187 / 675
番外編【ネタバレ注意】
番外編 ミヅキのお手柄
しおりを挟む
「ふふふ、今日は三つ山を越えたこの町を落としてやろうか……」
笑いながら町を見下ろす影が月明かりに浮かんでいた。
彼らは旅をしながら町や村を襲い金品や食料を奪う強盗団だった。
彼は次にある町に目をつけてしばらく滞在して町の様子を観察する事にした。
「まぁまぁの規模の町だな……」
「ギルドもあるし、冒険者も多いようだな」
町を歩けば冒険者に行き合う、彼らを全て相手にするのはさすがに手に余る。
そこで嘘の依頼を出して彼らを町の外に追いやってから作戦を遂行することにした。
「最近遠出の依頼が多いですね」
「そうじゃな、まぁ金が潤うからいいじゃろ」
セバスとギルマスのディムロスは依頼を確認して仕事が出来そうな冒険者に振り分けて行った。
「ほとんどの冒険者達に仕事が回って来ますね」
「少し町が静かになっていいな」
ギルマスは気にした様子もなく笑うが依頼書を眺めてセバスは訝しげな顔をしていた。
◆
「ベイカーさんも依頼で仕事に行くの?」
ミヅキの家でも仕事の話題が持ち上がっていた。
「ああ、2、3日留守にするけど大丈夫か?」
「もちろんだよ! それにシルバ達がいるもんね」
私は問題ないとシルバの首に抱きついた。
【僕もいるよー】
シンクも私の頭に止まると体を擦り寄せる。
「しかしコジローも他の知り合いもみんな依頼で2、3日戻らないみたいだ。本当に大丈夫か?」
ベイカーさんに執拗く言われ、大丈夫だからと荷物を持たせて仕事に向かわせた。
「大丈夫だから、お仕事頑張ってね!」
家の前まで手を振って見送る。
ベイカーさんは何度も何度も振り返って手を振り返していた。
「あーあ行っちゃった」
私はベイカーさんが見えなくなると少し寂しくてシルバに寄りかかった。
【俺達も依頼に向かおう、確か森にキノコを取りに行くんだよな】
【そうだね! 私達もお仕事しよう!】
私は用意をするとシルバ達と森に向かうことにした。
町中を歩くとなんだかシーンとしている。
市場の前を通るといつもやってるお店も今日は閉まっていた。
ちょうど店を閉めようとしているお肉屋さんに行き交い話を聞いてみる。
「それが冒険者達がほとんど出払ってて店に客が来ないんだよ。だからせっかくならと休みにして俺達も出かけることにしたんだ。だからここら辺も2、3日はお休みだよ」
「そうなんだ」
なんかお店まで休みとなるとゴーストタウンのように静まり返ってしまう。
少し寂しくなるとシンクが擦り寄って頬を撫でてくれた。
【僕らがいるよ】
【ああ、俺達はいつも一緒だ】
シルバも明るく声をかけてくれる。
【そうだね、たった2日くらいだもんね。私達も仕事してればあっという間だよね】
【【そうさ】】
私は少し元気を貰うとシルバ達と森へと急いだ。
【さてと、ここら辺だよね】
森の奥にいきキノコが生えていると思われる場所の近くに来た。
周りをよく観察すると木の根元に数本キノコが生えている。
【あれだ!】
私はキノコを見つけると依頼の本数分集めた。
【はー、これでいいかな?】
キノコを収納にしまうと町に戻ろうかとシルバ達に声をかける。
【そろそろ帰ろうか?】
【もうか?せっかく森に来たんだ。少し狩りでもしないか?】
シルバの提案にシンクも乗り気になっている。
【うーん、みんなもいないしいいかな】
私は少しだけねと頷くとシルバ達が嬉しそうにする。
【じゃあミヅキ乗れ!】
シルバに跨ると森の奥へと走り出した。
狩りを十分に楽しみ帰ろうとすると、シルバが人の気配を感じとった。
【ん、なんか人がいるな】
シルバが足を止める。
【近くで依頼受けてる人かな?】
知ってる人かもと私が少し淡い期待をするとシルバがその場所に向かってくれた。
「こんにちはー」
私は人影が見えると大きな声で声をかける。
するとその人は驚いた様子で慌てた振り返った。
「だ、誰だ!」
警戒した様子に私はシルバから降りて声をかけた。
