貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

88.休憩※

「ローズ様、その服はどうなさったんですか！」

クレアさんが心配そうに私の腕をまくって確認するが怪我をした痕はなくなっている。

「あれ？  服はボロボロなのに……ローズ様痛いところはありませんか？」

「ありませんよ、全然大丈夫です！」

ボロボロの服ををまくって腕を見せる。

「ならよかったです、また怪我でもしたのかと思いましたよ」

クレアさんが怪我の無い様子にホッとしていた。

「怪我してたら……やっぱり不味いですか？」

どうなってたのかな？  と思い聞いてみる。

「それはもちろん……」

クレアさんはそのあとの言葉は発せずただ笑っていた。


「ローズ、お前の周りは怖いやつらばっかりだな」

バルトが私の肩に乗ると耳元でボソッとつぶやいた。

「怒ると怖いけど、みんな私の為を思ってくれてるからね、バルトの事もだよ」

「ふーん……」

バルトは満更でもない返事をすると恥ずかしそうに丸くなる。

私はスチュアートさんが戻る前にドレスに着替えてしまうことにした。

湯浴みもしてサッパリと着替えると持ってきた籠を確認する。

「ローズベリーが少ししか集められなかったんですよね。これじゃあケーキは作れませんね」

ローズは取ってきたベリーをクレアさんに見せる。

「そうですね、ちょっと数が少ないですし形が歪な物がいくつかありますよね。お茶会に出すのであればもう少し良いローズベリー採ってきますか？」

私は首を振って顔を曇らせる。

「もうあの場所のローズベリーはほぼ採ってきてしまったのです。他になにかケーキの材料になりそうなもの無いかなぁ」

「美味い果実が生えてる場所なら知ってるぞ」

バルトが困っている私達にボソッと声をかけてきた。

「本当に！」

「まぁ猫ちゃんそれは本当ですか？」

私達はバルトに詰め寄った。

「猫ちゃんって俺はバルトだ！」

「あら、すみませんバルトさん。可愛らしい姿につい……それでその果実はケーキの材料になりそうなんですか？」

「そりゃ知らん、ただローズベリーより甘くて少し酸味もある。なかなか手に入らないが俺のお気に入りの食べ物だ。まぁお前が作ったケーキも美味かったけどな」

バルトがクレアさんをチラッと見た。

「それはありがとうございます。またお作りしますね」

「本当か！」

「ええ」

「な、ならそこまで案内してやる」

「じゃあスチュアートさんが戻ってきたら行きましょう！」

私達はスチュアートさんの帰りを待っていたが中々戻って来る気配が無い。

三人でのんびりとお茶を飲みながらお茶会の事を話していた。

トントン……

しばらくして扉をノックする音がした。

「あっ！  帰って来ましたかね」

私は立ち上がると、クレアさんが扉を開けに行ってくれた。私も待ちきれずに後ろをついて行く。

扉を開けた途端に「おかえりなさい！」私達はが笑顔で迎え入れた。