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12章(続き)
736.誓い
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「あれ…ここ何処だ?」
ミヅキはふわふわとする真っ白な世界で一人で歩いていた。
「シルバー?シンクー?」
声をかけるが反応はない、コハクにプルシア、ムーもレムもいなかった。
いつも誰かしらそばに居るはずなのに…
「ベイカーさーん」
声を出せば誰かしら現れるのに誰も来ない。
おかしいな?
見た事もない空間にこれは夢かなと思い始める。
私はもう少し周りを歩いて見ようと前に進む、でも全部真っ白で前だか後ろだかも分からない。
まるで雲の上を歩いているようだった。
「みんな、何処ー?」
夢なら誰か出てきてくれてもいいのに…
大きな声を出してみると前になんか黒いものが見えた。
シルバかな!
私は急いで駆け出すが上手く走れない。
でも頑張って足を動かし黒い固まりのそばに行くと…
「シルバじゃない…」
それは白い世界を汚すように黒い部分が広がっていた。
「なにこれ…」
黒くなっているところを触るとさぁ…っとその部分が白に変わる。
なんだかその事に安堵していると声が聞こえてきた。
「あー、やっぱりお前には浄化出来るんだ…なんでだろ?なんにも出来ないのカスのはずなのに…」
「だ、誰!」
周りをキョロキョロと確認すると黒いモヤから私そっくりな子が出てきた。
「わ、たし…」
「お前なんかと一緒にするな」
鏡みたいにそっくりな顔が目の前で歪んだ。
「あなた…アナテマ?」
「だから、呼び捨てにするなって言ったよね?」
アナテマはグッと私の髪を鷲掴みにすると頭に痛みが走った。
「痛い!」
これは現実?夢?
目の前の光景に唖然としてしまう。
「あなたは一体誰なの、なんで私と同じ姿でみんなに酷いことするの?」
「同じ姿だけど生まれたのは僕の方が先だからね、それに…自分の事を知りたいなら僕と一緒に来い」
「嫌だ!」
私は間髪入れずに答えた。
「僕に口答えねぇ、偉くなったもんだ。本当にお前はあのカスと同じなのか?」
じっと顔を覗き込んでくる、その瞳は綺麗な赤色をしていた。
「綺麗…」
こんな時なのにその色に見惚れてしまう。
「ふざけんな!」
「きゃっ!」
アナテマは私をそのまま投げ飛ばした。
「何もかも忘れたのか?本当に僕の事も覚えてないのか?」
「ご、ごめん、わかんない」
「謝るな」
アナテマはイライラとしている。これ以上話しても仕方ないと思ったのか離れていった。
「いいから僕の言う通りにしろ、でないとお前の大切なものが無くなるよ」
「何する気!みんなに手を出すなら許さない」
「許さないって?お前に何が出来るんだよ」
「わ、私だって魔法には自信があるんだから!」
私は一番得意な風魔法を使い、遠くに飛ばそうと風弾を放った!
「なにこれ、本気でやってんの?」
アナテマはそれを軽く手で払った。
「うそ…」
結構魔法に自信があった私は唖然とする。
「まぁでもお前にしちゃよくやった方かな」
アナテマは笑うとシルバやシンクそっくりな黒い塊のナニカを作った。
「な、何それ…そんなのシルバ達じゃないよ」
「まぁ力はだいぶ劣るけどあいつら僕の事、攻撃できないよね」
ふふッと笑うと黒い影のシルバ達を真っ二つにする。
「止めて!」
シルバ達に姿が被って思わず叫び声をあげた。
「やめるかよ、いいかお前が僕の言う通りにしなきゃ本物をこうしてやる」
次はベイカーさんやセバスさんコジローさんに似たシルエットを出されて首をはねた。
「そんなことさせない!みんな守るから!」
「別にいいよ。好きなやつを守ればいい、その代わりお前が守れなかった違うやつを同じようにするだけだ。まだまだいるよねお前の好きな奴ら…」
アナテマはクスクスと笑うと見知った影を次々に作る。
ど、どうすればみんなを守れるの…
不安がアナテマにわかったのか愉快そうにニヤニヤする。
「こいつらを守りたきゃ僕の言う通りにするんだな」
私はガクッと膝をついた。
「明後日までに使い魔を寄越す。そいつについて行けば案内してくれるよ」
「使い魔…?」
「明後日の真夜中だ、もし来ないなら次の日誰かが死ぬよ」
無邪気に笑ってそう言うアナテマに寒気がした。
私は何も返事が出来ずにいる。
絶対について行くべきではないとわかっているのにどうすればいいのかわからなかった。
そんな私にお構えなしにアナテマは笑って姿を消した。
「うっ…」
悔しくて目をギュッと瞑ると温かい声が聞こえてくる。
【ミヅキ…ミヅキ…】
ハッ!と起き上がると目の前に会いたかったシルバ達が私の事を取り囲んでいた。
【大丈夫か?なんだかうなされていたぞ】
シルバが心配そうにぺろぺろと頬を舐めると驚きに目を見開く。
【大変だ、冷たくなってるじゃないか!】
【本当だ!ミヅキ寒くて唸ってたの?】
シンクがお腹に乗って私を温めてくれる。
【ありがとう…温かい】
心配そうにプルシアやコハク達も近づいてくれた。
みんなに囲まれて冷えきっていた心も体も温まる。
【みんなありがとう、みんなの事本当に大好きだよ】
私はひとりひとりを見つめてニコッと笑った。
私の大切な家族達…絶対に傷つけさせない…
私は改めて心に誓った。
ミヅキはふわふわとする真っ白な世界で一人で歩いていた。
「シルバー?シンクー?」
声をかけるが反応はない、コハクにプルシア、ムーもレムもいなかった。
いつも誰かしらそばに居るはずなのに…
「ベイカーさーん」
声を出せば誰かしら現れるのに誰も来ない。
おかしいな?
