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23.店
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「ありがとう、ラーミア」
お母様はまだ申し訳なさそうな笑顔を浮かべる。
お茶会は怖いが街にも来れたし何とかなるかもしれない。
男の人だって、お父様やステファンさんお初め屋敷の人達のように怖がらなくても大丈夫なのかも……
そう思いながらドレスを選んでいたらお店の奥の方がさんがしくなった。
「エイベルさん! 今日は出勤しないで下さいとお願いしましたよね!」
先程の優しいお店のお姉さんの怒る声が聞こえてきた。
「あら、何かあったのかしら」
お母様が心配そうに声のした方を見つめるとナディアが私達の前にスっと移動した。
「奥様、お嬢様と後ろに」
私達を庇うようにしている。
するとお店の奥の扉から人が出てきた。
「これはこれはリリア様!本日は当店にようこそお越しくださいました!」
ビクッ!
私はその声にお母様のドレスの裾にしがみついた。
「エイベルさん、今日は女性だけでお願いしましたよね」
お母様から普段は聞かないような厳しめの声がかかる。
「そうですか一人くらい構わないですよね。私はこの店の店主ですし、リリア様の服の好みなど一番把握しております」
エイベルという人はごまをするような声でお母様に話しかけながら近づいてきた。
「あー!そこにおられるのはラーミア様ですね!初めまして」
すると私に気がついて顔を見ようと回り込んできた。
私は動けずにお母様にしがみつくしかなかった。
「あっ、あっ……」
突然の事に声も出せない。
「近づかないで下さい!」
するとナディアがエイベルの腕を掴んで私の方に行かせないようにと引っ張った。
「おい!メイドの分際で暴力を振るうとはなんだ!」
エイベルはムカッとしたようで大きな声を出した。
「ひっ!」
その声に私は小さく悲鳴を上げる。
エイベルという人は前世の父を思い出させた。
権力のある人には媚びを売るように下手にでて、私のような弱い相手には強気で声を荒らげる。
私の一番苦手とする相手だった。
「ラーミア!」
お母様は私を抱き上げると店を出ようとする。
するとエイベルはナディアを振り払い私達の行く手を阻んだ。
「リリア様、お待ち下さい!何か不手際があったのなら謝罪します!ですからどうか私にも屋敷に行く許可を下さい!そうだ!お嬢様にもプレゼントを用意したんです、おい!ってこい!」
エイベルはまた大きな声を出すと誰かに命令した。
「お、お母様……怖い……」
私はお母様の胸に顔を埋めて震えていた。
「エイベルさん、私達のことを思うならもう喋らないでそこを退いて下さい!私たちはもう帰らて頂きます」
ナディアはすぐに立ち上がりエイベルの体を押しのけ遠ざけようとしてくれた。
「おい!いい加減にしろ!俺は話がしたいだけで、お嬢様だってプレゼントを貰えば機嫌を直してくれるはずです!」
エイベルはお母様の機嫌を損ねてしまったと必死に挽回しようと食い下がらない。
「ステファン!」
するとナディアが外で待機しているステファンさんを呼んだ。
ナディアの声にステファンさんと数名の警備兵達がお店に駆け込んだ。
「あぁ……」
女性店員さん達もエイベルを下がらせようとしていたが興奮して聞く耳を持たなかった。
お店の惨状にステファンはエイベルを見つめると事態を把握して飛んできた。
お母様はまだ申し訳なさそうな笑顔を浮かべる。
お茶会は怖いが街にも来れたし何とかなるかもしれない。
男の人だって、お父様やステファンさんお初め屋敷の人達のように怖がらなくても大丈夫なのかも……
そう思いながらドレスを選んでいたらお店の奥の方がさんがしくなった。
「エイベルさん! 今日は出勤しないで下さいとお願いしましたよね!」
先程の優しいお店のお姉さんの怒る声が聞こえてきた。
「あら、何かあったのかしら」
お母様が心配そうに声のした方を見つめるとナディアが私達の前にスっと移動した。
「奥様、お嬢様と後ろに」
私達を庇うようにしている。
するとお店の奥の扉から人が出てきた。
「これはこれはリリア様!本日は当店にようこそお越しくださいました!」
ビクッ!
私はその声にお母様のドレスの裾にしがみついた。
「エイベルさん、今日は女性だけでお願いしましたよね」
お母様から普段は聞かないような厳しめの声がかかる。
「そうですか一人くらい構わないですよね。私はこの店の店主ですし、リリア様の服の好みなど一番把握しております」
エイベルという人はごまをするような声でお母様に話しかけながら近づいてきた。
「あー!そこにおられるのはラーミア様ですね!初めまして」
すると私に気がついて顔を見ようと回り込んできた。
私は動けずにお母様にしがみつくしかなかった。
「あっ、あっ……」
突然の事に声も出せない。
「近づかないで下さい!」
するとナディアがエイベルの腕を掴んで私の方に行かせないようにと引っ張った。
「おい!メイドの分際で暴力を振るうとはなんだ!」
エイベルはムカッとしたようで大きな声を出した。
「ひっ!」
その声に私は小さく悲鳴を上げる。
エイベルという人は前世の父を思い出させた。
権力のある人には媚びを売るように下手にでて、私のような弱い相手には強気で声を荒らげる。
私の一番苦手とする相手だった。
「ラーミア!」
お母様は私を抱き上げると店を出ようとする。
するとエイベルはナディアを振り払い私達の行く手を阻んだ。
「リリア様、お待ち下さい!何か不手際があったのなら謝罪します!ですからどうか私にも屋敷に行く許可を下さい!そうだ!お嬢様にもプレゼントを用意したんです、おい!ってこい!」
エイベルはまた大きな声を出すと誰かに命令した。
「お、お母様……怖い……」
私はお母様の胸に顔を埋めて震えていた。
「エイベルさん、私達のことを思うならもう喋らないでそこを退いて下さい!私たちはもう帰らて頂きます」
ナディアはすぐに立ち上がりエイベルの体を押しのけ遠ざけようとしてくれた。
「おい!いい加減にしろ!俺は話がしたいだけで、お嬢様だってプレゼントを貰えば機嫌を直してくれるはずです!」
エイベルはお母様の機嫌を損ねてしまったと必死に挽回しようと食い下がらない。
「ステファン!」
するとナディアが外で待機しているステファンさんを呼んだ。
ナディアの声にステファンさんと数名の警備兵達がお店に駆け込んだ。
「あぁ……」
女性店員さん達もエイベルを下がらせようとしていたが興奮して聞く耳を持たなかった。
お店の惨状にステファンはエイベルを見つめると事態を把握して飛んできた。
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