「驚かしてすみません、私この先の町の冒険者です。知り合いかと思って声をかけてしまいました」
慌てて謝り頭を下げた。
「町の?」
男の人は少し眉を顰めると私をみてニコッと笑った。
「そうだったのか。俺もその町のことは気になっていたんだ……色々と教えてくれないか?」
「そうなんですか!いい町なんですよ、私でよければなんでも教えますよ」
町の事に興味を持ってもらい嬉しくて私は頷いた。
その人と歩きながら町に向かい話す事になった。
「君はその歳で冒険者なんだね」
「はい、でもまだまだ下っ端のFランクですが……なので今日はキノコの採取の依頼に来てました」
「なるほどね。でも強そうな従魔を連れてるね」
「シルバは強くて可愛いんです。もちろんシンクも」
私が二人を撫でるとトロッとした顔で嬉しそうにしている。
「ははは……」
男はその様子に鼻で笑った。
強そうに見えたが気のせいだったようだ。
女の子に甘える姿は今にも倒せそうなほどに気が抜けている。
Fランクの冒険者ならこの程度の従魔しか従えられないのだろう。
今や架空の依頼で町の高ランクの冒険者は町から遠いところに出払っている。
罠と気が付き戻って来る頃には町はものけのからとなっている手筈だった。
「ふふ、今回も楽勝だな」
あとは仲間達に連絡を取り今夜にでも町を襲おうとほくそ笑んでいた。
【ミヅキ、あいつ笑ってるぞ。気持ち悪い】
シルバは目を細めて男を睨みつける。
そんなシルバの顔を優しく撫でて自分の方に向かせた。
【こら、町に越して来てくれるかもしれないんだからそんな怖い顔しないの】
シルバに笑いかければ優しい笑顔を返してくれる。
シルバの機嫌も良くなったのでキノコ狩りにせいをだした。
森の奥に行けば行くほどキノコの数も大きさも上がる。
私はどんどん森の奥に進むとシルバが何かに気がついた。
【ミヅキ、何かいるぞ】
シルバに制止させられて指摘する方に視線を向けた。
【んー、何かな?】
シンクが様子を見てくると奥に向かって飛び立った。
「あれ?従魔が飛んで行ったけどどうかしたのかな?」
男の人はシンクの行動に疑問を感じたようだ。
「あっ、この先に何かいるみたいなので様子を見に行ってくれました」
「へーそんなことができるんだ」
関心した様子でシンクが飛んで行った方を見つめる。
すると視線の先に火柱が突然現れた。
「え……」
男の人が呆然と立ち尽くしている。
【シンク何かあった?】
私は火柱がシンクのものと分かり声をかけた。
【弱い魔物がいたからやつけたよ。あっごめん一匹逃がしてそっちに行っちゃった。シルバお願い】
【しょうがないな】
シルバは私の前に立つと魔物がやってくるのを待った。
地響きと共に木よりも大きな猪のような熊のようなけむくの魔物が興奮した様子でこちらに向かってくる。
木々をなぎ倒しまっすぐ私達の元に突進する。
「うわぁぁぁ!」
一緒にいた男性は突然の魔物に逃げ出そうとするが足が動かないのか固まっていた。
【シルバ、大丈夫?】
【当たり前だ、こんなの朝飯前だ】
シルバは慌てる様子もなく魔物をじっと見つめると目の前に土魔法で大きな壁を作った。
魔物は突然現れた壁に止まることも出来ずに突進する。
普通の壁なら砕けたかもしれないがシルバの作った壁は厚く、魔法で強化されていた。
自分の体重と加速で魔物は壁に押しつぶされるようにぶつかり呆気なくその場に倒れた。
「へっ……」
男性はその様子にヘロヘロっとその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?うちの子がやつけてくれたから大丈夫ですよ」
「あっ……でもこれって……」
男性は魔物を恐る恐る指さす。
「A級の魔物のテリブルベアーじゃ……」
「へー!あれって熊だったんだ」
牙が生えてるから猪かと思った。
私の関心した様子に男性は黙ってしまった。
「じゃとりあえず収納してギルドに報告しようか」
