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魔王

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「何処だここは…」

呼び出された魔王はキョロキョロと辺りを見渡している…その姿はゲームで見た姿とは少し違っていた…

「やだ!凄くイケメン…断然好みだわ!」

美子は覆いかぶさったまま気を失ったケンシンを押しのけて魔王に近づくと

「魔王様!私は美子って言います!私があなたを呼び出しました!」

魔王は目の前に来た少女を見下ろすと

「あなたが私を?」

怪訝な顔をする…

しかし美子は構わずに魔王に近づくと

「私あなたが来るのをずっと…ずっと待っていたんです…どうか一緒に連れて行ってください…」

精一杯可愛らしい顔で魔王を上目遣いに見上げると…

「申し訳ないが、私には探している子がいます。あなたに構っている時間はありません」

申し訳無さそうに謝られる…そんな眉毛を下げた表情までかっこいいと美子は謝る魔王に構わずうっとりと見つめる…

美子の声に気を失っていたケンシンが目を覚ますと…

「あ、あれが魔王?なんだ…普通の人間じゃないか」

別に牙もなく羽も生えていない、そこら辺にいるただの人にしか見えなかった。

あれなら俺にでも…

ケンシンは剣を抜くとゆっくりと立ち上がり…

「美子に近づくな!」

魔王に向かって剣を突きだした!

「えっ…ケンシン…様?」

美子はわけがわからずにぼうっとしていると…

「なんですか?彼は…剣を向けると言うなら容赦しませんよ」

魔王は避ける素振りもせずに自分に突っ込んでくるケンシンの剣を見つめていると…

ボキッ!

ケンシンが振りかぶった剣を片手で受け止めるとそのまま剣を握りつぶした…

「「えっ…」」

美子もケンシンも驚き唖然とすると、魔王は気にした様子もなく手をパンパンとはたき…

「それでこちらは何処でしょう…私はあの子に呼ばれて来たと思ったのですが…」

先程から何かを探すように素振りに美子は嫌な予感がする…

どうもこの世界はゲームの通りに上手くいかない…まさか魔王まで…

ブンブンと首を振ると、そんな事は無いと考え直す!

「あなたが探しているのはきっと私です!私はずっとあなたを呼んでいました…この魔法陣も私が作って魔力を込めたんです!」

魔王の足元を見せると…魔王がスっと屈んで魔法陣をさわる…

「この魔力は…」

嬉しそうな顔を見せると

「あの子の魔力だ…」

愛しそうに魔法陣を撫でた。

「そう…私の魔力なんです」

美子はにっこり笑って魔王の手をとり、両手で包んだ。
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