貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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130.ローズのお茶会※

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「ではローズ様いよいよですね!  ロドムも大丈夫?」

ジェシカさんがメイド服をキリッと整えて気合いを入れる。

「せ、精一杯がんばるよ!」

緊張した面持ちのロドムさんは頬をひきつらせていた。

「うふふ……ロドムさん凄い顔ですよ。その顔でいたらスチュアートさんに怒られませんか?」

ロドムさんの緊張っぷりに笑ってしまった。

「ス、スチュアートさん!  すみませんローズ様この事は内密にお願いしますよ」

ロドムさんはキョロキョロと周りを確認するとスチュアートさんがいないことにホッとしていた。

「ここには居ませんよ?  いてくれたら心強いですけどね」

私は頼もしい二人を思い出して眉を下げてはにかんだ。

そんな私をみて二人は顔を見合わせるとギュッと手を掴んだ。

「ローズ様、スチュアートさんのかわりとは到底無理ですがあなた様の力になれるよう頑張ります。なぁ!」

ロドムさんが同意を求めるようにジェシカさんに目を向ける。

「うん!  ローズちゃんには白馬亭での恩があるしお金も貰ってるからね!」

「ジェシカ、言葉が戻ってるぞ」

ロドムさんが注意する。

「あっ!  すみません……ローズ様」

ジェシカさんが顔をスっと引き締めると頭を下げた。

頼もしい二人を見ているとやる気が溢れてきた!

「お二人共本当に素敵なメイドと執事にしか見えません。私が不甲斐ないばかりにお二人しか雇えなくて……忙しくなると思いますがよろしくお願いします!」

「「はい!  お任せ下さい」」

三人は手を握り合った。

トントン……

すると時間になりお茶会を知らせるノックの音がする。

「お客さんがお越しになりました」

大臣の開始の声にジェシカさんとロドムさんは私を見つめる。
私は一呼吸して二人にどうぞと促すと同時に扉を開いた。

最初に見えた人の顔を見てクレアさんから教えて貰った招待客リストを思い出して頭の中でページをめくる。

「ようこそお越しくださいました。キャンベル様」

ローズは一番最初に入ってきたご夫人に笑顔で挨拶をすると頭を下げた。

「あら、私の事をご存知で?」

「はい、キャンベル伯爵夫人。キャンベル様はとてもお茶にお詳しいとお聞きしています。よろしければ後でおすすめのお茶を教えていただけると嬉しいです」

キャンベル夫人は自分の事をそんなにも知っていた事に驚きながらも嬉しそうにしていた。

「そ、そう?  ちょっとお茶にはうるさいのよ、今日は楽しみにしてますわ」

「はい!  楽しんでいただけるように努力致します」

ジェシカさんに視線を送ると頷いて夫人を席へと案内する。

続いて次の方が来ると私はすぐにページをめくる。

「ようこそお越しくださいました。ブラウン様」

私はお客様一人一人に丁寧に挨拶を交わしながらロドムさんとジェシカさんに席へと案内してもらう。

「あなた達の主人は我々の事に詳しいね」

ロドムさん案内した伯爵が私を見ながら声をかけていた。

「ありがとうございます。ローズ様はお茶会の為に皆様の好みを知りたいと主催の大臣に皆様の事を少しお聞きになりました。誰でも知り得る事しかお聞きしていませんのでお許し下さい」

ロドムさんが深々と頭を下げる。

「まぁ一人一人の好みを?  じゃあみんなが納得する物が出てくるのかしら楽しみね」

話を聞いていたキャンベル夫人が扇で顔を隠しながら不敵に笑う。

そうしてる間にも次々にお客様がやってくる。私は全員に対応していると次のお客様をみて驚いた。

「カイル様にロイ王子!」

知った顔をみて嬉しくなり緊張で張り詰めていた心が少し軽くなった。

「ようこそお越しくださいました」

私は二人に笑いかけると深々と腰を落とした。

そして顔をあげると少しだけ近づいてそっと声をかける。

「カイル様、その後大丈夫でしたか?」

みんなに聞こえないように少し声を落として聞いてみる。
あの日倒れてから久しぶりに会えたのだ。

「ああ、もう問題ない。その……」

カイル様が言いにくそうにソワソワと言葉を濁していた。

「なんですか?」

よく聞こえなくてもう少し近づくとカイル様が覚悟を決めた顔をして見つめてきた。

「あの時は、すまなかった。わざとではないんだ」

顔を曇らせ不安そうにするカイル様に一瞬ポカンとしてしまった。

そして眉を下げて私の返事を待つ様子がおかしくて肩の力が抜ける。

「わかってますよ。カイル様がそんな事をする方じゃ無いことくらい……それより元気そうで安心しました。今日は楽しんで下さいね」

私はいつもと変わらないカイル様の様子にホッとした。

本当は会えないのはカイル様が会いたくないと言っているのかもしれないと思っていた。

せっかく女性嫌いが治って来ていたところにあんな事をされたらまたトラウマにでもなってしまっているかと思ったがそんな事はないようだった。

「おいローズ、俺もいるんだがな……」

蚊帳の外のロイ王子が間に入って声をかけてくる。

「ロイ王子もようこそお越しくださいました。今日はたくさん食べていってくださいませ。例の物も用意してありますからね」

ウインクするとニヤリと笑い楽しみだとほくそ笑みながら部屋へと入った。

その様子はさながら悪巧みをする悪役のようだった。

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