貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

160.ローズ・タウンゼント

ローズは堂々と令嬢達の前を歩きながら貴族たちが待っている広間へと向かう。

ローズの姿に令嬢達は驚き目を見開く者、唖然としている者、指をさしながらほうける者様々な反応をしていた…しかしローズは気にすることなく前へと歩いた。

クレアさんの衣装…スチュアートさんが用意してくれた剣…

それを身に纏うだけで二人から守られているような気がする。

最後にジュリアの前を通る…ジュリアはローズの姿を見て驚き口をポカンと開けていた。

その間抜けな姿を見て…

「失礼致します…」

ローズはクスッと笑い、頭を軽く下げてジュリアの前を颯爽と通った。

ローズの姿が見えなくなると…

「だ、誰！あのお方は！？」

「えっ？女性でしょう、凄く綺麗だったわ…」

「何言ってるの！あれは男性だったわ！あの流し目…素敵…どこのお方かしら…」

令嬢達は広間が見える場所に移動すると…

「なにあれ！あの子私を見て笑ったわ…」

ジュリアが持っていた扇をギュッと握りしめると…

ーバキッ！

扇が壊れる。

「ジュ、ジュリア様！」

メイドが驚いて声をかけると

「うるさい！」

ジュリアがメイドに扇を投げつける！

「キャ！」

扇はメイドの顔を当たると…ポタッ…メイドの頬から血が垂れる…

「だ、大丈夫ですか！」

他のメイド達が心配して駆け寄ると…

「うるさい！うるさい！何の役にも立たないあんた達が悪いのよ！さっさと下がりなさい！」

ジュリアはイラつき手元にあったお菓子をメイド達に投げつける！

「大丈夫…さぁ下がりましょう」

怪我をしたメイドは顔を押さえると他のメイド達を立たせてサッと汚れた場所を片付けさせる。

「では…失礼致します」

メイド達は頭を下げてジュリアの元から去っていった…

メイド達が居なくなると

ーバンッ！

机を叩きつける。そんなジュリアの奇行にを気にすることなく他の令嬢達は舞台へと登ったローズを見つめていた。

ローズは壇上に立つと前に座る人達に深々と頭を下げる…

「次は…ローズ・タウンゼント…嬢…」

大臣がローズの姿に言葉を絞り出す…

「ローズ嬢はダンスと聞いていたが、その姿で大丈夫なのかな？」

「はい、私はダンスと言っても剣舞という舞を披露したいと思っております」

「剣舞？女性のしかも令嬢であるのに剣を使って踊りでもすると言うのかね？」

ボストン大臣がバカにしたように笑うと

「はい」

ローズはニコリと笑いかけた、その姿に隣に座るご婦人がまぁ…と頬を染める。

「そのお姿だと、殿方にも見えますね」

扇を手に笑うと

「ありがとうございます」

少し声を低くしてお礼を言う。

「本当の男みたいだな」

ボストン大臣がフンっと鼻で笑った。

「あいつ…」

ボストン大臣の態度にバルトがイラつきギリッと睨みつける。

スリ…

するとローズがバルトを落ち着かせるように体を頬で擦り寄せる、そして目を合わせて微笑むと

「バルト、楽しもう」

ローズの言葉にバルトははぁ…と息を吐くと仕方なさそうに笑い返した。