上 下
33 / 35

33.新しいお店

しおりを挟む
お母様とヨハンは先に部屋に通されていたようで私達が遅い様子にハラハラしながら待っていた。

「あなた!ラーミア、大丈夫?」

私達が部屋に入るなり駆け寄ってくる。

「大丈夫、そこであいつらにあったがラーミアはしっかりと挨拶も出来たんだ」

誇らしそうに私をお母様に褒めていた。

「ラーミア偉いわ!さぁこちらに座って」

お母様は私をお父様から奪い取ると自分の隣に座らせた。

ヨハンは寝てしまったようで部屋に用意されていた簡易ベッドのようなところに寝かされてナディアが側にいた。

私は少し落ち着くと部屋の様子をうかがう。

ここは個室になっていているのはお父様とお母様、私にヨハン、あとはアデリーとナディアが壁際に控えていて扉の外にはステファンさんがいる。

「ここなら落ち着いてお茶を楽しめるだろう」

お父様も椅子に腰掛けるとトントンとノックがしてステファンが顔を出すと気まずそうに口を開いた。

「旦那様、オーナーがいらっしゃいましたが……」

「そうか、私が外で挨拶をしよう」

お父様はチラッと私の方をみて席を立つ。

その様子に私は口を開いた。

「お父様、私なら大丈夫。お母様が隣にいるもん」

きっとオーナーとは男の人なのだろう。
でもさっきの人達みたいな人達なら緊張するが話せなくないとわかった。

それにお父様が連れてきてくれた場所だ、変な人がいるとは思えなかった。

「そうかい?」

お父様は心配しながらステファンさんにオーナーを呼ぶように声をかけた。

少しして男の人、というよりはおじいさんのような初老の男性が入ってきた。

「カートレット侯爵様、本日はようこそお越しくださいました」

おじいさんはニコニコと笑った顔で目が開いているのかわからない顔をしていた。
しかし怖い気持ちは無くてじっと顔を見てしまう。

すると向こうも私に視線を移した。

私はビクッと肩を跳ねさせるとおじいさんは穏やかそうに微笑んだ。

「これはすみません、これ以上近づかないので安心してくださいね」

優しい声で私に話しかけ一歩下がってくれた。

そのスマートな動きに私はこの人は平気だと本能でわかった。

「だ、大丈夫です」

精一杯の返事をする。

「ありがとうございます。私はこの店のオーナーのアウルと申します」

アウルさんはそう言って頭を深く下げた。

「ではお茶とお菓子の説明をしますね。気になったものがあれば仰ってください」

そうしてお茶やお菓子の説明をしていく、なんか難しい名前や聞いた事が無いものだらけだが、お父様とお母様はよく知ってるのか時折口を挟んでどんなものかと質問をしていた。

「こちらはアッサムといい最近仕入れました」

途中で私でも知ってるお茶の名前がでた。

「アッサム」

思わず口走ると視線が私に集中する。

「お嬢様はアッサムをご存知ですか?」

アウルさんが私に聞いてきた。

「あっ……いえ、す、すみません。なんでもな、ないです!」

私は慌てた口を抑えて下を向く。

途中で話を遮るなんてなんて事をしてしまったのだろうと震えていた。

「何も問題ありませんよ、それよりも私はお嬢様の好みを教えて欲しいです」

アウルさんの話し方があんまりにも優しくて私は顔を上げた。

アウルさんはちっとも嫌そうな顔をしないでむしろ嬉しそうにお茶を見せてくれた。

なんだかその顔に見覚えがあった。

「あ、あのね……そのお茶にミルク入れての、飲みたい」

「ミルクを……それは興味深いですね」

アウルさんは新しいものを見つけた少年のように目を少し開いて輝かせている。

「ラーミアのおすすめなら私もそれを頂こう」

「私も」

お父様とお母様は嬉しそうに私の興味を持ったお茶を飲みたいと言ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

【完結】親に売られたお飾り令嬢は変態公爵に溺愛される

堀 和三盆
恋愛
 貧乏な伯爵家の長女として産まれた私。売れる物はすべて売り払い、いよいよ爵位を手放すか――というギリギリのところで、長女の私が変態相手に売られることが決まった。 『変態』相手と聞いて娼婦になることすら覚悟していたけれど、連れて来られた先は意外にも訳アリの公爵家。病弱だという公爵様は少し瘦せてはいるものの、おしゃれで背も高く顔もいい。  これはお前を愛することはない……とか言われちゃういわゆる『お飾り妻』かと予想したけれど、初夜から普通に愛された。それからも公爵様は面倒見が良くとっても優しい。  ……けれど。 「あんたなんて、ただのお飾りのお人形のクセに。だいたい気持ち悪いのよ」  自分は愛されていると誤解をしそうになった頃、メイドからそんな風にないがしろにされるようになってしまった。  暴言を吐かれ暴力を振るわれ、公爵様が居ないときには入浴は疎か食事すら出して貰えない。  そのうえ、段々と留守じゃないときでもひどい扱いを受けるようになってしまって……。  そんなある日。私のすぐ目の前で、お仕着せを脱いだ美人メイドが公爵様に迫る姿を見てしまう。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~

扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。 公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。 はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。 しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。 拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。 ▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...