ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩

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「ミヅキ~朝だぞ?まだ寝てんのか?」

なかなか起きてこないミヅキにベイカーが部屋の扉を叩き、中を覗くと…

「あれ?」

部屋の中はものけのから…ミヅキはもちろんシルバ達もいない

「あれ?どこ行ったんだ?」

ベイカーは部屋に入ると布団に手を当てる…

「冷たい…いつの間に出かけたんだ?」

まぁシルバ達と一緒になら大丈夫だろう。

ベイカーはそうは思いながらも気になりギルドへと向かった。

ギルドに着くと受付へと向かう。

「フレイシア、おはよう」

「おはようございます。ベイカーさん依頼ですか?」

受付のフレイシアが笑顔でベイカーに挨拶をすると

「今日はどうされましたか?おひとりで依頼ですか?」

「いや、ミヅキはギルドに来たかな?」

「ミヅキちゃんですか?今日は見ていませんね…ギルマスのところに寄ってみますか?」

「そうする」

ベイカーはありがとうと手を上げるとギルマスの部屋へと向かった。

ートントン!

「入るぞー!」

ノックして部屋へと入ると仕事中のギルマスとセバスさんが顔をあげた。

「ベイカーさん、どうしました?」

ベイカーは部屋を見渡すがミヅキがいる様子はない、一応聞いて見ると

「ミヅキが来てないかな?」

「ミヅキさんですか?今日は来ていませんね」

セバスがギルマスを見るとギルマスのも頷く。

「ああ、わしも見てないぞ」

「そうか…」

「どうしたんですか?」

セバスが持っていたペンをおろすとベイカーの顔を見つめる。

「いや、朝起きたらミヅキが居なくてな。シルバ達もいないから多分一緒に出かけたんだと思うんだが…」

「ベイカーさんに何も言わずに出かけということですか?」

「そうなんだ…」

ベイカーが少し寂しそうに答えた。

「まぁ…もう一人で依頼も受けられるだけの力も知識もあるからな、いつまでも構ってる訳にもいかないって事かな…」

ベイカーの言葉にセバスも寂しい気持ちが込み上げる。

「ミヅキさんは…見た目はまだ幼い、しかしもう我々の世話は必要ないと?」

「それはミヅキがどう思っているか分からないが…」

ベイカー達は娘の成長に寂しそうにため息をつく。

「しょうがねぇだろ?子供ってのは成長するもんだ。いつまでも甘えん坊な子供でいてくれる訳じゃない」

ディムロスがベイカーとセバスの肩を叩くと

「今日は飲むか?」

クイッと飲む仕草をすると…

「ああ、」

「お供します…」

ベイカーとセバスが頷いた。

ギルマスとセバスはいつも通り仕事を終えると…ギルドにはベイカーが手持ち無沙汰で待っていた。

「どうですか?」

セバスが声をかけると

フルフル…

ベイカーが力なく首を振ると

「まだ帰ってこない…」

「そうですか…少し遅くありませんか?やはり何かあったのも知れませんよ」

「そ、そうかな」

ベイカーがガバッと立ち上がると

「俺少しそこら辺みてくるわ!」

「町は見たんですか?」

セバスが聞くと

「ぶらぶらと今日一日回ったが誰もミヅキ達を見ていない、多分外に行ったんだと思う」

「では私も…」

ベイカーとセバスは町の門へと足早に向かった。

門まで来ると…

「あれ?あれ…シルバ達じゃないか?」

門から少し出た先でシルバとプルシアが座って森の方を見つめている姿が見えた。

「シルバ!プルシア!」

ベイカー達が駆け寄ると、シルバ達が振り返る。

しかしそこにはシルバとプルシアしかいない…

「シルバ、ミヅキはどうした?お前達といたんじゃないのか?」

しかし話しかけても答えは帰ってこない…シルバ達はベイカーを見つめるとまた森へと視線を戻した。

「どうしたのでしょう、ミヅキさんに何かあったのですか?」

セバスが聞くと二人はただ首を振る。

「この様子だとこいつらもミヅキ待ちのようだな」

ベイカーは二人のそばに座りシルバ達が見つめる先を見ると…

シルバがガバッと立ち上がった!

尻尾を振り出すと…

「あれ?シルバにプルシア…それにベイカーさんにセバスさん?」

土で少し汚れたミヅキとシンク、コハク、ムーとレムが帰ってきた!

