ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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5巻

5-2

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「カイト隊長、どうしたの?」

 驚いてるロレーヌ様に代わって私が話しかける。

「何故、ミヅキさんに不敬を働いた者が会おうとするのですか? それを国は許可したのですか?」

 カイト隊長は納得いかないと食いついている。

「あー! ルイズ子爵ってあの大臣だった人か! 子爵になったんだ、でもなんで私に会いたいの? 謝るとかならいらないんだけど……」
「いや、最初は必ず謝罪させるが……何か今回の罪状について思う事があったらしく、ミヅキさんと話せる機会が欲しいそうだ。しかし、ミヅキさんが嫌なら断って頂いてなんの問題もない」
「ふーんなんだろ? 別にいいけど、王宮に行くのは面倒くさいから来てもらってもいいのかな?」
「ミヅキさん!」

 ルイズ子爵と会うことを許す私に、カイト隊長が大きな声を出した。

「また気分を害される事を言われたらどうするのですか!」

 カイト隊長が心配そうにしている。

「いや、そこまで愚かな事はしないでしょ。仮にも一応大臣になった人が……それに同じ間違いを犯すなら、今度は私も容赦しないよ!」

 安心してとニコッと笑う。

「ありがとう。これであいつらに報告が出来る」
「ロ、ロレーヌ様? あいつらって?」

 こめかみがピクピクしているロレーヌ様に声をかける。

「全く! 厄介事はいつも私に押し付けやがってあの二人! 今回もミヅキさんにお願いに行くと周りが五月蝿そうだからと、ついでに言ってこいと!」

 な、なんか鬱憤うっぷんが溜まってらっしゃる。あの二人って国王とアルフさんだよね?

「ロレーヌ様、良かったらロレーヌ様に一個多めにおにぎりをあげますね。だから、お仕事頑張って下さい」
「ミヅキさん……」

 ありがとうとキラッキラの笑顔を返してくれる。ロレーヌ様と部隊兵達が王宮に帰って行くのを見送りやっと一息ついた。もらった何も無い土地を眺めていると色々とアイデアが浮かんでくる。

「そうだ! これからここに来ることも多くなるから家を建てちゃえ!」

 そうと決まれば……

【シルバ~!】

 私に呼ばれてシルバが嬉しそうに駆け寄ってくる。

【ここに土魔法で家を建てたいんだけど】
【家? ここに住むのか?】
【違うよ、ここで田んぼを作ったりするから、その為の休憩場みたいなものかな】
【ふーんわかった、まぁ人が入れる小屋を作るんだな】
【出来る?】

 任しておけとシルバが土に魔力を込める。すると、石が固まった真四角な箱が出来た。

【シルバ、入口は何処?】
【あっ……】
【窓は?】
【えっ? すまん、人が住む場所なんぞよく考えた事もないからなぁ】
【そっか~、よし! なら私がやってみようかな!】

 私は土に手を当てて、建てたい家を思い浮かべる。やっぱり日本の田舎の家みたく平屋ひらやがいいよね。玄関が広くて、窓は大きく天井が高めで……はぁ、そうなると木で作りたいなぁ。
 木造の家を思い浮かべると、土の中から木が成長して伸びてきた。どんどん大きく成長していき、家の形を造っていく。

「おいおい! ミヅキ何してんだ!」

 その様子に気がついたベイカーさん達が私を止めようと声をかけてきた。

「あっベイカーさん、いやぁ~、家を建てようと思ってシルバに頼んだんだけど、シルバは家の造りが分からないみたいだから私がやってみたんだよねー」
「それでなんで木が生えて家になるんだよ! 土魔法だろ?」
「そうなんだけど、木で作りたいなぁと思って、想像してやってみたらこうなった」

 あははと笑って誤魔化すが、さすがのレアルさんも目に見えて顔色がよろしくない。

「誰も見てないのが救いだな……シルバがやった事にしてさっさと建てちまえ! 魔力の消費は大丈夫なんだろな?」
「うん! 回復魔法より全然使ってない感じだから大丈夫!」

 ベイカーさんのお許しも出たし。では、早速!