私はシルバがやつけた魔物を収納にしまう、程なくシンクも戻ってきたのでそろそろ町に帰ることにした。
「お兄さんはどうします。一緒に町に行きますか?」
私が声をかけるとブンブンと首を横に振った。
「お、俺は!いや私はまだ行くところがあるので……」
「そうですか?もし町に来たら案内しますのでギルドにでも声掛けてくださいね」
「君……名前は?」
「Fランク冒険者のミヅキです」
「F……」
男性はゴクリと生唾を飲むとゆっくり頷いた。
男性と別れて町に向かっていると遠くから声をかけられた。
「ミヅキー!」
「ん?ベイカーさん」
聞き覚えのある声に振り返るとベイカーさんが数人の冒険者と町に向かって歩いていた。
「あれ?もう帰ってきたの?」
依頼で遠くの町に言っているはずなのにもう帰ってきたことに疑問に思う。
「それがセバスさんがなんか依頼に違和感を感じるって言ってな、少し早めに行って依頼の確認をしてきたんだ」
「それで?」
「そんな依頼はないって言われてな、他の奴らも同様で早めに町に帰ることにしたんだ。町はどうだ?変わった様子はないか?」
「んー、みんな居なくて静かだけど変わった様子もないよ。私もさっきまで依頼にいってて今帰るところ」
私達は少し急いで町に戻るが町は朝と同じように静かだった。
「みんなは町を回ってなにかないか確認してくれ、俺はミヅキとギルドに報告に行く」
「「「はい」」」
私達は別れて様子を確認することになった。しかし町は静かなだけで変わった様子はなかった。
ギルドも架空依頼が大量にきたくらいで他に被害はなかった。
「いったいなんの嫌がらせなんだ?」
ベイカーさん達は不思議な様子に首を傾げる。
「まぁ町に被害もなかったんなら良かったね」
「そうだな」
私が笑うとベイカーさんも肩の力が抜けたように笑う。
「それでミヅキはどんな依頼だったんだ?」
「私はキノコ採取だよ! あっでも魔物にあったからシルバが狩ってくれた」
「へーなんの魔物だ?」
私は熊の魔物を出した。
「これ……」
その魔物をみてベイカーさん達冒険者があんぐりと口をあける。
「すごいよねー」
私が笑うとベイカーさんはなにか言おうとしてその言葉を飲み込んだ。
「ミヅキだもんな……」
ベイカーさんの言葉に他の人たちも苦笑いする。
私が何さ!
「まぁいいや、ギルドに提出して家に帰ろうぜ、なんか今日は疲れたよ。飯食って帰ろう」
ベイカーさんがご飯屋に行こうと言うが私は今市場も人がほとんど居なくて食べ物屋もやってないと言うとショックで膝をつく。
他の冒険者も急にお腹が空いたのかガクッと肩を落とした。
「あっ!じゃあこの魔物でバーベキューしようよ!」
私は先程の魔物をチラッと見せた。
「食えるのか!?」
「うん、さっき鑑定で確認した!」
私はこっそりとベイカーさんにウインクする。
「でかした!よし俺が捌いてやる、みんなも手伝えば少しなら食わしてやるぞ」
「「「やったー!」」」
ベイカーさんの指示の元あっという間に捌かれた魔物は捌く時間よりも短い間にみんなの胃袋へと収まっていった。
満腹で家に帰る私達は変な依頼のことなどすっかりと忘れていた。
その頃……
「た、大変だ!この町はまずい」
男はFランクのテイマーと別れたあと仲間の元に向かっていた。
A級の魔物をいとも簡単に倒す魔獣を連れた子供……それでもFランクだと言う。
あそこの町ではBランクでも化け物級なのかもしれない……
ここは今は手を出すべきではない。
もっと入念に計画を立ててから……
俺は仲間を呼び出しすぐに町から離れようと考えていた。
ようやく集合場所に近づくと何やら様子がおかしい。
いつもなら見張りが何人かいるはずなのに誰とも会わないのだ。
木や草でカモフラージュされた隠れ家に飛び込むとそこには床に倒れ込む仲間がいた。
そして部屋の真ん中には仲間を冷ややかな瞳で見下ろす男が椅子に腰掛けていた。
「誰だ」
俺は警戒して武器を掴む。
「おかえりなさい、あなたで最後のようです」
