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168.悪の種

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執事がサッと目をそらすと…

「それと…」

レスターが続ける。

まだ何かあるのかと、執事が顔を上げてレスターを見るとある部屋をじっと見ている。

「な、何か…」

「あそこの部屋にいる子を連れてきなさい」

「えっ…」

執事が思わず聞き返すと

「一度で聞いてくれると助かるんだけどなぁ…もう一度しか言わないよ。あの部屋にいる怪我をしてる子を連れてきなさい」

落ち着いているが怒気をはらんだレスターの言葉に執事は急いでメイドを連れてくる。

「ありがとう、この事はお互い秘密にしておいた方がいいと思うんだよ」

レスターは顔を腫らし、傷付き気を失っているメイドを抱き上げると…

「それじゃあ…」

部屋を出ていく。

「あっ…そうだ」

扉をでて振り返ると、執事はビクッと肩を揺らす…

「君も自分の身の振り方を考えた方がいいよ…これは最後の忠告だ」

レスターはそれだけ言うと部屋を出ていった、執事は全身の力が抜けてドサッと床に座り込む…そして自分の手を見るとびっしょりと汗をかき小刻みに震えていた。

レスターはメイドの子を医務室に連れていくと…

「おや?レスター大臣こんな時間にどうしました?」

医師のダンテさんが珍しい人に声をかけてその腕にぐったりとしている人を見ると…

「ハルジオン…どしたのですか!」

見た顔のメイドの姿に驚いていると

「怪我をしていた…どうにか助けてやってくれ」

レスターが痛々しげに顔を歪めると

「すぐに、ここに寝かせて頂けますか」

ダンテがベッドを開けるとレスターがハルジオンを寝かせる。

「この子の事はスチュアートに任せてやってくれ」

「えっ?スチュアートさん?彼女確かレスター様のお嬢様のジュリア様のメイドでしたよね?」

「彼女はもう辞めたんだ、マデリンやジュリアには伝えなくていい…それと…」

レスターはいっそう声を落とすと

「ボストン大臣が何か聞きに来ても私の事は言わないでくれ」

レスターの真剣な顔にダンテはコクリと頷く…

「何か考えがあるのですね」

ダンテが聞くと

「あなたは知らない方がいい…ではすまないがよろしく頼むよ」

レスターは疲れたように笑うと部屋を出ていった…

ダンテはとりあえずハルジオンの治療に専念した。


マデリンはボストンの元から帰ってくると行きと同じように頭から被っていたフードを取って部屋の中へと入ると…

「おかえり…なさいませ…」

執事が待っていた…

「え、ええ…それで?終わったかしら」

女の匂いをプンプンとさせながらマデリンは服を脱いでいくと

「はい…それと奥様…お話が」

執事がマデリンの脱いだ服を片付けながら声をかけると

「何かしら?」

「…実は…私の母が病気になりまして…大変申し訳ございませんがここでの仕事が難しく…」

執事が下を向きながら答えると…

「あらそう?ならどっかの病院にでも入れちゃえば?」

マデリンがあっさりと言うと

「えっ…」

「だってあなたには私のお世話をするという名誉ある仕事があるんだもの。その為なら親の1人や2人どってことないでしょ?」

マデリンは当たり前のように言うと

「……」

執事は言葉を失う…

「はぁ…眠い…あの人本当に執拗いんだから…」

マデリンはネグリジェを羽織るとベッドに入る…いつまでも立ち尽くしている執事に

「いつまでそこにいるのよ、私は寝るからサッサと出ていってくれる」

「は、はい…」

執事はそっと扉に手をかけて

「大変お世話になりました…失礼致します」

消え入る声でつぶやきそっと頭を下げると扉を閉めた。

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