「そうだ! ついでにリュカ達の家も建てちゃう!」

 うーん、一人部屋は小さい子がいるから駄目だよね。二人部屋で、長屋ながやみたいな土の家がいいかな。地面に手をつき家の形を思い描きながら魔力を込める。土が盛り上がり家の形になっていった。

「出来たー! ベイカーさん達、中を見てみて。変な所は直すから!」

 三人を家の中へと引きずっていく。

「すげぇな、もう既に棚や寝る所があるぞ」
「今すぐにでも住めそうですね」

 ベイカーさんとレアルさんが呆れている。

「俺が住んでた家よりも立派なんだが……」

 デボットさんは何故かガックリしている。あれ? なんか反応が悪い?

「なんか駄目だった?」

 上手くできたと思ったのに皆があんまり喜んでいない。私はしょぼんと肩を落とす。

「いや、立派過ぎてびっくりしただけだ。ただお前が造った事は絶対内緒にしとけよ」
「はーい!」

 よかった! 変なわけじゃないなら皆喜んでくれるかな? ここに案内するのが楽しみだな!
 私は嬉しくて、新しい家をいつまでも眺めていた。



  二 お弁当


「では、改めてお米作りの為の会議を始めます!」

 テーブルには、私とベイカーさん、デボットさんにレアルさん、マルコさんが座っている。司会進行は私が行っている。

「まずはスラムにいるリュカ達孤児を雇います! 何人集まるかはわかりませんが、明日迎えに行く予定です!」
「なんでスラムなんかに……」

 レアルさんがのっけから項垂れる。はい、スルー!
 デボットさんが慰めるようにレアルさんの肩を叩いた。

「リュカ達にはお米作りを教えて、住みたければあの家に住んでもらおうと思ってます。きちんと働ければちゃんと賃金と料理を提供する予定です!」
「待遇が良過ぎないか?」
「お米のためならそのくらいいいんだよ!」

 私は机をバーンと叩く。お米の為ならお金なんて惜しくない!

「まぁいいけど、その賃金はどうするんだよ?」

 ベイカーさんの疑問にマルコさんが答えてくれた。

「ミヅキさんはこれまでにドラゴン亭での料理提供と獣耳の髪飾りの販売を行っております。そのお金がありますが、デボットさんの購入に幾分使ってしまいましたので……」

 そう言って少し難しそうな顔をした。

「そうかー、もっとお金が必要だよねー。マルコさん、何かいい方法はありますか?」
「そうですね、ドラゴン亭の料理は今まで通り、順調に売上が伸びていますので問題ないでしょう。後は髪飾りのような新しい商品を販売できるといいのですが……」

 髪飾りみたいに売り出せるもの……

「うーん。娯楽ごらくのための物でもいいなら、考えがありますけど」

 ガバッ! マルコさんが勢いよく立ち上がる!

娯楽ごらく商品なら貴族相手に売り出すのに持ってこいですよ! どのような物ですか?」

 身を乗り出して聞いてきた。

「ちょ、ちょっと試作品を作ってみます。出来たらマルコさんに見せますね」
「ミヅキさんの商品なら間違いないでしょう! 金銭面は私の方で負担しますので、気にせず作ってください!」
「はい、マルコさんのお眼鏡にかなったら全面的にお願いします」

 これで金銭面はどうにか大丈夫かな? 売れなかったら新しい料理を提供して挽回しよう。
 後は……皆を見るとレアルさんが神妙な顔をしている。

「レアルさんは何かありますか?」
「いえ、ミヅキは本当に一人で料理も商品も考えていたのだと改めて確認したところです」
「でも、皆の協力がなきゃ出来ないからね」

 レアルさんは苦笑する。

「私は本当に馬鹿な事をしたのですね。ミヅキ、心から謝罪致します。今なら国王がミヅキを隠したがった意味がわかりました。私は国王の為と思っていましたが、間違っていました」
「うーん、まぁいいんじゃない? 完璧な人なんていないし、私だってしょっちゅうベイカーさん達に怒られるしさ! レアルさんだって自分の為じゃなくて国王の事を考えて行動したんでしょ?」
「そう思っていましたが……」

 自分に納得出来ないのか、レアルさんはまだ項垂れている。

「ちゃんと話さなかった私も国王も悪いしね! やっぱり嘘で隠してたのが良くなかったね。もういっそ全部バラした方がいいかな?」
「そしたら色んな奴に狙われるぞ、今度は国単位でな」