その男はスっと立ち上がるとニコッと笑う……その笑みは黒く背筋が寒くなった。
一旦逃げよう、そう思い足を動かした瞬間に男は首に激痛が走り意識を手放した。
私は例の熊肉を持って再びギルドを訪れていた。
「セバスさんいますか?」
冒険者の人からセバスさんも戻ってきたと聞き、取っておいた肉を使った料理を差し入れに渡そうとギルドに顔を出したのだ。
「セバスさん、いますか?」
「ミヅキさん」
セバスさんは忙しそうに職員と話していたのに私に気がつくと話を中断してこちらに歩いてきた。
「聞きましたよ、依頼の途中で魔物にあったとか……怪我はないですか?」
心配そうに私の姿を確認する。
「大丈夫です。シルバ達がいますから」
怪我はないと力こぶを作って見せた。
「そうですね」
セバスさんは納得したように笑い私の頭に手を置いた。
「それでも無理はしないで下さいね」
「はい!あっあとその魔物のお肉で料理を作りました。良かったらお仕事の合間に皆さんで食べて下さいね」
私は料理をセバスさんに押付けるとお仕事の邪魔にならないように早々に帰ることにした。
「んー、セバスさんいい匂いですね!」
職員が目ざとくミヅキさんの持ってきた料理に気がついた。
「皆さんに……とのことですから後で頂きましょう」
「やった!そうと分かればさっさとこの仕事終わらせましょう。えっと後はこれですね」
職員が書類を手に取りため息をつく。
「何考えてたんですかね。架空の依頼なんて本当にいい迷惑だ」
これまでの架空依頼をした男達をセバスは捕まえていたのだ。
「全くです。まぁ被害が無くて良かったですが……」
セバスは窓辺によると外をかけるミヅキの後ろ姿を見つめてにっこりと笑った。
「さて、尋問をさっさと終わらせてミヅキさんからの食事を頂きましょうかね」
笑いながら町を見下ろす影が月明かりに浮かんでいた。
彼らは旅をしながら町や村を襲い金品や食料を奪う強盗団だった。
彼は次にある町に目をつけてしばらく滞在して町の様子を観察する事にした。
「まぁまぁの規模の町だな……」
「ギルドもあるし、冒険者も多いようだな」
町を歩けば冒険者に行き合う、彼らを全て相手にするのはさすがに手に余る。
そこで嘘の依頼を出して彼らを町の外に追いやってから作戦を遂行することにした。
「最近遠出の依頼が多いですね」
「そうじゃな、まぁ金が潤うからいいじゃろ」
セバスとギルマスのディムロスは依頼を確認して仕事が出来そうな冒険者に振り分けて行った。
「ほとんどの冒険者達に仕事が回って来ますね」
「少し町が静かになっていいな」
ギルマスは気にした様子もなく笑うが依頼書を眺めてセバスは訝しげな顔をしていた。
◆
「ベイカーさんも依頼で仕事に行くの?」
ミヅキの家でも仕事の話題が持ち上がっていた。
「ああ、2、3日留守にするけど大丈夫か?」
「もちろんだよ! それにシルバ達がいるもんね」
私は問題ないとシルバの首に抱きついた。
【僕もいるよー】
シンクも私の頭に止まると体を擦り寄せる。
「しかしコジローも他の知り合いもみんな依頼で2、3日戻らないみたいだ。本当に大丈夫か?」
ベイカーさんに執拗く言われ、大丈夫だからと荷物を持たせて仕事に向かわせた。
「大丈夫だから、お仕事頑張ってね!」
家の前まで手を振って見送る。
ベイカーさんは何度も何度も振り返って手を振り返していた。
「あーあ行っちゃった」
私はベイカーさんが見えなくなると少し寂しくてシルバに寄りかかった。
【俺達も依頼に向かおう、確か森にキノコを取りに行くんだよな】
【そうだね! 私達もお仕事しよう!】
私は用意をするとシルバ達と森に向かうことにした。
町中を歩くとなんだかシーンとしている。
市場の前を通るといつもやってるお店も今日は閉まっていた。
ちょうど店を閉めようとしているお肉屋さんに行き交い話を聞いてみる。
