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112.お茶菓子※

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無事いつも通りの朝食をすませるとクレアさんが食器を片付けながら今日の予定を確認する。

「ではローズ様今日は外には行かずに部屋で大人しくお願いしますよ」

「はい、大丈夫です。それに今日はクレアさんにも手伝って欲しい事があるんです」

私は上目遣いにクレアさんを見つめた。

「私ですか?」

「はい、今日はお茶のお菓子を決めようと思っていて、大体の作るものは決めているのであとは何度か試作してみようと思ってます」

「そうですね、お茶会まであと数日ですからそろそろ準備を整えておかないといけません」

クレアさんもその方がいいと同意してくれた。

「食器類はキャシーがくれた物を使うとして、あとはお茶とお菓子の準備ともう一つ何か作ろうかと思ってます」

「お菓子なら日持ちする物が良いかと思います。ローズ様が全て作るのですから前日に作っておくことしかできませんからね」

「そうなんですよね。でもいくつか考えておきました!」

買うお金が無いから仕方ないとはいえ、かなりの量を作ることになるので大変だ。
だからなるべく日持ちして簡単に大量に作れる物を考えておいた。

「ではそのお菓子を今日は仕上げるのですね」

「はい、クレアさんには味見をお願いしたいです。それとアドバイスも……」

「わかりました。まだ本番ではないですから手伝っても問題ありませんからね。ビシビシいきますよ!」

「よ、よろしくお願いします!」

私は早速クレアさんと厨房へと向かった。

厨房につくと、料理人達が朝食のあと片付けをちょうど終えていた。

「すみません。ちょっと厨房を貸して頂けますか?」

クレアさんが声をかけると料理人達が振り返る。

「あれ、またクレアさん用事ですか?」

何度もくるクレアさんに料理人達は何かあったのかと顔を向ける。
私はクレアさんの後ろから顔を出してみんなに頭を下げた。

「皆さん朝はお騒がせしてすみませんでした」

「「ローズ様!」」

「えっ、ローズ様?」

料理人達が集まってきてしまった。

「どうしましたか?  まさかお腹が痛くなったとか……」

「やはり作りすぎました?  すみません、調子に乗ってローズ様なら食べられかといつもより多めに作ってしまいました」

料理人達が心配そうにしているので慌てて否定する。

「いえ!  いつも美味しいご飯をありがとうございます。今朝のご飯も凄く美味しくて……だから本当に困ります」

私はお腹をさすって苦笑した。

「な、何が困ったのでしょうか?」

料理長が深刻そうな顔でギュッとタオルを握りしめた。

「だって美味しすぎて食べ過ぎちゃいますから、これからドレスを着るのに太っちゃいそうです」

困ったと料理長に負けじと深刻な顔をする。

「それは……何よりも嬉しいお言葉です」

料理人達がホッとして笑うと嬉しそうに頭を下げた。

「それでは今はなんのご用事で?」

「それが今度のお茶会でお菓子を作ろうと思っていて、その練習をしたいのでここを少し使わせて貰えればと」

「ローズ様がご自分でお作りになるのですか?」

驚いてクレアさんに確認している。

「それならば我々がお手伝い致しましょうか?」

それがいいと料理人達が申し出てくれるのをありがたくお断りする。

「ありがとうございます。ですが私、皆さんを雇うお金が無くて……自分で作ればタダですから」

「そんな、ローズ様のお手伝いにお金など貰えません」

他の人達も無償で手伝うと言ってくれた。
私はみんなの優しさに胸が熱くなる。

「皆さんのお気持ち、本当に嬉しいです。でも大丈夫です。こう見えても食べるのも作るのも大好きなので!」

やる気を見せて腕まくりをするが、料理人達が心配そうに顔を見合わせた。

そんな料理人達にクレアさんがうんうんと頷いていた。

「皆さまの気持ちは痛い程わかります。でも下手に手を貸すと色々と問題がありまして……私もローズ様のメイドなのにお手伝い出来ないのが本当に歯がゆいです」

クレアさんが大きなため息をついた。

「クレアさんも手伝えないとは?」

料理人達の疑問に手伝えない経緯を話した。

「そうですか、下手に手を貸すと後々問題にされてしまうのですね」

「はい、でもそれならもういっそ全部一人でやってやろうと!」

私はニヤリと笑う。
とことんやって文句も言えない状態にしてやろうと考えていた。

「では我々もローズ様が作るのを見てご指摘ぐらいはできると思いますのでそばで見ていてもよろしいですか?」

料理長が素敵な提案をしてくれた!

「わぁ!  それは嬉しいです。皆さんの意見も聞けたら百人力です。よろしくお願いします!」

私は是非力を貸してほしいと料理人達に頭を下げた。
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