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13章
744.
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【ミヅキ、大丈夫か?】
【うん…】
全然大丈夫じゃなかったがシルバ達に心配させまいと笑顔を作る。
なんか上手く作れた気がしない…私ってどうやって笑ってたんだっけ…
そう思いながら外の真っ白な景色を眺めるふりをして紛らわした……
◆
ここは北にあるノース国。
私達はあの後ムーの体を抜けてノース国のある部屋まで来ていた。
「ここは…」
移動した後は真っ暗で、泣き疲れものけのからのようになったら体のままシルバ達に抱きつき、包まれながら眠ってしまっていた。
朝になり明かりに目を覚まして体を起こすと、部屋の中を見渡す。部屋には椅子に座ってこちらを笑顔で見つめるアナテマがいた。
「ふふ、やっぱり来たんだね」
聞きたくない声に私は顔を顰めてふいっと逸らした。
アナテマはそんな私の気持ちとは裏腹に楽しそうに微笑み優雅にソファーに座ってお茶を飲んでいる。
このまま背けてばかりはいられないと私から声をかけた。
「約束通り来たよ、もう絶対にウエスト国のみんなや他の国の人達に関わらないで…」
「ああいいよ、だって用があるのはお前だけだからね。向こうだって疫病神のお前がいなくなってホッとしてるよ」
アナテマは何が面白いのか楽しそうに笑っている。
「それで…何をしたいのよ。私をここに連れてきて」
キッ!と睨むとシルバ達も威嚇するように私の前に立ってアナテマに唸り声をあげる。
【こいつを殺せば全て終わるんじゃないのか!?】
【そうだね…ミヅキを泣かすこいつは許せない】
シンクがメラメラと熱くなってその体を揺らめいている。
今にも飛びかかりそうなみんなをそっと触ってなだめた。
「ようがあるのは僕じゃない、父上だ。でも今は忙しいから呼び出されるまで部屋にいろ、お前らの部屋は用意してある。逃げようとしたら…わかってるな」
「わかってるよ、ここまで来て逃げるか!」
アナテマに睨まれて私は負けじと睨み返した。
しかしアナテマはそんな私の威嚇をものともしないで平気な顔をしていた。
そして扉に向かって声をかける。
「おい、誰か!」
「は、はい!」
アナテマが声をかけると部屋の外からメイド姿の女性が慌てて入ってきた。
「こいつを北の塔に連れて行け、絶対に城の外に出すなと城の奴らにも伝えておくんだ」
「は、はい」
女性は怯えるように頷くと顔も上げずに誘導する。
私は女性の後を追いかけた。
アナテマのいるこの部屋には今はいたくなかった。
部屋を出ると外には兵士達が立っていた。
全身顔までびっちりと鎧で隠して表情がうかがえない。
兵士は一言も発しないで武器を持ち後ろを着いてきていた。
そして城を通り過ぎ一度外に出る…するとそこは白銀の世界だった…
「すごい…」
向こうでも見た事ないほどに真っ白で全てを飲み込みそうな深い雪だ。
【ミヅキ、寒い…】
シンクがブルっと震えて首元にピッタリと体をくっつけてくる。
【シンクおいで】
私は服を広げて胸元にシンクを抱き入れた。
【すごいな…こんなにも雪が降っているなんて】
シルバも見た事ないのか上を見上げて雪が落ちてくるのを眺めていた。
「あちらになります」
立ち止まる私達にメイドが先にある塔を指さした。
「あなた様の今後の住まいとなります。何かありましたら私にお申し付けください」
塔まで案内されてメイドさんに頭を下げられる。
「わかりました…じゃああなたのお名前は?」
「え?わ、私ですか?」
メイドさんは初めて顔をあげて私の顔を見た。
「ひっ!」
そして顔を見るなり恐怖に固まる。
【なんだこの女、ミヅキの顔をみて怯えるなどけしからん!】
シルバがメイドに向かって牙をむきだした。
「ひぃぃぃ…」
メイドさんはヘロヘロとその場に倒れてしまった。
【シルバ…やりすぎだよ】
【この程度で気を失うとは…マリーならしれっとしてるぞ】
【そうだね…】
もう会えない人を思って苦笑いする。
【シルバのバカ!】
【ばか!】
【どうしようもないな】
悲しそうな顔をする私をみて、シルバの発言にシンク達が呆れていた。
【ふふ、大丈夫だよ。それよりもこの人中に運んであげよう】
兵士達を見ていてもメイドを助ける素振りは見せなかった。
このままにしておけば凍死してしまうかもしれない。
【シルバこの人背中に乗せてあげて】
【なんで俺が!?】
【お願い、それにこの人気絶させたのシルバでしょ】
【ううっ…】
シルバは仕方なさそうに鼻先をメイドの腹に押し付けるとヒョイっと持ち上げた。