「それが冒険者達がほとんど出払ってて店に客が来ないんだよ。だからせっかくならと休みにして俺達も出かけることにしたんだ。だからここら辺も2、3日はお休みだよ」
「そうなんだ」
なんかお店まで休みとなるとゴーストタウンのように静まり返ってしまう。
少し寂しくなるとシンクが擦り寄って頬を撫でてくれた。
【僕らがいるよ】
【ああ、俺達はいつも一緒だ】
シルバも明るく声をかけてくれる。
【そうだね、たった2日くらいだもんね。私達も仕事してればあっという間だよね】
【【そうさ】】
私は少し元気を貰うとシルバ達と森へと急いだ。
【さてと、ここら辺だよね】
森の奥にいきキノコが生えていると思われる場所の近くに来た。
周りをよく観察すると木の根元に数本キノコが生えている。
【あれだ!】
私はキノコを見つけると依頼の本数分集めた。
【はー、これでいいかな?】
キノコを収納にしまうと町に戻ろうかとシルバ達に声をかける。
【そろそろ帰ろうか?】
【もうか?せっかく森に来たんだ。少し狩りでもしないか?】
シルバの提案にシンクも乗り気になっている。
【うーん、みんなもいないしいいかな】
私は少しだけねと頷くとシルバ達が嬉しそうにする。
【じゃあミヅキ乗れ!】
シルバに跨ると森の奥へと走り出した。
狩りを十分に楽しみ帰ろうとすると、シルバが人の気配を感じとった。
【ん、なんか人がいるな】
シルバが足を止める。
【近くで依頼受けてる人かな?】
知ってる人かもと私が少し淡い期待をするとシルバがその場所に向かってくれた。
「こんにちはー」
私は人影が見えると大きな声で声をかける。
するとその人は驚いた様子で慌てた振り返った。
「だ、誰だ!」
警戒した様子に私はシルバから降りて声をかけた。
「驚かしてすみません、私この先の町の冒険者です。知り合いかと思って声をかけてしまいました」
慌てて謝り頭を下げた。
「町の?」
男の人は少し眉を顰めると私をみてニコッと笑った。
「そうだったのか。俺もその町のことは気になっていたんだ……色々と教えてくれないか?」
「そうなんですか!いい町なんですよ、私でよければなんでも教えますよ」
町の事に興味を持ってもらい嬉しくて私は頷いた。
その人と歩きながら町に向かい話す事になった。
「君はその歳で冒険者なんだね」
「はい、でもまだまだ下っ端のFランクですが……なので今日はキノコの採取の依頼に来てました」
「なるほどね。でも強そうな従魔を連れてるね」
「シルバは強くて可愛いんです。もちろんシンクも」
私が二人を撫でるとトロッとした顔で嬉しそうにしている。
「ははは……」
男はその様子に鼻で笑った。
強そうに見えたが気のせいだったようだ。
女の子に甘える姿は今にも倒せそうなほどに気が抜けている。
Fランクの冒険者ならこの程度の従魔しか従えられないのだろう。
今や架空の依頼で町の高ランクの冒険者は町から遠いところに出払っている。
罠と気が付き戻って来る頃には町はものけのからとなっている手筈だった。
「ふふ、今回も楽勝だな」
あとは仲間達に連絡を取り今夜にでも町を襲おうとほくそ笑んでいた。
【ミヅキ、あいつ笑ってるぞ。気持ち悪い】
シルバは目を細めて男を睨みつける。
そんなシルバの顔を優しく撫でて自分の方に向かせた。
【こら、町に越して来てくれるかもしれないんだからそんな怖い顔しないの】
シルバに笑いかければ優しい笑顔を返してくれる。
シルバの機嫌も良くなったのでキノコ狩りにせいをだした。
森の奥に行けば行くほどキノコの数も大きさも上がる。
私はどんどん森の奥に進むとシルバが何かに気がついた。
【ミヅキ、何かいるぞ】
シルバに制止させられて指摘する方に視線を向けた。
【んー、何かな?】
シンクが様子を見てくると奥に向かって飛び立った。
「あれ?従魔が飛んで行ったけどどうかしたのかな?」
男の人はシンクの行動に疑問を感じたようだ。
「あっ、この先に何かいるみたいなので様子を見に行ってくれました」
「へーそんなことができるんだ」
