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87.過去※

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「ま、待ってくれ!  いや、待ってください!」

ハンターが走り出す私に声をかけてきた。

「まだ何か?」

さっさと用を済ませてローズ様達の元に戻りたい私は面倒臭そうに振り返る。

「あなたはあのスチュアート様なんですか?」

「あのと言われても私は親からこの名を貰った時からスチュアートですが?」

「戦火の中、前国王を助けて敵を一人で半壊させたと言う」

「はっ?  何の話ですか?」

私は顔を顰めた。

「よ、よかった。人違いか」

ハンターがホッとしてandの表情を浮かべた。

「一体何年前の話をしているのですか?  しかもそれをやったのは一人ではありませんしね」

「えっ……」

「もうよろしいですか?  サッサと済ませて私も仕事に戻らないと行けませんので」

「ま、待って!」

男がまだ何か喋り出そうとするのでじっと睨みをきかせる。

「次、喋ったらお前の喉を潰しますよ」

「ヒッ!」

男はギュッと口を結んだ。

「痛くても叫ばないでくださいね」

そう言うと目的の場所につくまで後ろを振り返ることはなかった。





私達は無事に馬を見つけてホッとする。

「あっよかった~怪我も無さそうだね」

優しく馬を撫でて怪我が無いのを確認する。無事な様子に安心してヒョイっと馬に跨った。

「バルト!」

おいでと手を伸ばすとバルトが私の前にスタッと着地して座った。

「じゃあ帰るからバルトもっとこっちに寄って」

バルトを自分に引き寄せる。その腕から血が滲み服を汚していた、それに気がついたバルトは気まずげにチラッと私に顔を向ける。

「この怪我……悪かった」

そう言って傷ついた腕を舐めた。

「ん?  ああ、このくらい大丈夫だよ。領地にいた時はこんなの日常茶飯事だよ」

領地では全て自分でやっていたから怪我など当たり前だった。今の着飾られたこの生活が特別なのである。

だから気にしないでとバルトの頭を撫でると不服そうにしていた。

「ヒール……」

バルトが何か呟くと腕の痛みが引いていく。キラキラとした光が傷を癒してくれた。

「えっ!  バルト魔法が使えるの?」

「魔物だからな、だが俺が使えるのは回復系だけだ」

バルトは恥のように吐き捨てる。

「凄いね!  痛みが無くなったよ。あっ傷も消えてる!」

「あのままだと俺がスチュアートに怒られそうだからな……仕方なくだ!」

「うん、ありがとうバルト」

私は優しいバルトをギュッと抱きしめた!

そのまま文句も言わずに抱かれているバルトと厩舎に行き馬にお礼を言って戻しておいた。そして肝心のローズベリーを置いてきた場所に寄りながら帰ることにする。

「あった!」

籠を無事に見つけて中を確認するが、慌てていたため中のローズベリーが半分以上落ちて潰れてしまっていた。

「あー半分はつかえないね、もうあそこにはあんまり実ってないしな」

二回も摘み取ってしまったので残りが少なくなっていた。これではお茶会に使えそうにない。

「まっいっか!  とりあえず部屋に戻ろうこのままスチュアートさんより遅かったら大変だもんね」

「それは……不味いな」

「だよね!  急いで戻ろう!」

私達は急いで部屋へと向かった。


「クレアさん、ただいまー!」

私が勢いよく扉を開けて部屋へと戻ってくるとクレアさんが困り顔で出迎えてくれる。

「ローズ様、もっとお静かに!」

クレアさんが音を立てて入ってくる私をたしなめる。

「す、すみません急いでて、スチュアートさんは戻ってますか?」

キョロキョロと部屋を見て確認する。

「スチュアートさんはまだ戻ってませんよ?  ご一緒ではなかったのですか?」

「あっ……ちょっと色々とありまして」

腕をあげて頭をかくと、服の袖がボロボロになっているのにクレアさんが気がついてしまった。
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