上 下
48 / 318
連載

109.夜食※

しおりを挟む
私は棚からめぼしい物を集めると腕まくりをする。

「バルト、おじさんと待っててくれる?  サッと作っちゃうから」

バルトを肩から下ろすとバルトがおじさんから少し離れた椅子に座った。

するとおじさんがバルトに近づいた。

「変わった子をペットにしてるね?  これは……猫かい?」

手を出そうとするとバルトがシャー!  と牙を剥き出し爪を立てた!

「こら!  バルト!」

注意するとバルトはフンッと横を向いて渋々爪を引っ込める。

「なつかない猫も可愛いね」

おじさんが引っ掻かれるのも構わずバルトを撫でた。
バルトは一瞬爪を出すが私を見ると諦めて大人しく触られる。

おじさんは優しくバルトを撫でていた。

酷い事はしなそうなので二人をそのままにパッパッと余り物でサンドイッチを作った。

「はい、出来ましたよ」

二人の前にサンドイッチが乗ったお皿を置くとバルトがサッとおじさんの手から離れて私の肩に戻ってきた。

「お!  美味そうだな」

早速とおじさんが手を伸ばす。

私はそんなおじさんの手をピシッ!  と叩いた。

「駄目ですよ、まずは手を洗ってください。バルトを撫でていましたよね?」

「す、すまない、そうだったね」

おじさんはハッとして嬉しそうに笑いながら手を洗いに行く。

「おい…あいつ怒られて嬉しそうにしてるぞ」

バルトがコソッと耳元で気持ち悪そうに呟いた。

「サンドイッチが嬉しいんじゃないかな、バルトも食べる?」

私は自分の分をバルトに差し出す。

「俺はやめておく。また今度作ってくれ」

「うん、了解!」

私は食べないで待っていると戻ってきたおじさんがそれに気がついた。

「あれ?  どうしたんだい、食べないのかな」

手をつけないでいる私に声をかけると向かえの席に腰掛けた。

「どうせ食べるなら一緒に食べましょう。いただきます」

私が手を合わせると「いただきます」とおじさんも真似して手を合わせた。

「どうぞ召し上がれ」

ニコッと笑ってサンドイッチを差し出す。

おじさんが手に取るとパクッと一口で口に放り込んだ。

「うん?  野菜が入ってる?」

おじさんが顔をしかめている。

「お野菜嫌いですか?」

「あんまり得意じゃないんだ」

そう言いながら野菜を取り出そうとサンドイッチを開こうとする。

「何してるんですか!  ちゃんと野菜も食べないと体に良くないですよ!」

「わかってるけどこれって苦くない?」

おじさんなのに子供みたいなことを言い出す。

「もう、ならちょっと待っててください」

私はサンドイッチを持って厨房で調味料を探す。お目当ての物を見つけてサッサッとサンドイッチに付けた。

そのまま持ってくるとおじさんに渡す。

「これで食べてみてください、少しは食べやすくなるかと思います」

私はマヨネーズをサンドイッチの間につけてあげた。
父とクリスに作る時もたまにコレをつけてあげる、すると食べやすいのか食欲が増すのだ。

「ん、なんか甘く感じるな」

「マヨネーズとお野菜は相性いいですよね!」

「もう少しかけてもいいかな?」

おじさんが残りのサンドイッチを見つめる。

「あんまりつけすぎは良くないですよ。何事も適量が美味しいんです!」

「そういうものかな?」

「そういうものです!」

二人であっという間にサンドイッチを食べてしまった。

「あー美味しかった。久しぶりにゆっくり人と食べたよ」

ご馳走様と私に笑顔︎浮かべる。

「よかったら食後のお茶も飲みませんか?」

こんなに喜んで貰えるとは思わずに嬉しくなる。せっかくなら美味しいお茶も飲んで欲しくなった。

「頂こう」

私は笑顔で頷くと二人分のお茶を用意しておじさんの前に置く。

「リラックス効果の高いカモミールティーにしてみました。これを飲んでゆっくり休んで下さいね」

「ありがとう……」

おじさんがカップを持ってゆっくりとお茶を飲んだ。

「うん……美味しい」

ホッと息をついて笑っていた。

その様子に嬉しくなると自分もお茶を飲んでみる。

うん、美味しい。

お腹もいっぱいになりお茶で体が温まると眠気が戻ってくると欠伸をしてしまう。

そんな私の様子におじさんはカップを置いた。

「すっかりご馳走になってしまったね。ありがとう」

おじさんが席を立つと私も一緒に立ち上がった。

「はい、またご一緒出来たらいいですね」

おじさんは嬉しそうに笑う。

「たまにこの時間ならここに来てることがあるから、でも君も女の子だからあまり出歩かないようにね」

「はい」

私は返事を返すとサッと使ったお皿とコップを洗う。

「おやすみなさい」

「おやすみ」

おじさんと別れて部屋へと戻って行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。