収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

連載

交差する思い

｢そっか…｣

ミラは寂しそうにつぶやいた…

｢お前は…別に悪い事をしてここにいる訳じゃない、だから本来の場所に戻るだけだ…｣

｢私の本来の場所はここだよ！ここで生まれたんだもん｣

｢違う、お前には待っている本当の家族がいる…俺達は…元に戻るだけ…だ｣

辛そうに声を絞り出す。

すぐ側では土や石を退かせる音が聞こえて来た…

みんなが一生懸命助け出そうとしてくれているのだろう。

時折落ちてくる砂や土から守るようにジョンさんが自分の体にぐっと近づける…

ジョンさんの馬鹿…つけ放すなら徹底的にやってよ！

ミラは汗臭いジョンさんの服に顔を埋めて涙を拭いた。

ミラはもう泣くのをやめた…



｢大丈夫か！｣

ロイズ看守が慌てて近くの岩を退かすとジョンの体が見えてきた！

｢おい！ここにいるぞ！｣

ロイズの声に囚人達は一帯となってジョンのそばの土砂を退かした！

｢ミラちゃん！｣

｢大丈夫か！｣

｢おい！ジョン！ミラちゃんは！｣

囚人達がジョンしか見えない事に焦ると

｢うるさい！ここにいる…｣

ジョンが起き上がると体の下には小さいミラがすっぽりと隠れていた…見るが大した怪我もなく無傷のようだ。

｢大丈夫かい？ミラちゃん｣

ロイズが手を差し出すとミラはジョンさんの腕から離れてロイズ看守の手を掴んだ。

｢この囚人さんが助けてくれたので大丈夫でした、ありがとうございます｣

ミラはペコッとジョンにお礼を言った。

他人行儀なお礼にジョンの胸が痛んだ…だが当然の代償だ…

ジョンはその痛みさえ覚えていようと思っていた。

｢ミラちゃんここはやはり危ない、もう帰ろう｣

｢はい、そうですね…私ももういいです｣

ミラは頷くと

｢皆さんお邪魔しました…みなさんは…気をつけて下さいね｣

迷惑をかけたみんなに挨拶をするとミラはロイズ看守と採掘場を後にした…その後決して振り返る事はなかった。

｢ミ、ミラ…ちゃん｣

あっさりと帰るミラに囚人達はその後ろ姿を見つめていた。

｢これでいいんだよな…俺達間違って無いよな｣

囚人達はジョンを見た。

｢何が…正しかったのかはわからん。でも今ミラがここを出る事を優先する…時間が経てばここでの事も忘れるさ｣

｢俺たちの事…忘れちゃうのか…｣

囚人達は寂しそうに呟いた。

｢まぁ…それでミラちゃんが幸せはになれるならしょうがないな｣

｢そうだな…こんなところの記憶は無い方がいいに決まってる｣

｢ああ、その分俺達が覚えておけばいい…あの子の笑顔も声も温もりも…｣

囚人達は空元気に笑うが…心にはポッカリと穴が空いたようだった。