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繁盛店

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ビオスさんが来てからパッドさんの仕事はぐんと楽になった。

元から一緒に働いていた事もあり二人の息はピッタリだった、ビオスさんも収容施設に入っていたとはいえ、そこで料理の仕事を任されていたので腕が落ちると言うことは無かった。

「これなら客を増やしても大丈夫そうだな」

クロードさんもビオスさんの仕事ぶりに満足そうに頷く。

そしてその後ろでニコニコと笑うミラを見つけると…

「ミラ、またビオスのところに来てるのか?」

声をかけた。

「うん!仕事終わったら三人で次の料理の話するの!楽しみだなぁ~」

椅子に大人しく座って足をぶらぶらとさせる。

ビオスが来たことでミラが子供のように喜ぶ姿が多くなった事もクロードとイーサンはほっと安堵していた。

ビオスのおかげで店の上客も増えてミラージュがこの街では知らない人がいないほどに繁盛した頃…ミラの待ち望んでいた知らせが入った。



「た、大変だ!王都からお忍びで第二王子がミラージュに来たいと言っているそうだ!」

珍しく慌てるクロードさんが屋敷へと飛び込んできた。

のんびりとイーサンとゾーイとお茶を飲んでいたミラはクロードの言葉にニヤリと笑った。

「やっときた!…」

ミラはボソッと呟いた…

「でも一見さんですよね?どうやって予約を?」

イーサンが聞くと

「侯爵家知り合いに頼んだみたいだ…でもあれは絶対に王子だと思う」

「身分を明かさないで食べに来るって事ですか?」

「ま、まぁそうなるな…予約は侯爵家でとっていた。堂々と来るなら名前を使って予約でも命令でもするだろうからな…だが…」

クロードは言いにくそうにイーサンとゾーイをチラッとみる。

イーサンはクロードの様子に何かを察した。

「まさかその侯爵家とは…」

「ああ、ジェイコブ侯爵だ…」

「あのクソ野郎!」

いつも穏やかに笑うイーサン様からとは思えない言葉が飛び出した!

ミラはびっくりしてイーサンを凝視した!

「イーサン!」

ゾーイが取り乱したイーサンの腕をぐいっと引いた。

「あっ…す、すみません…ごめんねミラ驚かせて…」

イーサンはふっと顔を戻すとミラに笑いかけた。

「だ、大丈夫…ですか?その…ジェイコブ侯爵と王子…来ない方がいいならお断りしてもいいですよ」

イーサン様にそんな顔をさせてまで来て欲しくは無かった。

「しかしミラの望む事に王族の客が付くことが望みなんですよね?」

「別に王族じゃなくてもある程度権力者ならいいかなって思ってます」

「それだと王族なら確実って事か…」

クロードがため息をつくと

「あの店はミラがある目的の為に作ったものだ。ミラの好きにしていい…って言いたいが侯爵家の紹介を無下にもできない。それはイーサンもわかってるよな?」

「はい…」

「まぁ当日は対応は俺一人でやるからイーサンとミラは店に近づくな」

「えっ!?私も?」

私は関係ないんじゃ…と思ってイーサン様を見ると悲痛な面持ちでこちらを見ていた。

「イ、イーサン様!」

今にも泣き出しそうなイーサンにミラは慌てて駆け寄った!

「ごめん…ミラ。その日は私と居てくますか?」

「うん!うん!何処にも行かない…だからそんな顔しないで…」

ミラはぎゅっとイーサン様に抱きついた。
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