収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩

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「イーサンの旦那、ミラの料理はやっぱり凄いですよ」

今日も新しいメニューを持ってパッドはイーサンの元を訪れていた。

「そうだな…この前ミラのコロッケを友人にお土産に持たせたら、また食べたいと催促が来たんだ…」

イーサンが困った様につぶやくと

「そりゃ凄い!ミラの料理は貴族達にも認められたってことですよね!」

パッドが嬉しそうにすると

「早速ミラに教えてやろう!」

パッドは急いでミラの元に戻ろうとすると…

「いや!待ってくれ…この事はまだミラには内密に…やっとここに慣れてきた所なんだ。また騒ぎにでもなればミラが萎縮してしまうかもしれない」

「ああ…」

パッドも何となく思い当たる節があるのか頷く。

「確かに…時折なんか一人外からこう…内側を微笑ましく見てるような事があるな…なんて言うか…楽しんでるのにふっと我に返るというか…」

「まだここを自分の居場所だと思えないのかも知れません…そんな時に外からのちゃちゃを入れられたくはありませんから…」

イーサンがじっと何かを考えるように一点を見つめる。

「まぁ俺はミラが楽しんでりゃいいよ、こんな俺にこうやって好きな料理を作らせても貰ってる。俺は旦那には感謝しかねぇからな」

「ありがとう…これからもミラの様子を注意して見てやってくれ、そして何かあればすぐに…」

「ああ、知らせる」

パッドが頷くと

「ところで今日のミラの料理はなんだい?」

イーサンは書類を避けるとミラの料理を手前に引き寄せてパカッと蓋を外すと…

「今日はピーマンの肉詰めだとよ」

そこには丸々とそのままのピーマンを焼いたものがあった。

「ピーマン…」

イーサンの顔が歪む。

「ふふふ…俺が旦那がピーマンが好きじゃないって言ったらこれを作ったぞ…」

ニヤニヤと笑う。

「ミラの料理…残す訳には…」

イーサンが覚悟を決めて目を閉じて一気に口に放り込む…勢いよく口を動かすと…

「この…苦味が…ない?むしろ甘い!」

「なっ!不思議だよな、まるのままよく焼いただけなんだぜ」

「これがピーマン…私は今まで違うものを食べていたのでは?」

「いや、全く同じ物だ。同じ畑で取れたピーマンだ。ミラ曰く切り方や焼き方…それだけで食べ物の食感や味がだいぶ変わるらしい…本当にあいつ五歳か?」

「生まれた日は…正確には…でもメアリー様が亡くなった年と考えるとやはり五歳でしょう」

イーサンの顔がピーマンの苦味を感じた時の様に歪むと

「そうだったな…そこら辺はあんまり聞かない方がいいな…悲しい事をこれ以上思い出さない方がいいよな」

「ええ…」

イーサンはもう一口とピーマンの肉詰めを口に運んだ…

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