狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

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13.歩行練習

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日々の歩きの練習のおかげで私は無事に歩けるようになった。

初めて歩いた日は父と母と庭で遊んでいる時だった。
私は散歩に疲れて芝生に座り込んで一休みしていた。
父と母は椅子に腰掛けてそんな私の様子を少し離れたところからみていた。

すると一羽の小さな小鳥が私の少し前に降り立った。
その瞬間私はあの時の恐怖が蘇ってきた。
大きな鳥に襲われた事を思い出して立ち上がると父と母の方に向かって足を出した。

「ままー、ぱぱー」

私は必死に二人を呼んだ!

「ラーミア!」

父は私の様子に気がつくとすごい速さで近づいてきて抱きしめてくれた。

今は父の胸の中が安心できる場所になっていた。ホッとすると父が声をかけてくる。

「何があった!?」

「あえー」

私は小鳥を指さして震えた。

「小鳥?」

父がなんだと首を傾げる。

「こわー」

私が怖いと伝えるとあの時の事を思い出したようだ。

「ラーミア、あの鳥は襲ってこないほらよくみえごらん」

父に言われて見てみると、その小鳥は思っていたより小さく、チュンチュンと可愛く鳴いて地面をつついていた。

「かわい」

「そうだろ?  あんな鳥はもう二度とこない、それにラーミアを怖がらせるものはパパが全て退けてやるからな」

「まぁ、それだとお父様が一番怖そうね」

後ろからお母さんがクスクスと笑って近づいてきた。

「それはそうとラーミア、今歩かなかったか?」

父の言葉に自分の行動を思い出してみると、そういえば足が動いたかもしれない。

「う!」

私は下ろしてと父の腕で暴れる。

「わかったわかった」

父が優しく私を下ろすと私はゆっくりと足を出した。

ヒョコ!

でた!足が前にでた!あんなに一歩が怖く難しかったが1回できるとなんて事はない。
私はその日からあっという間に歩けるようになったのだ。


「ラーミア様はひとつ覚えると成長が早いですね」

アデリーさんが私が歩く姿に感心して後ろから声をかけてきた。

「う!」

私はでしょとアデリーさんに親指を向ける。

「私の言葉も理解しているようにしか見えませんね」

不思議そうに見つめていた。

私はあれから屋敷の中を歩き回る練習をしていた。
その所々で屋敷に働いている人に出会うことになった。

父は私にこんなにも男の人に合わせないようにしてくれていたのだと改めて気づいた。

行くところ行くところ屋敷で働く男の人がいたのだ。
私を警備する兵士さん、扉を開けてくれる人、ご飯を作ってくれる人に庭の手入れをする人。
他にも仕事をしている人が何人もいる。

私が歩き出し色んな所に行くとみんなが慌てて隠れてくれる。私の男性不信は屋敷では有名らしく父から絶対姿を見せるなと命令が出ているのだった。

しかし私が神出鬼没に現れるものだから屋敷中大騒ぎだったらしい。

父は私には好きなように歩かせるように言って、みんなには姿を見せないように命令してたのを知ったのはしばらくしてからだった。

しかしそのおかげか屋敷の男の人はみんな優しく私に敵意をもって接して来る人はいなかった。

いきなり近づいて来たり、大きな声を出されない限りは私も前ほど怯えることは無くなっていた。

その中でもよく会うアデリーさんと警護のステファンさんは唯一触れても平気な男の人だった。

なので屋敷をよく知る二人とメイドさんを連れて私は日々屋敷を探検していたのだ。

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