収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩

文字の大きさ
上 下
101 / 180
連載

メアリーお母様

しおりを挟む
メアリー…お母様…でも一度もあった事がない…その温もりを知らない私は何となく彼女を母とは思えなかった…

でもみんなに愛されていた人…


「メアリー様はあの御屋敷で妾の子として引き取られました…ずっと隠されゾーイ様と暮らしていたお優しいメアリー様はあの暴君なジェイコブの考えに馴染めずに屋敷で孤立していきました…そんな時にメアリー様が急にあらぬ罪を着せられてあの収容所へと入れられる事になりました。その理由は私達使用人には伝えられず…何故そんな事なったのか分かりません…」

イーサン様が悲しそうに首を振る。

「その後…メアリー様が収容所でお亡くなりになったと聞いて私はその遺体の確認と回収を命令されました…メアリー様はゾーイ様の元へと返して生まれ育った場所に埋葬しました…しかしその時にメアリー様が収容所で子を産んだことを聞かされたのです…」

それが私か…

自分の事なのに他人事のように感じる。

「私はその子供を引き取りたいと言うと金銭を要求されました…そして急いで金を用意し戻って見ると…もう子供は居ない…死んだと言われたのです」

ジョンさん達が…匿ってくれたからだな…

みんなのことを思い出し私の胸がほんのりと温かくなる。

「しかし諦めきれなかった私はどうにかその痕跡がないかと…せめて遺体でもいいからメアリー様とその子供を一緒に埋葬して差し上げたかった…ですのであの屋敷を逃げるように辞めて…クロード様のお力を借りてここまでのし上がって来ました。あそこから出す為には金とある程度の地位が必要でしたから…」

イーサン様は私達の為にそこまでしてくれたんだ。

「俺は少し力を貸しただけだ、ここまで来たのはイーサンの実力だ」

クロードが笑うと

「ありがとうございます。そして私は収容所の看守長に頼み込んでメアリー様の子供の事を探って貰ったのです…そこで見つけたのがミラでした」

イーサン様が嬉しそうに私を見つめる。

「あの知らせを聞いた時はどれほど嬉しかったか…メアリー様の忘れ形見が生きている…しかし収容所で生まれ育ち外に一度も出たことがない…私はミラに普通の幸せを味わって貰いたかった。死んだメアリー様の分まで…」

イーサン様の手が微かに震えている…イーサン様はお母さんの事が…

イーサン様はフーっと息を吐いて気持ちを落ち着かせると…

「そこで看守長に頼んでミラをあそこから出してもらいました…ミラはあそこで生まれただけです。何も罪は犯しておりません…ですので罰するのなら私を…」

イーサン様がファイ王子に頭を下げた。

ファイはイーサンを見て、その隣で心細そうにする子供の眼差しにどうしたものかと頭を抱えた。

「うーん…とりあえずその事は置いといて先を聞こうか…それでメアリーに似ていたミラを見つけてジェイコブやブレンダンがこの子を誘拐したと…」

「そうとしか…」

「あとあのおじいさんですけど小さい子が好きみたいです…私の事をそういう目で見てました」

「なっ!」

私の発言に大人達が目を剥く。

「なんて事を…」

「あの部屋…あのベッド…他にも被害にあった子がいたのかも…」

ゾクッと背筋が寒くなるとイーサン様が後ろから優しく肩に手を置いてくれた。

すると肩の力がスっと抜ける。

「本当に最低の奴だな…もう二度とその様な事が出来ない体になったのは天罰だな」

王子が忌々しげにそう言った。

ん?

私が首を傾げると…王子がそれに気が付きニコッと笑った。

しおりを挟む
感想 244

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。