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143.名前

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「あの娘じゃないか…」

ローズ達が中に入るのを確認すると兵士がコソッと隣に声をかける。

「わかってる!何声を出してんだ、スチュアートさんにばれたらどうするんだ。秘密だろ」

「わ、わかってるけど急にあらわれたからさぁ…でもバレて無いだろ?」

「たぶん…な…」

「あの娘も俺達の事に気がついてくれてたな」

兵士が嬉しそうに笑うと

「でも…陛下に呼ばれたって何かあったのかな?」

「た、確かに…いや!あんなにいい子だぞ、それにスチュアートさんがいるし」

「そうだな、スチュアートさんいるから大丈夫だろ…あっ!そう言えば名前なんだった!?」

今だローズの名前を知らない兵士が来客名簿に目を通すと…

「ローズ・タウンゼント…男爵ご息女…本当に令嬢だ」

「ローズ様か…どうする?みんなにも知らせるか?」

まだ名前を知らない仲間の兵士達の事を考えると…

「いや…令嬢の名前を無闇に教えるべきじゃないだろう…ここは俺たちの胸に秘めておこう」

「…それもそうだな!」

兵士達はニヤニヤと笑いながら警備を続けた。


ローズ達は謁見の間に通される…少し待つように言われて立っていると程なくレイン陛下とフリード様、数名の大臣と見られる人達があらわれた…

ローズはすぐに跪き頭を下げると、皆が席に座る音が聞こえる。

「おもてをあげよ」

レイン陛下の声にローズは伺うようにそっと頭をあげた。

見るとお茶会の時とは違い厳しい顔つきのレイン陛下が中央の椅子からローズを見下ろしていた。

スチュアートさんとクレアさんは別の部屋へと通され他の従者達と一緒に行ってしまっていた…いるのはローズとバルトだけだった。

レイン陛下と共に後ろに控える人達を見ると一応に怖い顔を浮かべている。

お茶会では見なかった顔ばかりだった、もちろんロイ王子やカイル様もいない…

この時ばかりは二人の顔が見たくてしょうがなかった。

「名を…」

「は、はい!ローズ・タウンゼントと申します!タウンゼント男爵の長女です!」

「あー、タウンゼント男爵の娘なんだ」

フリード様ののんびりとした声が聞こえるとローズは顔をそちらに向けた。

フリード様と目が合うとニコッと優しく微笑まれた。

クシャッとした笑顔にほっとすると緊張が少し和らぐ…

「フリード様…」

大臣の一人がフリード様に声をかけると

「いや、すまんすまん。大の大人達が若い娘を睨みつけているから可哀想になってな」

あははと笑うと

「当たり前です!国の秘密をこの娘がお茶会で披露してしまったのですから!全くどうやって手に入れたか知らんが由々しき事態だ!」

大臣達が一様に頷くと…

「それでタウンゼント嬢どうやってあの実の事を知ったのだ!」

大臣が早く話せとばかりにローズに怒鳴ると

「も、申し訳ございません…そんな凄いものとは知らずに…」

ひたすら頭を下げると

「だろうね…知ってたら出さないだろうからね」

フリード様だけはこのピリピリした空気の中一人笑っている。

「それで?」

レイン陛下は怒鳴ることも笑うこともなく淡々と話を進めると…

「その前に…この子を紹介させて頂いてもよろしいですか?」

ローズは隣で大臣達を睨みつけるバルトの体をそっと撫でた。
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