイッとロイに近づくと

「あれからどうですか?なにか掴めましたか?」

「あー…そっちね」

ロイがカクっと肩を落とすと、椅子に座り直す。

「まぁローズも気がついてると思うけどジュリア嬢が怪しいんだよね」

「そうですか…確かに他のご令嬢達とお茶とかしてみましたが皆さん変な匂いとかしませんでした」

「に、匂い?」

「ああ!怪しい薬とか使ってないって意味ですよ」

「ああそうか…ローズの事だからまさか匂いでそこまでわかるのかと思ったよ」

「まさか!そこまではさすがに分かりませんよ…少ししか…」

ローズが笑いながら立ち上がると

「お茶お入れしますね」

ニコッと笑いかけた。

「あっ…少しはわかるんだ…」

ロイが軽く引き攣る。

「それは匂いは関係無くて…何となく勘ですけどね、ロイ王子だってそういうのありますよね」

「まぁ確かに嫌な予感とか、相手の雰囲気でこれは!とか思う時あるけど…ことごとく外れるね!」

「あはは!そうなんですか?」

「うん…現に今もね」

ボソッと呟く。

ローズはロイの為にお茶を入れると

「すみません、用意されたお茶ですがどうぞ」

ロイの前にお茶を置くと自分の分を持って隣に座る。

「本当は疲れが取れるお茶でも出して差し上げたかったんですが…何分急で、でもこれもとっても美味しいです!」

ローズが一口飲んでニコッとロイに笑いかけるとロイもお茶に手を伸ばす。

「うん…はぁ…なんか久しぶりにゆっくりお茶を飲んだ気がするよ」

ふっと肩の力を抜くと

「よかった…今日は少しでもゆっくり過ごして下さいね」

「ゆっくりって…ローズずっとここでお茶飲む気か?」

「はい、そのつもりですけど…」

「いや!今日は君とデートの日だよ、どこでも好きなところに付き合うよ」

ロイがお茶を置いて立ち上がると

「じゃあここに座って付き合って下さい」

ローズはロイが立った隣の席をポンポンと叩く。

「デートはお互いが楽しむ物だそうですよ。ロイ王子は相手の事を思って合わせてばかりだと聞きました。それって王子楽しいですか?」

「いや…まぁそれが男の役割りと言うか…」

ロイが力なく座ると

「それに私本当にこうして外でお茶とか飲むの大好きです!ロイ王子が好きでなく違うことがしたいならそっちでも構いませんよ」

ローズが伺うようにロイを見つめると

「そうだな…たまにはこうして何も考えずにゆっくり過ごすのもいいもんだな」

ロイはドサッと椅子の背もたれに寄りかかると

「あーやっぱり敵わないな…」

ロイは苦笑しながら空を見上げた。
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