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79.男装※
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私が着替えて戻ってくると、寝ていたバルトがチラッと顔をあげて私を見た後すぐに起き上がってもう一度ど見る、まさに絵に書いたような二度見だった。
「お前ローズか?」
バルトに凝視され私は苦笑する。
「そうだよ、他の誰に見えるの?」
「いや……なんか男みたいだな」
バルトはまだ信じられないのか私に近づくと匂いを嗅いだ。
そしてホッとした顔を見せる。
その様子につい意地悪したくなった。
「何を確認してるの?」
バルトを見下ろしてニヤニヤと笑う。
「うるさい」
私は可愛いバルトを抱きしめてお腹をわしわしと撫でた。
二人でじゃれ合っていると廊下から足音が聞こえてきた。
バタバタ! バタン!
走ってくる音が近づいて来たと思ったら、部屋の扉が勢いよく開いた。
「ローズ様!」
スチュアートさんが心配するあまり急いで駆けつけてきた。
「スチュアートさん、どうしたんですかそんなに急いで……」
私はスチュアートさんの慌てた様子に驚いて固まってしまう。
するとスチュアートさんは私の顔を見るなりホッと息を吐いて壁に寄りかかった。
「ローズ様の事ですから、我慢できずにバルトさんともう行かれてしまったかと思いまして……よかったまだちゃんといてくれたのですね」
「ひどい! ちゃんとスチュアートさんが言ったこと守りますよ!」
「す、すみません。信じて無いわけではないのですが……」
スチュアートが慌てて謝って私の機嫌を取ろうとする。
「クックック、確かにローズなら行きそうだもんな」
バルトがさっきの仕返しのようにニヤニヤと笑っている。
「それはバルトでしょ! さっきだって一人で行こうとしてたじゃない!」
「えっ? バルトさんおひとりで行こうとしたのですか?」
スチュアートさんがバルトをじっと見つめる。
「いや、ローズは無理でも俺だけならいいかと……」
気まずそうに顔を逸らすが、スチュアートさんは腰に手を当てて怒った顔をする。
「バルトさん!」
スチュアートさんに怒鳴られてバルトがビクッと毛を逆立てた。
「な、なんだ……」
バルトは私の足に少し隠れながらスチュアートさんを見上げた。
「いいですか! これからはバルトさんもしっかりと自分の事を大切にしてもらわないと困ります。あなたに何かあれば悲しむのはローズ様ですからね!」
「そうだよ、バルト気をつけな!」
私は足に隠れたバルトを前に出してスチュアートに便乗する。
「な、なんか納得いかないが……気をつける」
バルトは素直に謝った。
「よろしい。では、二人ともベリーを取りに行きましょうか?」
スチュアートさんがにっこりと笑った。
私達は森の中を匂いを頼りにローズベリーの木へと向かった。
「ローズ様……本当にこちらなんですか?」
スチュアートさんが付いて行きながら不安そうに聞いてくる。
「はい、間違いないです。ほらローズベリーの匂いが……」
私はクンクンと鼻を動かすと微かに甘い匂いが森の奥からしてきた。
「ローズ……お前犬かよ」
バルトは私の鼻の良さに呆れている。
「バルトは感じないの?」
「ああ、匂わないな」
「スチュアートさんはどうですか?」
本当に匂わないのかと見るもスチュアートさんは首を横に振る。
「ローズ様は動物よりも鼻が利くようですね」
「昔っから鼻はいいんですよ~」
私は自慢げに言う、数少ない私の長所だった。
「そうなんですか?」
「はい、よくそれで家族の捜し物とか見つけていました」
私はタウンゼントにいるの父と弟を思い出した。
「父さんとクリス元気かな」
二人に聞こえないようにボソッと呟いた。
ここでの生活は新鮮で楽しいがたまに領地のみんなが恋しくなる。
でもそれを言うと心配する人達がいるから私はそんな気持ちを胸にしまった。
「お前ローズか?」
バルトに凝視され私は苦笑する。
「そうだよ、他の誰に見えるの?」
「いや……なんか男みたいだな」
バルトはまだ信じられないのか私に近づくと匂いを嗅いだ。
そしてホッとした顔を見せる。
その様子につい意地悪したくなった。
「何を確認してるの?」
バルトを見下ろしてニヤニヤと笑う。
「うるさい」
私は可愛いバルトを抱きしめてお腹をわしわしと撫でた。
二人でじゃれ合っていると廊下から足音が聞こえてきた。
バタバタ! バタン!
走ってくる音が近づいて来たと思ったら、部屋の扉が勢いよく開いた。
「ローズ様!」
スチュアートさんが心配するあまり急いで駆けつけてきた。
「スチュアートさん、どうしたんですかそんなに急いで……」
私はスチュアートさんの慌てた様子に驚いて固まってしまう。
するとスチュアートさんは私の顔を見るなりホッと息を吐いて壁に寄りかかった。
「ローズ様の事ですから、我慢できずにバルトさんともう行かれてしまったかと思いまして……よかったまだちゃんといてくれたのですね」
「ひどい! ちゃんとスチュアートさんが言ったこと守りますよ!」
「す、すみません。信じて無いわけではないのですが……」
スチュアートが慌てて謝って私の機嫌を取ろうとする。
「クックック、確かにローズなら行きそうだもんな」
バルトがさっきの仕返しのようにニヤニヤと笑っている。
「それはバルトでしょ! さっきだって一人で行こうとしてたじゃない!」
「えっ? バルトさんおひとりで行こうとしたのですか?」
スチュアートさんがバルトをじっと見つめる。
「いや、ローズは無理でも俺だけならいいかと……」
気まずそうに顔を逸らすが、スチュアートさんは腰に手を当てて怒った顔をする。
「バルトさん!」
スチュアートさんに怒鳴られてバルトがビクッと毛を逆立てた。
「な、なんだ……」
バルトは私の足に少し隠れながらスチュアートさんを見上げた。
「いいですか! これからはバルトさんもしっかりと自分の事を大切にしてもらわないと困ります。あなたに何かあれば悲しむのはローズ様ですからね!」
「そうだよ、バルト気をつけな!」
私は足に隠れたバルトを前に出してスチュアートに便乗する。
「な、なんか納得いかないが……気をつける」
バルトは素直に謝った。
「よろしい。では、二人ともベリーを取りに行きましょうか?」
スチュアートさんがにっこりと笑った。
私達は森の中を匂いを頼りにローズベリーの木へと向かった。
「ローズ様……本当にこちらなんですか?」
スチュアートさんが付いて行きながら不安そうに聞いてくる。
「はい、間違いないです。ほらローズベリーの匂いが……」
私はクンクンと鼻を動かすと微かに甘い匂いが森の奥からしてきた。
「ローズ……お前犬かよ」
バルトは私の鼻の良さに呆れている。
「バルトは感じないの?」
「ああ、匂わないな」
「スチュアートさんはどうですか?」
本当に匂わないのかと見るもスチュアートさんは首を横に振る。
「ローズ様は動物よりも鼻が利くようですね」
「昔っから鼻はいいんですよ~」
私は自慢げに言う、数少ない私の長所だった。
「そうなんですか?」
「はい、よくそれで家族の捜し物とか見つけていました」
私はタウンゼントにいるの父と弟を思い出した。
「父さんとクリス元気かな」
二人に聞こえないようにボソッと呟いた。
ここでの生活は新鮮で楽しいがたまに領地のみんなが恋しくなる。
でもそれを言うと心配する人達がいるから私はそんな気持ちを胸にしまった。
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