9 / 35
9.言葉、大事
しおりを挟む
「ラーミア、無事でよかった。怪我がなくてよかった」
お母さんは何度も何度もそう言うと私を撫でた。
お母さんの姿を見ていると私の気持ちも落ち着いてきた。
すると先程私を庇った父の事が少し心配になる。
「まー」
私が声をかけるとお母さんはハッとして私を凝視する。
「い、今なんて?」
私は恥ずかしいがもう一度「まー」とお母さんのことを呼んだ。
声は出せるようになっていたがどうしても今のお母さんを呼ぶのが恥ずかしかった。
ここまで愛情表現してくれて大切に育ててくれたお母さんに母と認識はしていたが何となくむず痒く呼べずにいた。
しかし今は大丈夫、その人は私のお母さんだ。
そう思えた。
「まー」
もう一度と呼ぶとお母さんは嬉しそうに破顔してさらに涙を流し私を抱きしめた。
「私の事をママと呼んでくれたのね」
「うー」
コクっと頷く、そして次の言葉を伝えた。
「ぱー」
「え? もしかしてパパ?」
「うー」
私はコクっと頷いた。
「パパと呼んでくれるのね」
お母さんは自分が呼ばれた時以上に喜んでいる。
「パパは大丈夫よ」
「うーうー」
私は嫌だと首をふった。
あの父は身を呈して私を助けてくれた、私のあんなに態度にも怒ることなく付き合ってくれた。
そんな人があの父と同じ事をするとは思えなかった。
「ぱー」
私はもう一度お父さんと呼んでお母さんを見つめる。
その姿にお母さんは優しく微笑んだ。
「お父様に会いに行きたいのね」
「うー!」
私はそうだと強く頷いた。
お母さんは私を抱き上げると外の人に声をかける。
聞けば鳥は無事に外に移動されて今は屋敷の片付けにおわれているようだ。
「あの人ところに行きたいの」
「ですが奥様」
外で戸惑う声が聞こえた。
「大丈夫よ、近くの兵士達は下がらせておいて」
「わかりました」
声が遠のくとしばらくしいつものメイドさんが顔を出した。
「奥様、ラーミア様」
私の顔をみてホッと微笑む。
「ラーミアは大丈夫よ、それであの人は?」
「今部屋にて手当てをされています」
「部屋に主人だけにしてくれる?」
メイドさん察したのかただいまと部屋を飛び出し行った。
しばらくして息荒く戻って来ると私達を先導してくれる。
初めて行く道に私はキョロキョロと興味深く周りを観察した。
「ふふ、ラーミアはこの道は初めてよね」
「うー」
私が返事をするとメイドさんが驚いて振り返る。
「ラーミア様がお言葉を!?」
「そうなの、さっきママと言ってくれたのよ」
「奥様!」
メイドさんは嬉しそうに目をうるませている。
なんか空気を読んだ方がいいかと私は「まー」ともう一度言ってあげた。
するとお母さんは得意げに「ね!」とウインクしてメイドさんはさらに泣き出してしまった。
こんな事ならもっと早く喋ってあげればと私は申し訳なく思った。
お母さんは何度も何度もそう言うと私を撫でた。
お母さんの姿を見ていると私の気持ちも落ち着いてきた。
すると先程私を庇った父の事が少し心配になる。
「まー」
私が声をかけるとお母さんはハッとして私を凝視する。
「い、今なんて?」
私は恥ずかしいがもう一度「まー」とお母さんのことを呼んだ。
声は出せるようになっていたがどうしても今のお母さんを呼ぶのが恥ずかしかった。
ここまで愛情表現してくれて大切に育ててくれたお母さんに母と認識はしていたが何となくむず痒く呼べずにいた。
しかし今は大丈夫、その人は私のお母さんだ。
そう思えた。
「まー」
もう一度と呼ぶとお母さんは嬉しそうに破顔してさらに涙を流し私を抱きしめた。
「私の事をママと呼んでくれたのね」
「うー」
コクっと頷く、そして次の言葉を伝えた。
「ぱー」
「え? もしかしてパパ?」
「うー」
私はコクっと頷いた。
「パパと呼んでくれるのね」
お母さんは自分が呼ばれた時以上に喜んでいる。
「パパは大丈夫よ」
「うーうー」
私は嫌だと首をふった。
あの父は身を呈して私を助けてくれた、私のあんなに態度にも怒ることなく付き合ってくれた。
そんな人があの父と同じ事をするとは思えなかった。
「ぱー」
私はもう一度お父さんと呼んでお母さんを見つめる。
その姿にお母さんは優しく微笑んだ。
「お父様に会いに行きたいのね」
「うー!」
私はそうだと強く頷いた。
お母さんは私を抱き上げると外の人に声をかける。
聞けば鳥は無事に外に移動されて今は屋敷の片付けにおわれているようだ。
「あの人ところに行きたいの」
「ですが奥様」
外で戸惑う声が聞こえた。
「大丈夫よ、近くの兵士達は下がらせておいて」
「わかりました」
声が遠のくとしばらくしいつものメイドさんが顔を出した。
「奥様、ラーミア様」
私の顔をみてホッと微笑む。
「ラーミアは大丈夫よ、それであの人は?」
「今部屋にて手当てをされています」
「部屋に主人だけにしてくれる?」
メイドさん察したのかただいまと部屋を飛び出し行った。
しばらくして息荒く戻って来ると私達を先導してくれる。
初めて行く道に私はキョロキョロと興味深く周りを観察した。
「ふふ、ラーミアはこの道は初めてよね」
「うー」
私が返事をするとメイドさんが驚いて振り返る。
「ラーミア様がお言葉を!?」
「そうなの、さっきママと言ってくれたのよ」
「奥様!」
メイドさんは嬉しそうに目をうるませている。
なんか空気を読んだ方がいいかと私は「まー」ともう一度言ってあげた。
するとお母さんは得意げに「ね!」とウインクしてメイドさんはさらに泣き出してしまった。
こんな事ならもっと早く喋ってあげればと私は申し訳なく思った。
189
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる