狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

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33.新しいお店

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お母様とヨハンは先に部屋に通されていたようで私達が遅い様子にハラハラしながら待っていた。

「あなた!ラーミア、大丈夫?」

私達が部屋に入るなり駆け寄ってくる。

「大丈夫、そこであいつらにあったがラーミアはしっかりと挨拶も出来たんだ」

誇らしそうに私をお母様に褒めていた。

「ラーミア偉いわ!さぁこちらに座って」

お母様は私をお父様から奪い取ると自分の隣に座らせた。

ヨハンは寝てしまったようで部屋に用意されていた簡易ベッドのようなところに寝かされてナディアが側にいた。

私は少し落ち着くと部屋の様子をうかがう。

ここは個室になっていているのはお父様とお母様、私にヨハン、あとはアデリーとナディアが壁際に控えていて扉の外にはステファンさんがいる。

「ここなら落ち着いてお茶を楽しめるだろう」

お父様も椅子に腰掛けるとトントンとノックがしてステファンが顔を出すと気まずそうに口を開いた。

「旦那様、オーナーがいらっしゃいましたが……」

「そうか、私が外で挨拶をしよう」

お父様はチラッと私の方をみて席を立つ。

その様子に私は口を開いた。

「お父様、私なら大丈夫。お母様が隣にいるもん」

きっとオーナーとは男の人なのだろう。
でもさっきの人達みたいな人達なら緊張するが話せなくないとわかった。

それにお父様が連れてきてくれた場所だ、変な人がいるとは思えなかった。

「そうかい?」

お父様は心配しながらステファンさんにオーナーを呼ぶように声をかけた。

少しして男の人、というよりはおじいさんのような初老の男性が入ってきた。

「カートレット侯爵様、本日はようこそお越しくださいました」

おじいさんはニコニコと笑った顔で目が開いているのかわからない顔をしていた。
しかし怖い気持ちは無くてじっと顔を見てしまう。

すると向こうも私に視線を移した。

私はビクッと肩を跳ねさせるとおじいさんは穏やかそうに微笑んだ。

「これはすみません、これ以上近づかないので安心してくださいね」

優しい声で私に話しかけ一歩下がってくれた。

そのスマートな動きに私はこの人は平気だと本能でわかった。

「だ、大丈夫です」

精一杯の返事をする。

「ありがとうございます。私はこの店のオーナーのアウルと申します」

アウルさんはそう言って頭を深く下げた。

「ではお茶とお菓子の説明をしますね。気になったものがあれば仰ってください」

そうしてお茶やお菓子の説明をしていく、なんか難しい名前や聞いた事が無いものだらけだが、お父様とお母様はよく知ってるのか時折口を挟んでどんなものかと質問をしていた。

「こちらはアッサムといい最近仕入れました」

途中で私でも知ってるお茶の名前がでた。

「アッサム」

思わず口走ると視線が私に集中する。

「お嬢様はアッサムをご存知ですか?」

アウルさんが私に聞いてきた。

「あっ……いえ、す、すみません。なんでもな、ないです!」

私は慌てた口を抑えて下を向く。

途中で話を遮るなんてなんて事をしてしまったのだろうと震えていた。

「何も問題ありませんよ、それよりも私はお嬢様の好みを教えて欲しいです」

アウルさんの話し方があんまりにも優しくて私は顔を上げた。

アウルさんはちっとも嫌そうな顔をしないでむしろ嬉しそうにお茶を見せてくれた。

なんだかその顔に見覚えがあった。

「あ、あのね……そのお茶にミルク入れての、飲みたい」

「ミルクを……それは興味深いですね」

アウルさんは新しいものを見つけた少年のように目を少し開いて輝かせている。

「ラーミアのおすすめなら私もそれを頂こう」

「私も」

お父様とお母様は嬉しそうに私の興味を持ったお茶を飲みたいと言ってくれた。
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