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115.キャシーのお茶会※
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◆
「はぁ……」
キャシーは扇で顔を隠しながら、退屈そうに深くため息をついた。
ああ……なんてつまらない。
私は只今絶賛お茶会の真っ最中だった。
目の前には従者のロンが国中から集めた豪華なお菓子に高級な茶葉を何十種と用意して、この日の為に特注で作った食器が並び、それを用事するのはよりすぐりの初めて見る見目のいいメイドと執事達。
お茶会は滞りなく進行している、たわいない会話にあからさまなお世辞の嵐。
私など居なくてもいいくらいだった。
いつもより少し豪華なお茶会は何度も体験しており緊張する事もない。
しかしこれじゃあロンのお茶会ね。まぁ私はなんでもいいけど……
チラッと客達を見るとロイ王子が目に入る。彼は執事が取り分けた果物を見つめていた。
それはロンがこだわって集めた新鮮な果物だった。
ロイ王子はじっと見つめて一口で果実を食べると何やら思案顔している。それに気がついたカイル様が隣でそっと話しかけると二人で顔を見合わせ軽く笑った。
何か果実を食べて思い出した事でもあったのだろうか?
ロンをみると平然な顔をしていた。しかし目線を下にして手を見ると悔しそうにギュッと握りしめている。
ふふふ……ザマアミロ。
何故かローズを敵対しており一番のお茶会にすると息巻いていたが私はそんな事どうでもよかった。
「キャシー様この紅茶は香りが本当にいいですね。何処の紅茶かしら」
そんな風に二人を観察していると唐突に話しかけられた。
あれは今回の婚約者決めに親族の子が出てる大臣の奥様だったかな?
チラッと平然な顔で飲んでいる茶葉を確認すると、メイドに目を向けた。
メイドは客の後ろでどのお茶か缶を客から見えない様に持っていた。
「それは、リチレール産のルコルの茶葉ですね。奥様の言う通り香りが特徴でこのお茶会にピッタリだと思い選びました」
サラサラと口から嘘が出る。
一度も飲んだ事のない茶葉の知識をペラペラと話すと、周りが感心する。
なんて事はない、いつも通りだ。
「アイリック嬢は今まで飲んだ中でどのお茶が一番好きなのでしょう」
そんな会話を聞いていたのかロイ王子が声をかけてきた。
一番のお茶……そんなの決まってる。ローズと飲んだあのお茶だ。
一応お茶の味や違いはわかるつもりだ、幼い頃からそういう教育を受けてきた。
でもあの時ローズと飲んだお茶は何の変哲もないない、いつものお茶があの時は何倍も美味しく感じられた。
「そうですね……私は信頼出来る人と飲むお茶が一番好きです。ですからこのお茶が今は一番好きですね」
そう言ってまだ一度も口をつけていなかったお茶を一口飲んだ。
私の発言は好評だったらしくお茶会の客達は満足そうに帰って行った。ロンも最後の私の発言で機嫌がよくなり、過剰に褒めながら片付けの指示をメイド達にしている。
「しかし最後のお言葉はキャシー様さすがでしたね! あれには皆さん感心してましたよ、キャシー様程の方ですとどこかの地方を特別視する訳には行きませんからね」
うんうんとロンが頷いている。
「別に本当の事を言っただけよ」
最後は嘘だけど……
さすがに口にはしないで心の中で呟いた。
次々に綺麗になっていくテーブルにやることも無くボーッと見つめる。
ああ……美味しい紅茶が飲みたいわ。
「ロン、今日はもう疲れたから休むわ」
私はソファーに深く沈みながら声をかけた。
「そうですね、今夜はゆっくりお休み下さい。私達はこれで引き上げます。何かありましたらベルを鳴らして下さい」
わかったと手をあげるとロン達は頭を下げて部屋を出ていった。
はぁ……
一人になると今日何度目かのため息をつく。
すると程なくトントントン扉をノックする音がした。
ロン達が忘れ物でもしたのかしら?