関心した様子でシンクが飛んで行った方を見つめる。
すると視線の先に火柱が突然現れた。
「え……」
男の人が呆然と立ち尽くしている。
【シンク何かあった?】
私は火柱がシンクのものと分かり声をかけた。
【弱い魔物がいたからやつけたよ。あっごめん一匹逃がしてそっちに行っちゃった。シルバお願い】
【しょうがないな】
シルバは私の前に立つと魔物がやってくるのを待った。
地響きと共に木よりも大きな猪のような熊のようなけむくの魔物が興奮した様子でこちらに向かってくる。
木々をなぎ倒しまっすぐ私達の元に突進する。
「うわぁぁぁ!」
一緒にいた男性は突然の魔物に逃げ出そうとするが足が動かないのか固まっていた。
【シルバ、大丈夫?】
【当たり前だ、こんなの朝飯前だ】
シルバは慌てる様子もなく魔物をじっと見つめると目の前に土魔法で大きな壁を作った。
魔物は突然現れた壁に止まることも出来ずに突進する。
普通の壁なら砕けたかもしれないがシルバの作った壁は厚く、魔法で強化されていた。
自分の体重と加速で魔物は壁に押しつぶされるようにぶつかり呆気なくその場に倒れた。
「へっ……」
男性はその様子にヘロヘロっとその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?うちの子がやつけてくれたから大丈夫ですよ」
「あっ……でもこれって……」
男性は魔物を恐る恐る指さす。
「A級の魔物のテリブルベアーじゃ……」
「へー!あれって熊だったんだ」
牙が生えてるから猪かと思った。
私の関心した様子に男性は黙ってしまった。
「じゃとりあえず収納してギルドに報告しようか」
私はシルバがやつけた魔物を収納にしまう、程なくシンクも戻ってきたのでそろそろ町に帰ることにした。
「お兄さんはどうします。一緒に町に行きますか?」
私が声をかけるとブンブンと首を横に振った。
「お、俺は!いや私はまだ行くところがあるので……」
「そうですか?もし町に来たら案内しますのでギルドにでも声掛けてくださいね」
「君……名前は?」
「Fランク冒険者のミヅキです」
「F……」
男性はゴクリと生唾を飲むとゆっくり頷いた。
男性と別れて町に向かっていると遠くから声をかけられた。
「ミヅキー!」
「ん?ベイカーさん」
聞き覚えのある声に振り返るとベイカーさんが数人の冒険者と町に向かって歩いていた。
「あれ?もう帰ってきたの?」
依頼で遠くの町に言っているはずなのにもう帰ってきたことに疑問に思う。
「それがセバスさんがなんか依頼に違和感を感じるって言ってな、少し早めに行って依頼の確認をしてきたんだ」
「それで?」
「そんな依頼はないって言われてな、他の奴らも同様で早めに町に帰ることにしたんだ。町はどうだ?変わった様子はないか?」
「んー、みんな居なくて静かだけど変わった様子もないよ。私もさっきまで依頼にいってて今帰るところ」
私達は少し急いで町に戻るが町は朝と同じように静かだった。
「みんなは町を回ってなにかないか確認してくれ、俺はミヅキとギルドに報告に行く」
「「「はい」」」
私達は別れて様子を確認することになった。しかし町は静かなだけで変わった様子はなかった。
ギルドも架空依頼が大量にきたくらいで他に被害はなかった。
「いったいなんの嫌がらせなんだ?」
ベイカーさん達は不思議な様子に首を傾げる。
「まぁ町に被害もなかったんなら良かったね」
「そうだな」
私が笑うとベイカーさんも肩の力が抜けたように笑う。
「それでミヅキはどんな依頼だったんだ?」
「私はキノコ採取だよ! あっでも魔物にあったからシルバが狩ってくれた」
「へーなんの魔物だ?」
私は熊の魔物を出した。
「これ……」
その魔物をみてベイカーさん達冒険者があんぐりと口をあける。
「すごいよねー」
私が笑うとベイカーさんはなにか言おうとしてその言葉を飲み込んだ。
「ミヅキだもんな……」
ベイカーさんの言葉に他の人たちも苦笑いする。
私が何さ!
