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94.変化※
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木の中腹に私達はようやくたどり着いた。
「わぁ、結構登りましたね!」
足場をギリギリに下を覗き込んでいると、カイル様に抱き寄せられた。
「ローズ! そんなギリギリに立ったら危ないだろ。落ちたらどうする!」
ギュッと強く抱きしめられて、本気で怒っていた。
「す、すみません……」
私は素直に謝るが、カイル様が離してくれない。
「あの、もう大丈夫です」
そっとカイル様の腕の中から抜けると顔を見上げた。
すると顔が間近に見えて慌ててその手を離される。
「す、すまない。だが心配だからあんまりはじに寄らないようにしてくれ……」
カイル様が顔を逸らしながらお願いしてくる。
「すみませんでした。でもこのくらいの高さなら落ちても大丈夫そうです。あそこを足場にあれに掴まって……うん、降りられそうですね」
私は心配ないと笑って下を指さした。
「ローズには木登りに関して心配は不要そうだな」
ロイ王子が笑ってカイル様の肩を叩いた。
「そうですね」
カイル様はガックリしながらロイ王子とこれから登る木の確認に向かった。
「ローズ、大丈夫か?」
バルトは一人離れた私の肩に乗ると顔を覗き込んでくる。
「どうした? 顔が赤いぞ」
「えっ! そ、そう?」
私はアワアワと頬を押さえると赤みを必死に消そうとする。
カイル様の腕の中、クリスとは違って男の人なんだと感じてしまった。
弟のクリスとは違いがっしりとした鍛えられた硬い体に抱きしめられ内心ドキドキしていた。
何度も深呼吸するとようやく落ち着いてくる。
するといいタイミングで二人も戻ってきた。
「じゃあ登るぞ」
バルトがみんな揃ったのを確認すると先を示す。
「一体どこまで登るんだ? 果実らしいものは見えないが……」
ロイ王子がたまらずに聞いている。
「どこって一番上だが?」
何を当たり前のことをと言わんばかりにバルトが呆れた顔でロイ王子を見つめる。
「い、一番上……」
まだ見えない頂上にロイ王子はガックリとする。
「一番上からみた景色最高でしょうね! バルト、早く行こうよ」
私は早く頂上に行きたくてソワソワと登りだした。
「枝が細くなってきてるから気をつけろ」
上に行くと足場も少なくなり、枝も折れそうなほど細くなっている。私達は足場に気をつけながら上を目指した。
「あっ、見ろあの実だ!」
バルトの声に顔をあげると、少し先を登っていたバルトが嬉しそうに私に声をかけてきた。
「えっ! どこ、どこ!」
バルトの先を見るが私のところからはちょうど見なかった。
「待ってろ!」
バルトは実を目掛けて軽快にトントンとかけ登る。
バキッ!
すると細い枝に乗った瞬間に枝が折れた。
「バルト!」
「あっ……」
「バカ猫!」
カイル様が落ちるバルトに手をギリギリまで伸ばすと、バルトをキャッチしてくれた。
「あっぶねぇ……大丈夫か?」
カイルはバルトを抱き寄せると無事か確認する。
「おい、どうした? どっか怪我したのか?」
動かないバルトを心配そうに見つめて声をかけた。
「バルト!」
私も急いでカイル様のそばまで登ると一緒にバルトの怪我を確認する。
「だ、大丈夫、びっくりしただけだ」
バルトは私達の手から恥ずかしそうに逃れると近くの枝に飛び移る。
「全く、案内役が落ちるなよ。急がなくていいからゆっくり進め」
ロイ王子は無事な姿にホッとしながらバルトに声をかけた。
「わぁ、結構登りましたね!」
足場をギリギリに下を覗き込んでいると、カイル様に抱き寄せられた。
「ローズ! そんなギリギリに立ったら危ないだろ。落ちたらどうする!」
ギュッと強く抱きしめられて、本気で怒っていた。
「す、すみません……」
私は素直に謝るが、カイル様が離してくれない。
「あの、もう大丈夫です」
そっとカイル様の腕の中から抜けると顔を見上げた。
すると顔が間近に見えて慌ててその手を離される。
「す、すまない。だが心配だからあんまりはじに寄らないようにしてくれ……」
カイル様が顔を逸らしながらお願いしてくる。
「すみませんでした。でもこのくらいの高さなら落ちても大丈夫そうです。あそこを足場にあれに掴まって……うん、降りられそうですね」
私は心配ないと笑って下を指さした。
「ローズには木登りに関して心配は不要そうだな」
ロイ王子が笑ってカイル様の肩を叩いた。
「そうですね」
カイル様はガックリしながらロイ王子とこれから登る木の確認に向かった。
「ローズ、大丈夫か?」
バルトは一人離れた私の肩に乗ると顔を覗き込んでくる。
「どうした? 顔が赤いぞ」
「えっ! そ、そう?」
私はアワアワと頬を押さえると赤みを必死に消そうとする。
カイル様の腕の中、クリスとは違って男の人なんだと感じてしまった。
弟のクリスとは違いがっしりとした鍛えられた硬い体に抱きしめられ内心ドキドキしていた。
何度も深呼吸するとようやく落ち着いてくる。
するといいタイミングで二人も戻ってきた。
「じゃあ登るぞ」
バルトがみんな揃ったのを確認すると先を示す。
「一体どこまで登るんだ? 果実らしいものは見えないが……」
ロイ王子がたまらずに聞いている。
「どこって一番上だが?」
何を当たり前のことをと言わんばかりにバルトが呆れた顔でロイ王子を見つめる。
「い、一番上……」
まだ見えない頂上にロイ王子はガックリとする。
「一番上からみた景色最高でしょうね! バルト、早く行こうよ」
私は早く頂上に行きたくてソワソワと登りだした。
「枝が細くなってきてるから気をつけろ」
上に行くと足場も少なくなり、枝も折れそうなほど細くなっている。私達は足場に気をつけながら上を目指した。
「あっ、見ろあの実だ!」
バルトの声に顔をあげると、少し先を登っていたバルトが嬉しそうに私に声をかけてきた。
「えっ! どこ、どこ!」
バルトの先を見るが私のところからはちょうど見なかった。
「待ってろ!」
バルトは実を目掛けて軽快にトントンとかけ登る。
バキッ!
すると細い枝に乗った瞬間に枝が折れた。
「バルト!」
「あっ……」
「バカ猫!」
カイル様が落ちるバルトに手をギリギリまで伸ばすと、バルトをキャッチしてくれた。
「あっぶねぇ……大丈夫か?」
カイルはバルトを抱き寄せると無事か確認する。
「おい、どうした? どっか怪我したのか?」
動かないバルトを心配そうに見つめて声をかけた。
「バルト!」
私も急いでカイル様のそばまで登ると一緒にバルトの怪我を確認する。
「だ、大丈夫、びっくりしただけだ」
バルトは私達の手から恥ずかしそうに逃れると近くの枝に飛び移る。
「全く、案内役が落ちるなよ。急がなくていいからゆっくり進め」
ロイ王子は無事な姿にホッとしながらバルトに声をかけた。
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