狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

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31.楽しい買い物

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「こちらがラーミア様とヨハン様をモデルに思いついたデザインです。王都でも話題なんですよ」

フレアさんが自信満々にみせてくれたのは女の子用のドレスとお揃いで着る男の子用の服のセットだった。

「かわいい!」

私は思わず駆け寄ってヨハンの服の方を見てしまう。

「ラーミア、自分のドレスではなくてヨハンの方がいいの?」

お母様が椅子に腰掛けながら笑っている。

お母様はヨハンを抱いているのでお店側が大きなソファーを用意してくれて、それに腰掛けながら服を見ていた。

「だってヨハンとお揃いで着れるなんて、すごく楽しみなんだもん」

「そうね、フレアそれは絶対にお願いするわ」

「かしこまりました。ラーミア様少しサイズを確認しますので着てみませんか?」

私はお母様の顔を見るとこくりと頷き頷く様子に「はい」と元気よく返事をした。

フレアさん達数人で慣れた様子で着替えさせてくれるとお母様に見せに行く。

するとお父様がいつの間にかお店に入ってお母様の隣に座っていた。

「カートレット侯爵様、挨拶が遅れて申し訳ありません本日はようこそお越しくださいました。」

フレアさんが慌ててお父様に挨拶をする。

「いやいや、大丈夫だ。それよりもラーミアをよくみせてくれ」

お父様は私を見るなり目尻が下がりニコニコと笑っている。

「ラーミア様に合わせて作りましたのでサイズがピッタリのようでした。きっとヨハン様と並ぶと……」

フレアさんは想像しているのか嬉しそうな顔で説明している。

「ウンウン、これはいいな」

「あなたもそう思うでしょ」

お父様もお母様も満足な様子でしきりに頷く。

「これは決まりだな、あとは気になるのはあるかい?」

お父様が私に聞いてくる。

「ひとつあればいいよ」

そんなにあっても着る機会も少ないだろうと私は首を横に振った。

「せっかく街に出れたんだ、ラーミアの好きな物なんでも買ってあげるよ」

「うーん」

お父様はとにかく買ってあげたくて仕方なさそうだった。

私はどうしようかとお店を見回す。

確かにどれも可愛らしくていいが何枚もあってもなー

どうしようかと悩んでいるとフレアさんが助け舟を出してくれた。

「ラーミア様これなんてどうでしょう、ヨハン様とお揃いの帽子に靴もあるんですよ」

「それは元から買う予定だったから大丈夫だ、他には?」

お父様が横から口を挟んでくる。

「他にも動きやすくスカートの膨らみを抑えたものなどありますが」

「え!それいいなー」

私は思わず食いついた。
ドレスは可愛いが機能性が悪く、走ったりするのに向いてないからそんなのがあるなら着てみたい。

フレアさんがいくつか持ってきてくれたので気に入った色の物を買うことにした。

その後も進めるもの全てお父様が即決して買っていく。

「お父様!そんなになんでも買わなくて大丈夫です!」

私はたまらずにお父様にストップをかけた。
このままだと本当にお店のものを全部買いそうな勢いだった。

「し、しかしどれもラーミアに似合ってるし折角の記念に買ってあげたくて」

お父様がしゅんと寂しそうな顔をしてしまった。

私はそんなお父様のそばに行くと手を掴み顔を見あげた。

「また連れてきて、私お父様と何度でもお出かけしたいよ」

「!!」

お父様は言葉にならないのか口をパクパクとしながら私を抱きしめた。
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