「まぁいいや、ギルドに提出して家に帰ろうぜ、なんか今日は疲れたよ。飯食って帰ろう」
ベイカーさんがご飯屋に行こうと言うが私は今市場も人がほとんど居なくて食べ物屋もやってないと言うとショックで膝をつく。
他の冒険者も急にお腹が空いたのかガクッと肩を落とした。
「あっ!じゃあこの魔物でバーベキューしようよ!」
私は先程の魔物をチラッと見せた。
「食えるのか!?」
「うん、さっき鑑定で確認した!」
私はこっそりとベイカーさんにウインクする。
「でかした!よし俺が捌いてやる、みんなも手伝えば少しなら食わしてやるぞ」
「「「やったー!」」」
ベイカーさんの指示の元あっという間に捌かれた魔物は捌く時間よりも短い間にみんなの胃袋へと収まっていった。
満腹で家に帰る私達は変な依頼のことなどすっかりと忘れていた。
その頃……
「た、大変だ!この町はまずい」
男はFランクのテイマーと別れたあと仲間の元に向かっていた。
A級の魔物をいとも簡単に倒す魔獣を連れた子供……それでもFランクだと言う。
あそこの町ではBランクでも化け物級なのかもしれない……
ここは今は手を出すべきではない。
もっと入念に計画を立ててから……
俺は仲間を呼び出しすぐに町から離れようと考えていた。
ようやく集合場所に近づくと何やら様子がおかしい。
いつもなら見張りが何人かいるはずなのに誰とも会わないのだ。
木や草でカモフラージュされた隠れ家に飛び込むとそこには床に倒れ込む仲間がいた。
そして部屋の真ん中には仲間を冷ややかな瞳で見下ろす男が椅子に腰掛けていた。
「誰だ」
俺は警戒して武器を掴む。
「おかえりなさい、あなたで最後のようです」
その男はスっと立ち上がるとニコッと笑う……その笑みは黒く背筋が寒くなった。
一旦逃げよう、そう思い足を動かした瞬間に男は首に激痛が走り意識を手放した。
私は例の熊肉を持って再びギルドを訪れていた。
「セバスさんいますか?」
冒険者の人からセバスさんも戻ってきたと聞き、取っておいた肉を使った料理を差し入れに渡そうとギルドに顔を出したのだ。
「セバスさん、いますか?」
「ミヅキさん」
セバスさんは忙しそうに職員と話していたのに私に気がつくと話を中断してこちらに歩いてきた。
「聞きましたよ、依頼の途中で魔物にあったとか……怪我はないですか?」
心配そうに私の姿を確認する。
「大丈夫です。シルバ達がいますから」
怪我はないと力こぶを作って見せた。
「そうですね」
セバスさんは納得したように笑い私の頭に手を置いた。
「それでも無理はしないで下さいね」
「はい!あっあとその魔物のお肉で料理を作りました。良かったらお仕事の合間に皆さんで食べて下さいね」
私は料理をセバスさんに押付けるとお仕事の邪魔にならないように早々に帰ることにした。
「んー、セバスさんいい匂いですね!」
職員が目ざとくミヅキさんの持ってきた料理に気がついた。
「皆さんに……とのことですから後で頂きましょう」
「やった!そうと分かればさっさとこの仕事終わらせましょう。えっと後はこれですね」
職員が書類を手に取りため息をつく。
「何考えてたんですかね。架空の依頼なんて本当にいい迷惑だ」
これまでの架空依頼をした男達をセバスは捕まえていたのだ。
「全くです。まぁ被害が無くて良かったですが……」
セバスは窓辺によると外をかけるミヅキの後ろ姿を見つめてにっこりと笑った。
「さて、尋問をさっさと終わらせてミヅキさんからの食事を頂きましょうかね」
436
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~
土偶の友
ファンタジー
サクヤは目が覚めると森の中にいた。
しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。
虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。
歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。
それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。
9/28~10/6 までHOTランキング1位!
5/22に2巻が発売します!
それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。