ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩

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雪2

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アラン達は街を巡回中に雪の中に建っているドーム型の建物を見つけた。

「なんだこれ…ん?なんか…いい匂いがする…」

美味しそうな香りに、腹の虫がぐぅぐぅぅと鳴ると

「あっ、やっぱりアラン隊長」

ミヅキがカマクラの中から顔を出した。

「ミヅキか…」

アランがやっぱりお前かと呆れると

「カマクラを作って中で鍋をするんだよ」

「鍋!いいな!俺も食いたい!」

アランがカマクラの中に入ろうとすると

「アラン隊長!我らは巡回中ですよ」

セシルが中に入ろうとしたアラン隊長を引き止めると

「ちょっとくらいいいだろうが!セシルは真面目でつまんねぇよな…」

「誰のせいで真面目にならなきゃいけなかったと思ってるんですか!」

セシルさんが動こうとしないアラン隊長を引っ張るがビクともしない…

「みんな、手伝え!」

セシルが部隊兵達に声をかけると

「隊長~いい加減にしてくださいよ」

「こんな寒いのに手を煩わせないで欲しいよなぁ」

みんなでアラン隊長を担ぐと

「ああー!鍋が!」

アラン隊長が手を伸ばして抗っている。

「アラン隊長、残しとくからお仕事終わってからね…みんなも終わったら来てね」

セシルさん達にも声をかけると

「ありがとう、ミヅキちゃん。またね!」

セシルさん達がアラン隊長を担ぎながら巡回に戻って行った…。

「人が集まりそうだから…これじゃ足らないかなぁ~」

もう一棟カマクラを作るかな…と悩んでいると

「何やってんだ…ミヅキ?」

ギースさん達が騒がしい様子に集まってきた…

「あっ!ギースさん達いい所に!」

ミヅキがニコッと笑うと

「えっ…」

ギースが嫌な予感に後ずさりした…


「なんでこんな寒い中雪で家なんて作るんだよ~魔法で作れば一発だろ…」

「そうだけどさぁ~こうやってみんなでやるのが楽しいんじゃん、それにほら魔法使ってるよ!」

ミヅキがブロックを次々に作るとギースやボブがブロックを積んでいく。

テリー達が中で鍋を作っていると…

「ミヅキ、僕も手伝うよ」

テオが氷魔法でブロックを作ってくれた。

「ありがとう!じゃあここ任せてもいいかな?」

テオ達を見ると

「いいよ、ミヅキは他に何か作るの?」

「うん!お楽しみに…」

ミヅキはプルシアを連れてカマクラを作った裏の広場に行くと…

【リュカ達が遊べるもの作るからプルシア手伝ってね!】

ミヅキは雪を集めて巨大な山を作ると…

【プルシアここに階段作ってくれる?】

山の端に階段を作り頂上に登ると…

【巨大滑り台だよ、ここから綺麗に削って…】

風魔法で雪山を斜めに切るとツルツルの斜面が出来上がった…

【あれ?思ってたのと違うなぁ…凄い滑りそう…】

5m程の高さから45度の角度に綺麗なツルツルの平面になってしまった…

「ミヅキ~何が出来たんだ?」

リュカが面白そうだと登って来ると…

「うん…滑り台作ったんだけど…失敗みたい。もうちょっと削らないとかな…」

ミヅキが雪を削ろうとすると

「ここから滑るんだろ?ちょっと俺がやってみるよ」

リュカが構わず滑り出すと

「ちょっ!まって!」

「うわっ!」

ツルツルの斜面にリュカがあっという間に滑っていく!

「うわぁぁぁぁー」

リュカは止まることなく雪の中に突っ込んで行った…

「リュカ!大丈夫!?」

ミヅキが叫ぶと…

「すっげぇ楽しい!ミヅキ!これ最後少し飛べないかな?」

「えっ?と、飛ぶ?まぁ最後をちょっと上向きにすれば飛ぶけど…危ないよ」

「大丈夫!大丈夫!ちょっとやってくれ!」

リュカに言われるまま最後の滑り終わりを上向きに仕上げるて…着地場所にふわふわの雪を敷き詰めると…

「行くぞー!」

リュカが山の上から声をかける、ミヅキはプルシアと下で待機していると、リュカが凄い勢いで滑ってきた!

「うひゃあ!」

フワッと最後に空中に浮かび上がると…くるっと回って着地する。

「リュカ凄い!」

ミヅキが思わず拍手をすると

「すっげぇ楽しい!テオ達も呼んで来るな!」

リュカがみんなを呼びに行ってしまった…

【なんか…思ってたのと違うなぁ…これ前の世界なら絶対使用禁止だよ…】

【前?】

プルシアが聞くと

【何でもないよ。製造者としては滑らないとかなぁ…】

ミヅキが滑り台を見ると

【なら一緒に滑るか?】

プルシアがニコッとミヅキを見る。

【プルシアが一緒なら心強いね!滑ろう】

ミヅキとプルシアが滑り台の頂上に来ると…

【改めて見ると…高いね】

ミヅキが板を敷き座ると膝にプルシアを乗せる。

【行くよ!】

【ああ】

ミヅキがクイッと板を前に出すと…

「うぎゃあぁぁぁー」

思ったよりも滑るし速いし!

プルシアをギュッと抱きしめると…

【ミ、ミヅキ翼が…飛べん!】

ふたりはそのまま最後の剃り返しに来ると…

「おっふ…」

プルシアの体重が乗り勢いよく空に投げ出された…

ボフンッ!!

(ん?痛くない…)

ふわふわの着地に目をそっと開くと…

【ミヅキ!大丈夫か?】

シルバが見事ミヅキ達をキャッチしていた!

【シルバ!怖かったー】

ミヅキがシルバに抱きつくと…

【す、すまなかった…ミヅキを助けられなかった…】

プルシアが落ち込むと

【ごめんね、私がプルシアを抱きしめちゃったからだよね】

プルシアに謝っていると

「シルバ、どうしたんだ?」

ベイカーさんも駆けつけてきた…滑り台の事を説明すると…

「危ねぇなぁ…気をつけろよ」

ベイカーがコツンとミヅキの頭を叩くと

「ごめんなさい、これは壊すね…」

ミヅキが滑り台を解体しようとすると…

【1回滑りたい】

シルバがソワソワと尻尾を揺らす

「えっ…ベイカーさんシルバが滑りたいみたいだからやらせてもいい?」

「ん?まぁシルバなら問題無いだろ、俺も1回滑って見るかな…」

二人が上に登って行くと…

「じゃあ行くぞー」

ベイカーが足を前に出すと…

ツルッ!ゴンッ!

滑って頭を打ったまま滑り落ちて来る…

「べ、ベイカーさん!」

「いっ…!!!うわっ!」

頭を抑えたまま滑ってくると案の定空中に投げ出された…

【ギャハハ!ベイカー情けないなぁ!】

シルバが上で笑っていると

「痛ってえ…」

ベイカーが頭を抑えて起き上がる。

「ベイカーさん大丈夫?」

ミヅキがベイカーの頭を撫でながら回復魔法をかけると

「ありがとうな…凄い滑るんだな」

ベイカーが滑り台を見ると…シルバが板に乗り上から滑ってきた!

上手に座りながら滑ると…ぴょんと空中で回って綺麗に着地する!

【ふむ、まぁまぁだな】

ドヤ顔で戻ってきた…

「くっ…もう1回だ!」

ベイカーが登ると、リュカ達も戻ってきて滑り台に並ぶ。

「あれ…壊さなくていいのかな?」

【楽しそうだからいいんじゃないか?】

シルバが言うと…

【しかし物足りないな…俺はあっちにもっと高いのを作ってくる…】

シルバが動くと…コハクとムーも付いて行った…。

【これより高いって…なんか怖いなぁ…】

ミヅキはプルシアとシルバ達の後ろ姿を不安そうに見送った…。
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