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ミラは伸ばした手をそっと下ろした…

言われた通りに待っているとビオスさんが看守を連れて戻ってきた。

「えっ…」

ビオスさんとは違い笑顔で看守はミラに声をかける。

「ミラちゃん仕事終わったんだってね、僕がケイジ看守長の部屋まで送るよ。疲れてるなら抱っこするけど…」

看守が手を差し出すと…ミラは力なく笑った。

「大丈夫です…歩けます」

ヘラと笑うとビオスはその笑顔をみてサッと顔を逸らした。

「じゃあビオスさん…今日はありがとうございました。また明日よろしくお願いします」

ミラが頭を下げると

「ああ…」

ビオスさんがこちらを見ることなく頷いた。

「なんだあいつは…感じ悪いな、ミラちゃん何かされたらすぐに言うんだよ」

看守の言葉にミラは

「ビオスさんは優しいですから大丈夫です」

笑って答えた…

看守とミラが部屋を出ていくとビオスはドサッと椅子に座り込んだ…

「なんなんだよ…あの笑顔…あんなのミラの笑顔じゃねぇよ」

ビオスは持っていたタオルで顔を覆った。

ミラはとぼとぼと歩きながら看守のあとをついて行く。

「大丈夫かい?なんか元気ないけど…」

看守が心配して声をかけてきた。

「はい、初めての作業で少し戸惑っちゃって…」

ミラは誤魔化すとその後は看守の話に適当に相槌を打ちながらついて行った。

「看守長」

部屋に着くと看守が扉をノックして声をかける。

「はいどうぞ」

返事がして扉を開くと

「すみません、いま手が離せなくて…ちょっとそこに座ってて下さい」

顔をあげることなく返事を返される。

看守はミラを部屋に入れると扉を閉めた。

ミラはじっとソファに座ってボーッと一点を見つめる。

どのくらい時間が経ったのかわからないが気がつくと隣に看守長が座っていた…

「どうしました?仕事は楽しくなかったのですか?」

優しく声をかけられる。

「仕事は…楽しく……」

楽しかったと言いたいが言葉が出てこない。

「どうしました?」

ケイジ看守長が優しく声をかけると…

「うっ…うう…」

ミラは我慢していた涙が零れだした。

「何があったのですか?」

「み、みんなの態度が変わっちゃった…まるで…他人みたい…」

「元から他人の集まりですよ」

ふるふる…ミラは首を振る。

「違う…みんな家族みたいに優しくて…楽しくて…」

「看守と関わると言うことは囚人達にとってそういう事なのです…」

ケイジはミラの涙を拭き取ると

「どうしますか?もうやめてここを出ますか?一週間後と言いましたがそれよりも早くてもいいのですよ」

ミラは少し考えるがやはり首を振る。

今まで過ごしてきた時間がこんな事で無くなるとは思えなかったからだ。
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