上 下
35 / 35

35.

しおりを挟む
「ではそろそろ屋敷に帰ろうか」

お茶のおかわりもして満足した私は少しウトウトとしてしまう。

「ラーミア、眠いなら私の腕の中で寝てていいぞ」

お父様に抱っこされるとコクっと頭が傾いた。

「だ、大丈夫…です」

そうは言いながらも眠気になかなか勝てずにまぶたが重くなる。

お父様はそんな私を笑いながら抱き上げた。

「カートレット様よろしければこちらをお土産に、お嬢様も気に入っていたようですから」

するとアウルさんが先程食べていたお菓子を包んで持ってきてくれた。

ナディアが受け取ると頭を下げる。

「アウルさん……ありがとうございます」

私は半分目を閉じたような状態でお父様の腕の中からアウルさんにお礼を言った。

「またいらしてください」

アウルさんの優しい声と笑顔を見ながら私は眠りについてしまった。




「ふふ、疲れてしまったのね」

リリアは幸せそうな顔で眠るラーミアの頬を撫でながら微笑んでいた。

「楽しく終われてよかった。この店にきて正解だった、アウルありがとう」

私はこの店の店主にお礼を言う。

「もったいないお言葉、ありがとうございます。私共はお客様をお迎えして楽しんで頂けたらそれで満足です。またぜひいらして下さい」

私は謙虚な受け答えするアウルに多めのチップを渡すようにとアデリーに顔で合図する。

「ではまた」

アデリー達にあとは任せて私達は先に馬車へと向かった。

息子のヨハンもグッスリと眠り可愛いわが子達を起こさないようにゆっくりと馬車を走らせ屋敷へと戻った。

この日のお出かけはラーミアにとってもいい体験となったようで何度か街へと出かけることができた。

ラーミアはあの店が気に入った様子で街に行くと必ず寄ってくるようだった。

今日も朝から妻とラーミアが出かけるようで朝の挨拶に向かった。

「お父様おはようございます!」

ラーミアの朝から天使のような笑顔に仕事に行くのが嫌になってしまった。

「ラーミアおはよう。今日も私の娘は可愛いなー」

抱き上げてその頬にキスをすると少し恥ずかしそうに頬が赤くなる。

「もう、赤ちゃんじゃないからキスはしないでって言ったのに……」

ラーミアはプクッと赤くなった頬を膨らませた。
しかしその顔は本気で嫌がっているようには見えず、恥ずかしさから言っているように感じる。

「すまんすまん」

私はそんな顔も可愛いと気持ち半分に笑いながら謝った。

「今日も街にいくんだろ?気をつけて来るんだよ」

「はい!」

ラーミアのいい返事にアデリーとステファンにも目線を送る。

二人にはなにかあったらわかってるなと笑みを向けるとグッと顔が引き締まった。

「リリアも気をつけて、ラーミアを頼むよ」

リリアに唇に軽くキスをして挨拶すると上目遣いに見られてクスッと笑われる。

「わかってます。あなたもお仕事頑張って下さい」

そう言われ唇の端に微かに触れるだけのキスを返された。

ああ、本当に仕事に行きたくない……

私の気持ちを察したのかアデリーが素早く従者に声をかけて私を二人から離してしまった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(35件)

荒谷創
2024.10.07 荒谷創

チャイにまでせずに淹れるなら細かい茶葉使って淹れて、多めのホットミルクと砂糖でロイヤルミルクティーに。
チャイとして淹れるなら、濃く煮出して大量のミルクと砂糖。

セカンドフラッシュ(夏摘み)ならロイヤルミルクティーにぴったりです(^ω^)
オータムフラッシュ(秋摘み)なら、チャイにするとより美味しいですよ。甘いので小さいカップでどうぞ。

くれぐれもミルクで抽出しようとしないで下さいね~(*´・ω・`)b

解除
荒谷創
2024.10.06 荒谷創

無理強いはよろしく無いし、本人の希望でも荒療治の類いになる行為だが、前向きなのは良し。
いつまでも過去に怯えているのは、本人の為にならないのだから。

ファイトー(^ω^)

解除
HIRO
2024.10.06 HIRO

33 自分のと隣→自分の隣では?(承認不要です)

解除

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

第二の人生正しく生きる

三園 七詩
ファンタジー
そこそこの腕の冒険者として生きてきたレオドールは魔物の討伐途中で命を落とした。 冒険者として命を落とす覚悟を決めていたレオドールはいい人生だったと振り返る。 そんな時一度だけ恋をした女を思い出し、もう一度くらい会いたかったな……と思った瞬間にこの世を去った。 そして目覚めると見覚えのない天井で目が覚める。 そして隣にはあの時思い出した少女が大人になった姿で目の前に現れた。 彼女は俺を見ると泣き出し強く抱きしめた……そして知らない名前で俺を呼んだのだった。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。