 ベイカーさんが呆れたようにつぶやく。

「うわぁ……それは絶対にやだ。はぁー、皆なんでほっといてくれないんだろ」

 私はため息と共に頬杖をつく。

「そりゃそれだけの知識と武力だろ? 国さえも滅ぼせる力を誰がほっとくんだよ! 引き続きなるべく秘密にしとけよ」
「はーい、てことでレアルさんもデボットさんも秘密に協力してね!」

 二人がしっかりと頷いてくれる。

「それで、そのコメを作るのはどうやってやるんだ?」
「うーん、それなんだけど私も軽ーい知識しかないんだ。だから試行錯誤しながらやっていこうと思う。それで必要な道具があるんですけど……」

 チラッとマルコさんを見るとご機嫌な顔で笑っている。

「なんでしょう」
くわとかかまってありますかね?」
「はい、ございます。幾つか用意しておきますね」
「後は……一番大事なのは水かなぁ。それは川から引くとして、とりあえず種もみを発芽させとかないとかなぁ?」

 私はお米作りの為の会議に興味を無くし、ごろりと寝転がってるシルバを見る。

【シルバ~、明日また稲穂いなほが生えてた所に連れてってくれる?】
【ああ、いいぞ】
「明日シルバと残りの稲穂いなほを取りに行ってきますね!」
「誰がついて行きますか?」
「「「私が(俺が)」」」

 とりあえずベイカーさんと、デボットさん、レアルさんが名乗りを上げた。

「いや、ベイカーさんはここの護衛だろ!」

 そうデボットさんにつっこまれるがベイカーさんは不敵に笑う。

「もう襲ってくるやつなんざいないだろ、ここは公平にじゃんけんにしようぜ」

 ベイカーさんの提案にデボットさんが頷いた。

「じゃんけんとはなんですか?」

 レアルさんとマルコさんが聞いてくる。

「あー二人は見てないのか」

 二人にじゃんけんのルールを説明してあげた。

「それもミヅキさんが? 単純ですけど面白いです。兵士達が騒いでいたのはこれの事だったのですね!」

 マルコさんから尊敬の眼差しが送られてくる。

「じゃ、早速勝負だ!」

 ベイカーさん達が立ち上がりじゃんけんを始めようとしたタイミングで扉がノックされた。
 やってきたのは困ったような表情をしたポルクスさんだった。

「ミヅキ、なんかガラ悪い奴らがミヅキに用があるって……ベイカーさんどうします?」
「ポルクス! そんな奴追い返せよ!」

 ベイカーさんが立ち上がり外に出ようとする。

「いや、ガラは悪いんだが疲れ切ってて、なにかしようとしてる感じはないからさぁ」
「あっもしかして!」

 なんだか心当たりがある気がする。ちらりとデボットさんを見ると、嫌な顔をしていた。同じことを考えているのだろう。

「きっとギースさん達だ。意外と早かったね、ちゃんと約束守ったんだ」
「そりゃ、あんだけミヅキが脅したもんな」
「失礼な! こんな子供の脅しなんて怖くないでしょ!」