【ありがとう、シルバはやっぱり優しいな】
私が頭を撫でてやると暖かい毛並みを手に擦り寄せた。
【うん…】
全然大丈夫じゃなかったがシルバ達に心配させまいと笑顔を作る。
なんか上手く作れた気がしない…私ってどうやって笑ってたんだっけ…
そう思いながら外の真っ白な景色を眺めるふりをして紛らわした……
◆
ここは北にあるノース国。
私達はあの後ムーの体を抜けてノース国のある部屋まで来ていた。
「ここは…」
移動した後は真っ暗で、泣き疲れものけのからのようになったら体のままシルバ達に抱きつき、包まれながら眠ってしまっていた。
朝になり明かりに目を覚まして体を起こすと、部屋の中を見渡す。部屋には椅子に座ってこちらを笑顔で見つめるアナテマがいた。
「ふふ、やっぱり来たんだね」
聞きたくない声に私は顔を顰めてふいっと逸らした。
アナテマはそんな私の気持ちとは裏腹に楽しそうに微笑み優雅にソファーに座ってお茶を飲んでいる。
このまま背けてばかりはいられないと私から声をかけた。
「約束通り来たよ、もう絶対にウエスト国のみんなや他の国の人達に関わらないで…」
「ああいいよ、だって用があるのはお前だけだからね。向こうだって疫病神のお前がいなくなってホッとしてるよ」
アナテマは何が面白いのか楽しそうに笑っている。
「それで…何をしたいのよ。私をここに連れてきて」
キッ!と睨むとシルバ達も威嚇するように私の前に立ってアナテマに唸り声をあげる。
【こいつを殺せば全て終わるんじゃないのか!?】
【そうだね…ミヅキを泣かすこいつは許せない】
シンクがメラメラと熱くなってその体を揺らめいている。
今にも飛びかかりそうなみんなをそっと触ってなだめた。
「ようがあるのは僕じゃない、父上だ。でも今は忙しいから呼び出されるまで部屋にいろ、お前らの部屋は用意してある。逃げようとしたら…わかってるな」
「わかってるよ、ここまで来て逃げるか!」
アナテマに睨まれて私は負けじと睨み返した。
しかしアナテマはそんな私の威嚇をものともしないで平気な顔をしていた。
そして扉に向かって声をかける。
「おい、誰か!」
「は、はい!」
アナテマが声をかけると部屋の外からメイド姿の女性が慌てて入ってきた。
「こいつを北の塔に連れて行け、絶対に城の外に出すなと城の奴らにも伝えておくんだ」
「は、はい」
女性は怯えるように頷くと顔も上げずに誘導する。
私は女性の後を追いかけた。
アナテマのいるこの部屋には今はいたくなかった。
部屋を出ると外には兵士達が立っていた。
全身顔までびっちりと鎧で隠して表情がうかがえない。
兵士は一言も発しないで武器を持ち後ろを着いてきていた。
そして城を通り過ぎ一度外に出る…するとそこは白銀の世界だった…
「すごい…」
向こうでも見た事ないほどに真っ白で全てを飲み込みそうな深い雪だ。
【ミヅキ、寒い…】
シンクがブルっと震えて首元にピッタリと体をくっつけてくる。
【シンクおいで】
私は服を広げて胸元にシンクを抱き入れた。
【すごいな…こんなにも雪が降っているなんて】
シルバも見た事ないのか上を見上げて雪が落ちてくるのを眺めていた。
「あちらになります」
立ち止まる私達にメイドが先にある塔を指さした。
「あなた様の今後の住まいとなります。何かありましたら私にお申し付けください」
塔まで案内されてメイドさんに頭を下げられる。
「わかりました…じゃああなたのお名前は?」
「え?わ、私ですか?」
メイドさんは初めて顔をあげて私の顔を見た。
「ひっ!」
そして顔を見るなり恐怖に固まる。
【なんだこの女、ミヅキの顔をみて怯えるなどけしからん!】
シルバがメイドに向かって牙をむきだした。
「ひぃぃぃ…」
メイドさんはヘロヘロとその場に倒れてしまった。
【シルバ…やりすぎだよ】
【この程度で気を失うとは…マリーならしれっとしてるぞ】
【そうだね…】
もう会えない人を思って苦笑いする。
【シルバのバカ!】
【ばか!】
【どうしようもないな】
悲しそうな顔をする私をみて、シルバの発言にシンク達が呆れていた。
【ふふ、大丈夫だよ。それよりもこの人中に運んであげよう】
兵士達を見ていてもメイドを助ける素振りは見せなかった。
このままにしておけば凍死してしまうかもしれない。
【シルバこの人背中に乗せてあげて】
【なんで俺が!?】
【お願い、それにこの人気絶させたのシルバでしょ】
【ううっ…】
シルバは仕方なさそうに鼻先をメイドの腹に押し付けるとヒョイっと持ち上げた。
【ありがとう、シルバはやっぱり優しいな】
私が頭を撫でてやると暖かい毛並みを手に擦り寄せた。
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