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26.店主
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「一体なんなんだ!?」
エイベルは太客が慌てて帰ってしまい拍子抜けを食らっていた。
カートレット侯爵家と言えばこの国有数の貴族だ。
奥様のリリア様がこの店のドレスを気に入って贔屓にしてくれていた。
しかし子供が出来てからは店に来ることがなくなり、屋敷まで出張するようになっていた。
それは問題ないのだが、来るのは女性にして欲しいと要望があった。
それからは女性店員だけがカートレット家に優遇されて、売上もほとんどが彼女達がとるようになっていた。
私は焦っていた、このままいくと店主の座を女性の副店長に奪われるのではないかと……
そんな時チャンスが訪れた、リリア様が久しぶりにこの店に買い物に来ると言うのだ。
しかも貸し切りにして屋敷から出たことのない箱入り娘のラーミア様も連れてくるとの事。
「これはチャンスだ!ラーミア様もこの店の御用達になってもらうぞ!」
私が従業員達にその日に出すドレスなど指示を出そうとすると副店長の女が気まずそうに言ってきた。
「エイベルさんすみませんが、リリア様から店には女性だけにして欲しいとの事です」
「なんだと」
「ラーミア様は男性が好きではないらしく、ですからいつも呼ばれるのは私達女性なんです」
「そんな馬鹿な嘘をつくな!どうせ自分の売上にしたくて言ってるんだろ!」
「違います!それにこれはカートリッジ家からのご要望です」
「くそ!」
そう言われ私は持っていたドレスを叩きつけた。
そしてカートリッジ家が買い物に来る日私は隣の店舗で息を潜めていた。
この店は元は隣の店舗と同じ建物で行き来ができるのだ。
普段は扉の前に棚を置いて隠しているが前日に棚を退かして通れるようにしておいた。
隣の店の店主に金を渡して私は子供が好きそうなお菓子やら装飾品を大量に用意しておいた。
子供なんていい物を見せておけば男が少し苦手な程度なら物で釣ればコロりと態度を変えるだろうと思っていた。
そしてその時はやってきた。
私はリリア様達の声が聞こえてくると扉を使って店に入る。そして二人に近づこうとすると副店長に見つかってしまった。
「エイベルさん!何してるんですか!」
「うるさい、この店は俺の店だ。入って何が悪い。リリア様もこれを見せれば私の方がいいと言うに決まっている」
この日の為に仕入れた最高級の土産を持って、止める従業員をおしのけリリア様の元に向かった。
リリア様は私の顔を見るなりすごく驚いていた。
私はすぐ様、笑顔で対応してゴマすりをするがリリア様の表情は優れない。
これは不味いと標的を変えてお嬢様のラーミア様に目をつけた。
すると恥ずかしいのかリリア様の後ろに隠れているラーミア様を見つめて笑顔で声をかける。
男が苦手と聞いていたが、別に逃げるわけでも泣くわけでもない。
やはりみんな大袈裟に言っていたのだと確信して、私は心の中で過保護過ぎる対応に呆れていた。
「ラーミア様、これをどうぞ」
なんかやればコロッと態度が変わるだろうと思ったがいくら声をかけても顔をあげようとしない。
聞こえないのかと近づこうとするとメイドに腕を掴まれた。
「何をする!」
メイドの分際で貴族の爵位を持つ私に歯向かうことに腹をたてて振り払うとそのすきにリリア様がお子様を抱えて帰ろうとしていた。
今帰られたら不味いと私は慌てて行く手をさえぎった。
なんでも好きな物を渡そうと思っているのにリリア様はずっと睨むばかりで首を縦に振らない。
なかなか思うようにならない展開に私は焦っていた。
するとメイドが警備兵を呼んでしまい、押さえつけられているすきにリリア様は馬車に乗り込み屋敷に戻ってしまった。
「この償い必ずしてもらう!」
警備兵の一人がすごい剣幕で睨みつけてくる。
「自分の店に来て何が悪い!」
私は何も間違った事などしていない。
「クソ!お前達がちゃんと協力しないせいだ!」
副店長達を怒鳴りつけると冷ややかな目で見つめられる。
「私、今日でこの店を辞めさせて頂きます」
ペコッと頭を下げると店を後にした。
すると他の従業員達も同じように辞めると店を出ていく。
「好きにしろ!」
