収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

連載

出発

ミラはとりあえず今のあるものだけを持って行く事にした。

｢用意は出来たかい？｣

ケイジ看守長が聞くと

｢はい｣

ミラはしっかりと頷く。

｢じゃあ行こうか…｣

ケイジ看守長が手を差し出すとミラは握り返し二人で歩いて行く。

｢あっ！ミラちゃん今日帰るんだね｣

歩いてる途中であった看守達がじゃあねと手を振るとミラはそれに笑顔で返した。

｢お世話になりました！皆さんもお仕事頑張って下さい｣

｢ああ！人数がだいぶ減らされて大変だけど…その分環境が良くなったからね！僕らもしっかりと頑張るよ｣

看守達の言葉にケイジ看守長を見ると…

｢この度看守達の不正が発覚してね…大々的なクビ切りをしたんだよ…ここも良くなるよ｣

ケイジ看守長が笑うと

｢ありがとうございます｣

ミラは小さい声でお礼を言った。

看守長に連れられて収容所の扉をくぐる…ここを通ればもうここには戻れない…しかしミラは後ろを振り返らなかった。

外に出ると明るい日差しが迎えてくれる。

豪華な馬車が目の前に止まっていた…

ミラが出てくると馬車から一人の男性が降りてきた…

男性はミラをみて顔が綻ぶ…そして懐かしそうに涙ぐんだ。

｢メアリー様…｣

ママの名前だ…

ミラはその男性を見上げてよく見てみるが見覚えはなかった。

｢はじめまして…ミラです｣

ペコッと挨拶をすると

｢ミラ…さんと言うのですね。私はイーサンと申します。以前あなたのお母様に仕えていた者です｣

イーサンはミラの前に膝を付いた。

｢イ、イーサン様！｣

その様子にケイジ看守長が慌ててイーサンを立たせようとするが構わないとイーサンはケイジ看守長を手で制止させる。

ケイジは黙ってその様子を伺っていると

｢あなたにお会いしたかった…よかった諦めなくて｣

嬉しそうに目を潤ませる。

ミラは泣きそうなイーサンに持っていたハンカチを渡した。

｢泣かないで…｣

イーサンは嬉しそうにそれを受け取ると…

｢お優しい…本当にお母様にそっくりです｣

｢ママに？そっか…似てるんだ｣

｢ええ…私の知っている事で良ければなんでもお話しますよ｣

｢本当に！？｣

ミラが喜ぶと

｢ええ、それとミラさんにはこれから私の娘になっていただきたいと思っております…どうでしょう？｣

イーサンが伺うようにミラに聞くとミラはケイジ看守長をみた。

｢私にミラちゃんをここから出すように頼んだのはこちらのイーサン様なんだよ｣

｢メアリー様のお母様も屋敷で待っていますよ｣

｢おばあ…ちゃん？｣

｢ええ｣

イーサンが優しく笑う。

｢今すぐに決めなくても大丈夫です…一度私の屋敷でゆっくりと心と体を休めて下さい…そしてじっくりと決めて下さればいい｣

｢はい…｣

ミラはこくっと頷いた。