 私の発言に誰も首を縦に振らなかった。外に出てみると、やってきていたのはやはりギースさん達だった。前に会った時よりボロボロの姿で店の裏の方で大人しく待っている。

「ギースさんお待たせー、ちゃんと来たんだねよかった~。捜しに行く手間が省けたよ」
「とりあえず今ある金を持ってきた」

 そう言ってボロボロの布袋に入ったお金を差し出してきた。

「昨日の今日でもう働いたの?」
「夜の方が……仕事があるんだ、キツイがな」
「ふーん、わかった。じゃもらうね」

 私はボロボロの布袋を受け取ると収納にしまった。

「もし私が居なかったら、お店の誰かに渡しておいてくれればいいからね」
「わかった」
「じゃまたよろしくね!」

 ギースさん達は弱々しく頷き、重い足取りで帰って行った。

「ミヅキにしちゃ厳しい対応だな」
「えっそう?」

 ベイカーさんが意外そうに言うので、とぼけて店の中へと戻って行った。

「レアルさん、このお金、日付といくら持ってきたかを管理してもらってもいいですか?」
「えっ? ああ、わかった」

 私は先程貰ったお金をそのままレアルさんに渡す。

「ちゃんと金貨十枚持ってくるか確認するのですか?」
「まぁ、それもあるけどね。とりあえずよろしくね」

 私は言葉を濁し笑って誤魔化した。

「で、誰が行くの? もうシルバとシンクと私だけでもいいんだけど」

 私は早く稲穂いなほを刈りに行きたくて、待っていられないと声をかける。

「「駄目だ!」」

 ベイカーさんとデボットさんが同時に叫ぶ。

「またなんかあった時、お前一人にしていい事なんてない! 誰が御目付け役で行くんだよ!」

 ああ、そっちの心配ね。三人は仕切り直してじゃんけんをする。レアルさんが勝ったようだ。

「では、私が」

 レアルさんが勝ち誇ったように二人を見つめる。

「こいつで大丈夫かぁ~、ミヅキの奇行きこうについていけるのかよ」

 ベイカーさんが疑っている、というか奇行きこうって失礼な!

「これ以上驚く事があるんですか?」

 レアルさんは私の方を見て驚いた顔をする。

「えー何もないし、普通だし!」
「「「普通ではない!!」」」

 三人につっこまれて、納得いかずにぷぅーとほっぺを膨らました。

「じゃあ行ってくるねー!」

 皆に手を振り朝早くからレアルさんと王都を出発する為に門を目指す。
 その前に、レアルさんはシルバに乗ることができないので、馬を借りる事にした。

「シルバと一緒だとお馬さんが怖がっちゃうんじゃない?」
【後ろから付いてくるぐらいなら大丈夫だろ。歩くならまだしも、走って後ろから追いかけたら馬が逃げてバテそうだな】
【じゃ、なるべくシルバと相性が良さそうな子を探さないとねー】

 門の近くに借馬があるそうでレアルさんが案内してくれる。

「ここですよ、シルバさんとシンクさんは少し離れて待っていていただけますか?」

 レアルさんの言葉にシルバとシンクが頷く。

【門の近くにいる。ミヅキ、ちゃんと見える所にいろよ】
【うん、ちょっと待っててね!】

 シルバとシンクを撫でるとレアルさんと共に借馬に向う。

「うわぁ~、お馬さんがいっぱい!」

 外の小屋には馬が何頭か繋がれて草を食べている。

「さぁミヅキ、どの馬にする?」
「レアルさんが乗るんだからレアルさんが選びなよ!」
「シルバさんと相性が良い馬なんて、私にはわかりませんからね。ミヅキならわかるのでは?」