私はラーミア様のために買っておいたお菓子を扉に向かって投げつけた。
エイベルは太客が慌てて帰ってしまい拍子抜けを食らっていた。
カートレット侯爵家と言えばこの国有数の貴族だ。
奥様のリリア様がこの店のドレスを気に入って贔屓にしてくれていた。
しかし子供が出来てからは店に来ることがなくなり、屋敷まで出張するようになっていた。
それは問題ないのだが、来るのは女性にして欲しいと要望があった。
それからは女性店員だけがカートレット家に優遇されて、売上もほとんどが彼女達がとるようになっていた。
私は焦っていた、このままいくと店主の座を女性の副店長に奪われるのではないかと……
そんな時チャンスが訪れた、リリア様が久しぶりにこの店に買い物に来ると言うのだ。
しかも貸し切りにして屋敷から出たことのない箱入り娘のラーミア様も連れてくるとの事。
「これはチャンスだ!ラーミア様もこの店の御用達になってもらうぞ!」
私が従業員達にその日に出すドレスなど指示を出そうとすると副店長の女が気まずそうに言ってきた。
「エイベルさんすみませんが、リリア様から店には女性だけにして欲しいとの事です」
「なんだと」
「ラーミア様は男性が好きではないらしく、ですからいつも呼ばれるのは私達女性なんです」
「そんな馬鹿な嘘をつくな!どうせ自分の売上にしたくて言ってるんだろ!」
「違います!それにこれはカートリッジ家からのご要望です」
「くそ!」
そう言われ私は持っていたドレスを叩きつけた。
そしてカートリッジ家が買い物に来る日私は隣の店舗で息を潜めていた。
この店は元は隣の店舗と同じ建物で行き来ができるのだ。
普段は扉の前に棚を置いて隠しているが前日に棚を退かして通れるようにしておいた。
隣の店の店主に金を渡して私は子供が好きそうなお菓子やら装飾品を大量に用意しておいた。
子供なんていい物を見せておけば男が少し苦手な程度なら物で釣ればコロりと態度を変えるだろうと思っていた。
そしてその時はやってきた。
私はリリア様達の声が聞こえてくると扉を使って店に入る。そして二人に近づこうとすると副店長に見つかってしまった。
「エイベルさん!何してるんですか!」
「うるさい、この店は俺の店だ。入って何が悪い。リリア様もこれを見せれば私の方がいいと言うに決まっている」
この日の為に仕入れた最高級の土産を持って、止める従業員をおしのけリリア様の元に向かった。
リリア様は私の顔を見るなりすごく驚いていた。
私はすぐ様、笑顔で対応してゴマすりをするがリリア様の表情は優れない。
これは不味いと標的を変えてお嬢様のラーミア様に目をつけた。
すると恥ずかしいのかリリア様の後ろに隠れているラーミア様を見つめて笑顔で声をかける。
男が苦手と聞いていたが、別に逃げるわけでも泣くわけでもない。
やはりみんな大袈裟に言っていたのだと確信して、私は心の中で過保護過ぎる対応に呆れていた。
「ラーミア様、これをどうぞ」
なんかやればコロッと態度が変わるだろうと思ったがいくら声をかけても顔をあげようとしない。
聞こえないのかと近づこうとするとメイドに腕を掴まれた。
「何をする!」
メイドの分際で貴族の爵位を持つ私に歯向かうことに腹をたてて振り払うとそのすきにリリア様がお子様を抱えて帰ろうとしていた。
今帰られたら不味いと私は慌てて行く手をさえぎった。
なんでも好きな物を渡そうと思っているのにリリア様はずっと睨むばかりで首を縦に振らない。
なかなか思うようにならない展開に私は焦っていた。
するとメイドが警備兵を呼んでしまい、押さえつけられているすきにリリア様は馬車に乗り込み屋敷に戻ってしまった。
「この償い必ずしてもらう!」
警備兵の一人がすごい剣幕で睨みつけてくる。
「自分の店に来て何が悪い!」
私は何も間違った事などしていない。
「クソ!お前達がちゃんと協力しないせいだ!」
副店長達を怒鳴りつけると冷ややかな目で見つめられる。
「私、今日でこの店を辞めさせて頂きます」
ペコッと頭を下げると店を後にした。
すると他の従業員達も同じように辞めると店を出ていく。
「好きにしろ!」
私はラーミア様のために買っておいたお菓子を扉に向かって投げつけた。
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