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92.果実狩り※
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私の着替えを待つ間、ロイ王子達は先に厩舎に向かうことになった。
私が着く頃には兵士達は既に見回りに向かってしまっていた。
先程もお世話になった白馬をカイル様が引いてきてくれると、近づいて撫でながら声をかける。
「また、よろしくね」
三人で馬に跨るとロイ王子が私の馬に一緒に乗るバルトに問いかけた。
「それで、どっちの方角なんだ?」
「あっちだな」
バルトが南の山の方角を顎で指し示す。
「南の方か……」
「あちらは深い森になっていますから、あまり人は立ち入らないな」
「じゃあバルトの先導で私が先に走りますね」
私はバルトを抱き寄せて馬を動かそうとするとカイル様が前に立ち塞がってそれを止める。
「いや、危ないから俺が先に行こう」
「でも、道を知ってるのはバルトですから」
「ならバルト、私の馬の上に来るのはどうだ?」
「やだね」
バルトがプイッと横を向いて拒否を示す。
「なっ……可愛くない奴だ!」
「ま、まぁ私の事ですから私が先導しますから」
私はバルトを撫でながらカイル様に謝った。
「バルト、カイル様もロイ王子もいい方だから仲良くしてくれると嬉しいな」
バルトにお願いすると顔を顰めてしまう。
「男の人間は嫌いだ……」
バルトがボソッと呟くのを聞いてハッとする。
あんな事をされたのだ、人を嫌になるのも仕方ない……でも。
「カイル様もロイ様もバルトが、知ってる人達とは違うよ」
「わかってはいるが、アイツら男と一緒に走る事はまだ出来そうにない」
少し申し訳なさそうにするバルト、彼も自分の中で色んな感情と戦っているようだった。
「まぁ少しずつだね、とりあえず今は果物に専念しよう。そういう事でカイル様達もご了承下さい」
私が切り替えて元気にみんなに声をかける。
ロイ王子とカイル様も軽く話を聞いたようで納得してくれた。
「じゃあまずはあの大きな木に向かってくれ」
バルトは一際大きな木だと教えてくれる。
「わかった、カイル様、ロイ王子行きますよ!」
私は馬の腹をけると勢いよく走り出した。
「バルト、しっかり掴まっててよ!」
「どうやって掴まるんだよ」
バルトは立ち上がり私の肩に飛び乗った。
「このまま まっすぐだ」
耳元でバルトが指示を出すとチラッと後ろを振り返る。
「アイツらもピッタリとついてきているな」
バルトの言葉にニヤッと笑う。
「ならもう少しスピードあげてもいいよね」
私は馬の腹を蹴るとさらに加速した。
「ローズがスピードをあげたぞ!」
「こんな道でよくそんなに飛ばせるな」
ロイ王子とカイル様の呆れる声が聞こえるようだった。しかし二人共呆れながらもしっかりと後をついて来ていた。
一行は何事もなく大きな木に近づいてくるとあっという間に木の根元まで着いた。
「わぁ……大きな木」
見上げても上まで見えない木に私は口をぽかんと開けて見上げる。
「ローズ、口が開いてるぞ」
ロイ王子が苦笑しながら隣に並んだ。
「あっ……」
慌てて閉じて改めて見上げる。
「大きな木ですね」
「そうだな、この国ができるずっと前からここにいる木だからな」
「へー! 凄いです。あっもしかして昔の水害の時にみんなを守った木ですか?」
「よく知ってるな」
ロイ王子がほぉと感心する。
「スチュアートさんと婚約者候補の為に勉強致しましたから!」
私は得意げに胸を張って答えた。
「偉い、偉い」
ロイ王子は笑って私の頭を撫でた。
「えっ……」
まさか撫でられるとは思わずにピクっと肩を揺らすとロイ王子が頭に手を置いたまま硬直する。
「おい、いつまで触ってるんだ!」
バルトがロイ王子の手を前脚で振り払った。
「あっ……いや、すまん」
ロイ王子は私の頭に触れた手を見つめるとそっと握りしめた。
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