貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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84.交渉※

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私は怒るバルトを優しく抱き上げると落ち着かせるように背中を撫でる。

「ローズ!  離せあいつを殺す!」

暴れるバルトを抱きしめたまま男に向き合った。

「それ、どういう事だ……」

声を低くして男に話しかける。

私が答えた事でハンターの男はしめたと口角をあげる。

「そいつは金になる獣なんだ!  手伝ってくれれば金を渡すから山分けしよう」

「その前に……最後の一匹って?」

「ああ、そいつは群れで行動しててな、そいつの仲間達はみんな捕まえたんだ。残りはそいつだけ一際綺麗な毛皮のそいつは倍の高値がつくはずだ」

「はぁ……仲間、最後、毛皮……」

聞いてて胸糞悪くなる言葉に怒りが抑えられなくなる。

「ああ、ちょっと想定外の事があってな……だが丁度取り分が増えた所だ。どうだいい話だと思うんだが?」

男がニヤッと笑ってこちらを向いた。

「こいつ!  殺してやる!」

バルトが怒りのあまり私の腕に爪を立てた。

「バルト、落ち着いて。こんな人の為にバルトが傷ついて欲しくない」

私はそっとバルトに語りかける。

「だがあいつは仲間を!  あいつらは生きたまま熱湯に入れられて皮を剥がれたんだ!」

「酷い、なんでそんなことが出来るの?」

私はバルトの仲間達の苦しみを思い悲しんでいるバルトを撫でた。

「でもここでバルトがこの人を傷つけちゃったらきっと良くないと思う。お願いバルト人の裁きは人に任せてくれないかな?」

きっとバルトが人を殺めたりでもしたらバルトが罰を受けることになってしまう。

私はバルトを見つめてお願いした。

「ふざけんな!  こいつを殺さなきゃ仲間達が報われない!」

バルトは私の腕から逃れようと暴れ出す。
怒りに我を忘れているようだった……

「お願い……バルト」

私はバルトの爪で腕が傷ついてもバルトを離さなかった。

「な、何を話している?  他にも誰かいるのか?」

男は目を凝らして私達の方を見るがよく見えないのか険しい顔をしている。

「今なら!  今ならあいつを殺せるんだ!  どけ!」

「嫌、今離したらもうバルトに会えない気がする!  絶対に離さない!」

私は更にバルトを強く抱きしめた。

「クソ!  もういい!」

ハンターの男は行動を起こさない私に痺れを切らし反対方向へと逃げようとしだした。

「あっ!  あいつが逃げる!」

「大丈夫、絶対逃がさない。バルト、私はあの人を許す気なんてないよ。ちゃんと罪は償ってもらう!」

「えっ……」

私の怒る声にバルトの力が少し抜けた。

「だからここで見てて!」

私はバルトをそっと地面に降ろすと、剣を抜きハンターに向かって走り出した。

「ロ、ローズ?」

バルトは私の行動に驚いて、逆に冷静に戻ったようだった。

私は男を追い詰めると走りながら枝を拾って男の足に投げつけた。

「うわっ!」

男は足を取られて地面に転がる、その隙に回り込んで男の前に立つと喉元に剣を突き立てた。
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