収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
109 / 180
連載

王宮

しおりを挟む
イーサンは王子と別れるとクロードに店を任せて屋敷へと戻ってきた。

ミラの部屋へと直行すると…

トントン…

扉をノックすると可愛い声が返ってきた。

「はーい!」

「ミラ…私だ、入るよ」

声をかけて扉を開くと

「イーサン様おかえりなさい!」

ミラが駆け足で近づいてきた。

「今日は早いですね!」

笑顔で下から見上げてくる…その顔はいつものミラだった。

あんな事があったのにミラは気を病むことなく元気な姿に戻ってくれた…

それがまたあんな事を思い出しながら話をするなど…イーサンには耐えられなかった。

そんなイーサンの様子にミラは気がつくと

「どうしました?」

心配そうにこちらを見上げている…

「ミラ…」

どう話そうかと悩んでしまい言葉が出てこない…

イーサンの顔がどんどん悲しみに染まっていくと連動するようにミラの顔が心配そうに見つめる。

「私の事なら言って下さい。私は大丈夫ですよ。イーサン様がそんな顔するのって大抵私の事ですよね?」

「実は…」

イーサンはミラが王宮に呼ばれるかもしれない事を説明した。

「また嫌な事を思い出させて…すまない」

イーサン様が謝ると…

「なーんだ!そんな事…」

ミラはほっと息を吐いた。

「そ、そんな事では…ミラには一生心に残る傷になっただろ?」

「うーん…確かに嫌な事だったけど、イーサン様もだし、みんながいてくれたから大丈夫!何も怖くないよ!今度来たら噛み付いてやるんだ!」

ガブッと噛むふりをするとようやくイーサン様が笑ってくれた。

「それだけどね…あの男はもうミラに何かする事はないよ…」

イーサン様がそっとミラを抱き上げると椅子に座らせた。

どういう事?と首を傾げると…

「あいつはね…ジェイコブは死んだんだ」

「えっ…」

ミラの顔が驚きで固まった。

「自業自得だからミラが気にする事はひとつも無い。それだけはわかって欲しい」

コクッ…とミラが頷くがその顔は沈んでいる。

「私…あの時気を失ったからその後の事分からないよ。それでもいいの?」

「ああ、あの時王子に話した事をそのまま伝えればいいよ…ただミラが小さいのがねぇ…」

「え?」

「ミラぐらいの歳の子があそこまで話せるのは…目立ってしまうよ」

イーサン様の言葉にキョトンとすると、イーサン様の心配事を理解してニヤリと笑った。

「それも大丈夫です!どうせならこれをチャンスにしますから」

「チャンス?」

「もうファイ王子にもバレちゃいましたからね。こうなったら正体とことんバラします!」

「しかし…危なくないかい?また狙われたりしたら…」

「そしたらイーサン様達が守ってくれますか?」

「もちろんだ!どうなったって守るよ…」

「ありがとうございます!なら私は大丈夫!あっでもひとつ聞きたいことが…」

ミラが再びニヤリと笑う…イーサンはその表情に笑って頷いた。
しおりを挟む
感想 244

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。