「ミヅキ!」

「ミヅキさん!」

ベイカー達が駆け寄ろうとする前にシルバとプルシアがミヅキに駆け寄った。

「ごめんね~ただいま」

ミヅキが笑顔で帰ってきた姿にベイカーとセバスもほっと胸を撫で下ろした。

「何処にいってたんだ?」

ベイカーが思わず声をかけると

「あっ…」

ミヅキが気まずそうに顔を逸らした…何かを隠すような顔にベイカーとセバスがやはりと顔を曇らせると

「本当はもっとちゃんと渡したかったけど…」

ミヅキは少し恥ずかしそうにすると収納から何かを取り出す。

「はい、シルバとプルシア。それにベイカーさんとセバスさん!いつもありがとう!父の日のプレゼント!」

ミヅキは葉っぱで作った容器を取り出しシルバ達に渡していく。

「父の日?」

ベイカーが戸惑いながら受け取ってミヅキを見ると

「うん、今日はお父さんに感謝する日なの…私達のお父さんといえば…シルバとプルシアそれにベイカーさんとセバスさんかなって」

ミヅキが恥ずかしそう笑ってみんなをみる。

「いつも私達の為を思ってくれてすごく感謝してます。これからも元気でいつまでもかっこいいパパでいてください!」

ミヅキとシンク、コハクとムーとレムが一緒に頭を下げた。

「これは…」

セバスさんが受け取ったものを見つめると

「これは、森の奥に生えてる木から貰えるお酒なの…ククノ様から聞いてとりに行ってきたんだ、だから内緒で行っちゃってごめんね。驚かせたくて…」

心配させた事を謝ると

「ミヅキ…」

「ミヅキさん」

二人が嬉しそうに顔をほころばせる…

「確かに心配しましたが、凄く嬉しいプレゼントです。ありがとうございます、でもやはり出かける時は声をかけてくださいね」

セバスさんが笑って頭を撫でると

「ミヅキ…ありがとうな!大切に飲ませて貰うよ」

ベイカーが笑って答えると

「うん!」

ミヅキは喜ぶ二人に嬉しそうに笑顔を返した。


その夜…疲れたミヅキは早々にシンク達と眠りについた。

ベイカーはシルバ達にミヅキを頼むとミヅキから貰ったお酒を持ってセバスさん達と待ち合わせた店へと向かった。

ーカラン…

扉を開くともう既にギルマスとセバスが来ていた。

「おまたせ」

ベイカーがセバス達の席に座ると

「じゃあ早速その酒をご馳走になろうかの?」

ギルマスが二人に笑いかける。

「まさか私達の為に黙って出かけているとは…」

「誰だよ、親離れみたいな事言ったのは!」

ベイカーが怒っていると

「お前だ」

「あなたですよね?」

二人がジロっとベイカーを睨む。

「えっ…そうだっけ?ま、まぁまぁ、じゃあ迷惑かけた分ジジイにも俺分を少し分けてやる。ファルさん小さいコップをくれ」

ベイカーが声をかけると店のマスターのファルさんがコップを持ってきてくれる。

ベイカーはコップに酒を流し入れると…

「これは…」

黄金に輝く酒がトロッとコップに注がれる。

周りには甘い香りが立ち込めていた…

「この芳醇な香り…」

ゴクリと皆が唾を飲む。

「凄く美味そうだな…初めて見るが蜂蜜酒かな?」

「それにしては嗅いだことの無い香りですね…」

三人はコップを手に取ると…

「じゃあミヅキに」

「「ミヅキに!」」

カチンッ

乾杯をして酒に口をつけると

「これは…」

三人は目を見開いた!

「美味い!それになんだ…体が軽い。まるで若返ったようだ!」

ギルマスが手を握りしてめ腕を見つめる。

「体から魔力が溢れてくるようです!すごい…一体なんのお酒でしょう」

「神木様からのおすすめの酒だからな…きっと滅多にお目にかかれる品物じゃないんだろうなぁ」

ベイカーは残っている酒をチビチビと飲む…

「これを俺たちの為だけにとってきてくれたんだな…」

どんな凄い物よりもその気持ちが嬉しいベイカーとセバスはいつもより早く酔いが回ってきた…

「乾杯!」

「乾杯」

何度も乾杯を繰り返す二人にギルマスが呆れている。

二人は頬を赤く染めいつまでも酒の味を堪能していた…
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