 いや、私だって分からないよ。そう思いながらも、とりあえず一頭ずつ見ていく。お馬さん達は私を見ると近づいてくる。そんななか一頭だけ、皆から離れている馬がいた。

「なんかあの子だけ皆から離れてるね」

 どうしたのか気になりお店のおじちゃんに聞いてみた。

「あいつは今お休み中なんだ。前に乗せた客が乱暴に扱った様でな。足場の悪い道を長時間走らされて、脚に負担がかかってイラついたのかその客を振り落としちまったんだ」

 その馬を見ると、気が立っているのか人を寄せつかせないように地団駄を踏んでいる。

「脚の様子も確認したいんだが、近づかせてくれないんだ」

 おじちゃんが心配そうにしている。

「馬にとって脚の怪我は致命傷なんだ、酷いと命を落とす事もあるんだが……」
「ちょっと見てきてもいい?」

 心配するおじさんに頼んでみる。

「危ないからやめときな。お嬢ちゃんなんか小さいから、蹴られたりでもしたら大変だ。兄さんは保護者だろ? 近づかないようによく見といてくれよ」

 そう言ってレアルさんに声をかけると、おじさんは違う馬の世話に向かってしまった。

「……だそうですよ、近づかないで下さいね。ほらミヅキ、あの馬なんてどうですか? 真っ白で綺麗ですよ。とても落ち着いていますし」

 そう言ってレアルさんは私の手を取り、暴れ馬から離そうとする。

「私、あの子がいいな」

 私はレアルさんの制止を無視して、柵越しに暴れ馬へと近づいた。

「こんにちは、馬さん。名前は何かなぁ?」

 柵の外から話しかけてみる。

「ブルルルル!」

 暴れ馬は近づいてくるなと言わんばかりに威嚇いかくする。

「大丈夫だよ。君を傷つける人はもう居ないよ」

 なるべく刺激しないように、優しく声をかけながら手を伸ばす。

「ミヅキ! 危ないから止めるんだ!」

 レアルさんが私を止めようとすると、暴れ馬はさらに柵の中で暴れだした。

「レアルさん、動かないで!」

 これ以上刺激するとあの子が怪我をしてしまうかも。私はレアルさんを止めた。

「大丈夫、大丈夫、おいで」

 伸ばした手を顔で弾かれる。それでも手を引っ込めない私に苛立ったのか、暴れ馬は私の腕に噛み付いてきた。

「ミヅキ!」
「大丈夫、全然痛くないよ。手加減して噛んでるんだよね。頭のいい優しい子だね」

 噛まれていない方の手でたてがみを優しく撫でると、暴れ馬は噛み付いた口をそっと開く。
 そしてそのまま、ハムハムと私の髪を噛み出す。

「ふふふ、くすぐったいよ」

 甘えてくるので頭を撫でていると、暴れ馬は噛み付いた私の腕をペロペロと舐めた。

「ミヅキ、その手……」

 レアルさんが噛まれた腕を見て心配そうな表情を浮かべる。私の腕は青く腫れ上がっていた。

「それ、折れてるよな?」

 レアルさんが私と暴れ馬に近づこうとすると、暴れ馬が私を守ろうとしたのか威嚇いかくし始めた。

「ありがとう~、でもこのお兄ちゃんは私の友達なんだよ。だから大丈夫」

 笑って話しかけると暴れ馬は自らが噛んだ部分を心配そうに見つめる。

「これ? 大丈夫だよー、魔法ですぐ治るからね」

 痛くないよと手を上げる。しかし、想像以上の痛みで顔が固まってしまった。軽く噛んだとはいえ馬の力はとても強く、子供の腕には重症だった。

「やっぱり痛いんじゃないですか! 早く回復魔法をかけて!」

 私の引きつった顔を見て、レアルさんの方が慌てている。

「い、痛いけど、折れてはないよ、でもこのままだとちょっと不味いよね~」
「だから、回復魔法を!」

 そう言ってレアルさんは、柔らかい布で傷ついた腕を優しく押えてくれた。

「実は私、自分には回復魔法を使えないんだ」
「はっ? なんですかそれ?」
「うーん、なんでだろうね? わかんない」

 なんでだかは本当に分からないのだ。どうでもいいことだと思って気にしていなかった。

「それ、ベイカーさん達は知っているんですか?」
「ううん、知らないと思う。でも、シンクがいるから大丈夫だよ」

 そんな話をしているとシンクが飛んできた。

【ミヅキ! 大丈夫? シルバがミヅキが怪我したみたいだって……何それ!】

 私の腕の傷を見てびっくりしている。

【早く治すよ! 腕出して!】

 シンクの優しい魔法が私を包んだ。あっという間に傷は治り元の腕に戻る。

「ほらね! シンクの魔法はとっても気持ちがいいの、だからなんの問題もないよ」
「シンクさんが側にいなかったら、間に合わなかったら、どうするつもりですか……」
「まぁ、なんとかなるよ」

 レアルさんは私の行動に少し不安を覚えたようだ。
 借馬のおじさんが戻ってくると、私が暴れ馬を撫でている様子を見て驚き、近づいてきた。

「お嬢ちゃんそいつに触れたのか? しかも機嫌が治っているな。今なら怪我の様子を見れるかもしれん!」

 ちょっと待っていろと言って、おじさんは建物に入っていってしまった。

「馬さん、ちょっと見せてね」

 私はなんとなく馬が気にしているように感じる後脚を撫でた。
 良くなって、また走ってね。回復魔法をかけると「ブルルルル!」と興奮する。

「ふふふ、落ち着いて、また怪我しちゃうよ」

 馬に髪を食べられながら待っていると、おじさんが箱を抱えて戻ってくる。

「さぁ、ラウン。脚を見せてみろ」

 おじさんが側によって確認するが、どこも悪いところが見当たらない。

「あれ?」

 おじさんは首を傾げるとラウンの綱を取り引っ張って歩かせるが、問題なく脚を動かしている。

「俺の気のせいだったのか? まぁ、何事もなくてよかった」

 なぁ、とラウンを撫でている。

「お嬢ちゃんが気を静めてくれたんだな、ありがとよ! よかったらこいつを使ってくれ、おまけしとくよ」

 おお! ラッキー!

「レアルさん、この子にしようよ! ラウンだね」

 名前を呼ぶと嬉しそうに側によってくる。


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