狂犬を手なずけたら溺愛されました

12.父の溺愛

父との交流が当たり前になると、父の生活も少し変化した。

父は朝私に行ってきますの挨拶をするとすぐに仕事に向かい、いつもより早く帰ってくるようになった。

「ラーミアただいま！」

父が帰る時間にはお母さんと出迎えるのも日課となった。

そして私も父と交流するうちに父の周りにいる男性にも少し慣れてきた。

「ラーミア様おはようございます」

アデリーさんもその一人で初めて顔を見たのは父の出迎えの時だった。

アデリーさんは私を見るなりしまったと素早く姿を隠す。
なんかその姿がロンが悪いことをすると犬小屋に隠れる姿に似てて笑ってしまった。

「あらラーミア、アデリーの事は平気そうね」

お母さんが私の変化に気がついた。しかしそのことに父は面白くない顔をする。

「私はあんなに長い間ラーミアを触れなかったのにお前はなんですぐに慣れたんだ？」

父がギロっとアデリーさんを睨むのだ。

「ぱー、めよ」

私がダメだと注意すると父はすぐに謝って私を抱き上げる。

「ラーミア、他の男は嫌いでいいんだぞ。お前はパパだけ好きでいいんだ」

「もう、あなたったら」

お母さんは父の様子に苦笑いするがアデリーさんは呆れた顔をしていた。

「今からそんな事でラーミア様がお嫁に行く時はどうするんですか･･･」

ボソッとつぶやくと私をそっとお母さんに返して父はアデリーさんを捕まえて仕事部屋へと連れてった。

次の日アデリーさんは青白い顔に目に隈をつけて疲れきった様子だったそうだ。
メイドさんの話を聞いてみると、どうやら私の可愛さと今後のことなど一晩中話を聞かされていたらしい。

次の日父は艶々で元気そうに出てきたけどなぁ？徹夜した顔には見えなかったからきっと勘違いなんだろう。

「うー」

頑張ってと私はそっとアデリーさんにエールを送った。

そんなわけで私は穏やかに屋敷の中で大切に育てられた。

父が帰ってくると手を引かれて外で歩きの練習をする。
その様子をお母さんが幸せそうに眺めている。

きっとこれが本当の家族なんだ･･･

私、やっと家族を手に入れられたよ。

この事を何より隣のおばあちゃんとロンに知らせてあげたかった。