「どなた?」
声をかけるとおずおずといった感じの返事が返ってきた。
「キャシーお茶会お疲れ様……」
ちょうど顔を見たいと思っていたローズが顔を出した。
「はぁ……」
キャシーは扇で顔を隠しながら、退屈そうに深くため息をついた。
ああ……なんてつまらない。
私は只今絶賛お茶会の真っ最中だった。
目の前には従者のロンが国中から集めた豪華なお菓子に高級な茶葉を何十種と用意して、この日の為に特注で作った食器が並び、それを用事するのはよりすぐりの初めて見る見目のいいメイドと執事達。
お茶会は滞りなく進行している、たわいない会話にあからさまなお世辞の嵐。
私など居なくてもいいくらいだった。
いつもより少し豪華なお茶会は何度も体験しており緊張する事もない。
しかしこれじゃあロンのお茶会ね。まぁ私はなんでもいいけど……
チラッと客達を見るとロイ王子が目に入る。彼は執事が取り分けた果物を見つめていた。
それはロンがこだわって集めた新鮮な果物だった。
ロイ王子はじっと見つめて一口で果実を食べると何やら思案顔している。それに気がついたカイル様が隣でそっと話しかけると二人で顔を見合わせ軽く笑った。
何か果実を食べて思い出した事でもあったのだろうか?
ロンをみると平然な顔をしていた。しかし目線を下にして手を見ると悔しそうにギュッと握りしめている。
ふふふ……ザマアミロ。
何故かローズを敵対しており一番のお茶会にすると息巻いていたが私はそんな事どうでもよかった。
「キャシー様この紅茶は香りが本当にいいですね。何処の紅茶かしら」
そんな風に二人を観察していると唐突に話しかけられた。
あれは今回の婚約者決めに親族の子が出てる大臣の奥様だったかな?
チラッと平然な顔で飲んでいる茶葉を確認すると、メイドに目を向けた。
メイドは客の後ろでどのお茶か缶を客から見えない様に持っていた。
「それは、リチレール産のルコルの茶葉ですね。奥様の言う通り香りが特徴でこのお茶会にピッタリだと思い選びました」
サラサラと口から嘘が出る。
一度も飲んだ事のない茶葉の知識をペラペラと話すと、周りが感心する。
なんて事はない、いつも通りだ。
「アイリック嬢は今まで飲んだ中でどのお茶が一番好きなのでしょう」
そんな会話を聞いていたのかロイ王子が声をかけてきた。
一番のお茶……そんなの決まってる。ローズと飲んだあのお茶だ。
一応お茶の味や違いはわかるつもりだ、幼い頃からそういう教育を受けてきた。
でもあの時ローズと飲んだお茶は何の変哲もないない、いつものお茶があの時は何倍も美味しく感じられた。
「そうですね……私は信頼出来る人と飲むお茶が一番好きです。ですからこのお茶が今は一番好きですね」
そう言ってまだ一度も口をつけていなかったお茶を一口飲んだ。
私の発言は好評だったらしくお茶会の客達は満足そうに帰って行った。ロンも最後の私の発言で機嫌がよくなり、過剰に褒めながら片付けの指示をメイド達にしている。
「しかし最後のお言葉はキャシー様さすがでしたね! あれには皆さん感心してましたよ、キャシー様程の方ですとどこかの地方を特別視する訳には行きませんからね」
うんうんとロンが頷いている。
「別に本当の事を言っただけよ」
最後は嘘だけど……
さすがに口にはしないで心の中で呟いた。
次々に綺麗になっていくテーブルにやることも無くボーッと見つめる。
ああ……美味しい紅茶が飲みたいわ。
「ロン、今日はもう疲れたから休むわ」
私はソファーに深く沈みながら声をかけた。
「そうですね、今夜はゆっくりお休み下さい。私達はこれで引き上げます。何かありましたらベルを鳴らして下さい」
わかったと手をあげるとロン達は頭を下げて部屋を出ていった。
はぁ……
一人になると今日何度目かのため息をつく。
すると程なくトントントン扉をノックする音がした。
ロン達が忘れ物でもしたのかしら?
「どなた?」
声をかけるとおずおずといった感じの返事が返ってきた。
「キャシーお茶会お疲れ様……」
ちょうど顔を見たいと思っていたローズが顔を出した。
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