収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

連載

試食

「なら、俺が食ってみせるよ」

ビオスさんが自分の皿だからと手を伸ばすとお刺身にわさびを少しつけてヒョイっと口に入れた。

「うむ…やっぱり美味いぞ」

その様子を疑いの眼差しで毒味係は見つめている。

「作った方は皆そう言います。私達は毒に慣れているので効かなかっただけかと…あなたはどうせ解毒剤でも先に飲んでいるんでしょ？」

毒味係が疑っていると兵士達がビオスさんを囲み出した、まるで逃げるのを見越して警戒するように…

「待ってください！」

そんなのやだ！しかも自分が用意したものがそんなふうに言われるなんて！

私は叫んでビオスさんの傍そばに駆け寄った！

「このわさびを用意したのは私です！ビオスさんは悪くありません！食べるなら私が食べますから！」

そういうとわさびをお刺身に乗せてパクッと食べた！

「や、やめなさい！今すぐ吐くんだ！」

毒味係の人達が慌てて止めようとするが構わずにゴクッと飲み込んだ。

んー！少しツーンと来るが別に毒ではないから大丈夫。

「ほらね！子供の私でも大丈夫です。これは薬味です」

「お二人共これはこういう食材なのです、ほら私も食べてみせます」

サミュエルさんもそういうとお刺身を食べた。

「なら、私も食べますよ」

「じゃあ俺も！あれ美味いんですよね」

近くにいた人たちも続いてお刺身を食べ出すとその様子に毒味係達が顔を見合わせた。

「これは…私がもう一度食べて見ます」

この国の毒味係の人がいま一度お刺身に手を伸ばした。

先程とは違って皆と同じように少しだけわさびをつけてお刺身を食べると…

「これは…全然辛くない！先程のツンとくる感じも爽やかな香りが鼻に抜ける感じだ…これは美味しいです」

「そ、そんな！？」

もう一人も納得いかないと手を出した、しかしその結果は同じものだった。

「これは…私達の食べ方の問題だったのですね…大変失礼しました」

「わかっていただけてよかったです」

サミュエルさんが頷くと

「俺は気にしてないから大丈夫だ！それよりも他のも食ってみてくれ！美味いぞ！」

ビオスさんが他の料理をすすめる。

「私達は、味わうわけではないので…」

毒味係が首を振る。

「でも！みんなが作る料理本当に美味しいんですよ！毒味係の毒味なら私がやりますから少しだけでも味わってみてください」

私はビオスさんが用意した料理に手を伸ばした。

その様子に驚いて毒味係の二人が手を止めてしまう。

「あっ…すみません勝手に、でも美味しいものを美味しく食べれないのがなんだか寂しくて…」

やりすぎたと慌てて手を引っ込めた。

「いや、君のような子供がそんなことをする必要はないよ…君のような子供が入れるのならここは比較的安全なのかもね」

そういうと毒味係は少し肩の力を抜いて他の料理の毒味を始めた。