ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩

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変身(ベイカー視点)

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歩いていると、ミヅキの…少し高めの自分を呼ぶ声が聞こえてきた…。

「ベイカーさん!」

なんだ?と振り返ると…そこにはミヅキはいなく…変わりにミヅキと同じ黒髪黒目の女性が笑いながら手を振っていた…。

可愛い子だな…

それが最初の印象だった…

「こんにちは、ベイカーさん」

笑顔で挨拶するその姿はミヅキを思い起こさせる…

いや!何処まで俺はミヅキ一色なんだ…しかしどこかであったかな?

不思議に思い聞いてみるが一方的に知られているだけのようだった…

身なりを見るが…奇抜な服だ…スラッとした足を惜しげも無く見せている…

冒険者なのだろうが手足に傷などなく綺麗な白い肌が黒髪と合っていた。

益々、ミヅキみたいだ…


俺とちょっとでいいから話がしたいと誘われる。

面倒だしミヅキとの約束もあるからと断るが…ちょっとだけとミヅキに似た顔で頼まれる…。

つい…了承してしまった…。

そこら辺のベンチに腰掛けると飲み物を買いに行ってくれた。

「お待たせしました、はいベイカーさん」

…一瞬ミヅキから貰ったと思ってしまうほど似ていた…。

ジュースを受け取ると中身は俺が一番好きな果物のジュースだった…何故知ってるんだ。

俺の考え込む様子に女性は心配そうにしている…またその顔がミヅキと被った…思わず見つめると目線をそらされる。

女性のそんな仕草にグッと来たのはいつぶりだろう…

そう言えば何か話がしたいとの事だったな…

ついミヅキに話しかけるように聞いてしまうと…しどろもどろになりながら

「好きな食べ物は?」

だと…なんだその質問!?突っ込むとさらに慌てだし口調も崩れる…。

その姿は可愛らしいかった…

耐えきれずに笑い出すと…キョトンとした顔をしてこちらを見ている。

そう言えば名前を聞いてなかったな、また喋る機会があるかもしれないと名を聞くと…困った様な顔で固まっていた…この顔…。

ミヅキが何か秘密がある時に顔に似てる…。

つい言葉にだし言ってしまうと…

「誰に…」

誰に?こうやって誰かと話してもいつも気にしてしまう大事な娘だ…。

「俺の今一番大事な子だ…」

これを言えばどの女も嫌な顔をする…しかし嘘をつく気にはなれない。

だがこの子の反応は違った…嬉しそうに頬を染めそして真剣な顔をしたと思うと…

「ベイカーさん…ありがとう…大好きです」

そう言って笑う…その笑みに見とれていると顔が近づいてきた、動けずにいると…触れるか触れないかの弱いタッチで頬にキスを落とされる…。

サラッと顔に触る髪からは女性の匂いがした…。

彼女はくるっと向きを変えると足早に立ち去ってしまった…。

俺は…しばらくベンチから動けなかった。




次の日…やはり見られていた…。

しかしやましいことは何一つしていない!

周りからの質問も交わしていたが、クソこいつらモテないもんだからこういう事になると執拗い…つい墓穴を掘ると…頬にキスされた事を白状する…

するとミヅキが…

「…キス…嫌だったの…?」

昨日の彼女の様な顔で聞く…。

ミヅキのそんな顔を見ていられずについ本音を言ってしまった…。

ヤバいと思ったが…ミヅキの反応は想像と違い嬉しそうにしていた…

えっ…と思いミヅキに話しかけようとすると…モテない冒険者達が雪崩のように押し寄せてきてもみくちゃにされる…。

その間にミヅキはセバスさんに連れて行かれたようだった。

帰って来ると憔悴しており…ついあの時の事は聞けずじまいだ…。

あの子にはあの日以来会っていない…。

その後セバスさんに憐れんだ表情で見られ…肩を叩かれた…。
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