見た事もない空間にこれは夢かなと思い始める。
私はもう少し周りを歩いて見ようと前に進む、でも全部真っ白で前だか後ろだかも分からない。
まるで雲の上を歩いているようだった。
「みんな、何処ー?」
夢なら誰か出てきてくれてもいいのに…
大きな声を出してみると前になんか黒いものが見えた。
シルバかな!
私は急いで駆け出すが上手く走れない。
でも頑張って足を動かし黒い固まりのそばに行くと…
「シルバじゃない…」
それは白い世界を汚すように黒い部分が広がっていた。
「なにこれ…」
黒くなっているところを触るとさぁ…っとその部分が白に変わる。
なんだかその事に安堵していると声が聞こえてきた。
「あー、やっぱりお前には浄化出来るんだ…なんでだろ?なんにも出来ないのカスのはずなのに…」
「だ、誰!」
周りをキョロキョロと確認すると黒いモヤから私そっくりな子が出てきた。
「わ、たし…」
「お前なんかと一緒にするな」
鏡みたいにそっくりな顔が目の前で歪んだ。
「あなた…アナテマ?」
「だから、呼び捨てにするなって言ったよね?」
アナテマはグッと私の髪を鷲掴みにすると頭に痛みが走った。
「痛い!」
これは現実?夢?
目の前の光景に唖然としてしまう。
「あなたは一体誰なの、なんで私と同じ姿でみんなに酷いことするの?」
「同じ姿だけど生まれたのは僕の方が先だからね、それに…自分の事を知りたいなら僕と一緒に来い」
「嫌だ!」
私は間髪入れずに答えた。
「僕に口答えねぇ、偉くなったもんだ。本当にお前はあのカスと同じなのか?」
じっと顔を覗き込んでくる、その瞳は綺麗な赤色をしていた。
「綺麗…」
こんな時なのにその色に見惚れてしまう。
「ふざけんな!」
「きゃっ!」
アナテマは私をそのまま投げ飛ばした。
「何もかも忘れたのか?本当に僕の事も覚えてないのか?」
「ご、ごめん、わかんない」
「謝るな」
アナテマはイライラとしている。これ以上話しても仕方ないと思ったのか離れていった。
「いいから僕の言う通りにしろ、でないとお前の大切なものが無くなるよ」
「何する気!みんなに手を出すなら許さない」
「許さないって?お前に何が出来るんだよ」
「わ、私だって魔法には自信があるんだから!」
私は一番得意な風魔法を使い、遠くに飛ばそうと風弾を放った!
「なにこれ、本気でやってんの?」
アナテマはそれを軽く手で払った。
「うそ…」
結構魔法に自信があった私は唖然とする。
「まぁでもお前にしちゃよくやった方かな」
アナテマは笑うとシルバやシンクそっくりな黒い塊のナニカを作った。
「な、何それ…そんなのシルバ達じゃないよ」
「まぁ力はだいぶ劣るけどあいつら僕の事、攻撃できないよね」
ふふッと笑うと黒い影のシルバ達を真っ二つにする。
「止めて!」
シルバ達に姿が被って思わず叫び声をあげた。
「やめるかよ、いいかお前が僕の言う通りにしなきゃ本物をこうしてやる」
次はベイカーさんやセバスさんコジローさんに似たシルエットを出されて首をはねた。
「そんなことさせない!みんな守るから!」
「別にいいよ。好きなやつを守ればいい、その代わりお前が守れなかった違うやつを同じようにするだけだ。まだまだいるよねお前の好きな奴ら…」
アナテマはクスクスと笑うと見知った影を次々に作る。
ど、どうすればみんなを守れるの…
不安がアナテマにわかったのか愉快そうにニヤニヤする。
「こいつらを守りたきゃ僕の言う通りにするんだな」
私はガクッと膝をついた。
「明後日までに使い魔を寄越す。そいつについて行けば案内してくれるよ」
「使い魔…?」
「明後日の真夜中だ、もし来ないなら次の日誰かが死ぬよ」
無邪気に笑ってそう言うアナテマに寒気がした。
私は何も返事が出来ずにいる。
絶対について行くべきではないとわかっているのにどうすればいいのかわからなかった。
そんな私にお構えなしにアナテマは笑って姿を消した。
「うっ…」
悔しくて目をギュッと瞑ると温かい声が聞こえてくる。
【ミヅキ…ミヅキ…】
ハッ!と起き上がると目の前に会いたかったシルバ達が私の事を取り囲んでいた。
【大丈夫か?なんだかうなされていたぞ】
シルバが心配そうにぺろぺろと頬を舐めると驚きに目を見開く。
【大変だ、冷たくなってるじゃないか!】
【本当だ!ミヅキ寒くて唸ってたの?】
シンクがお腹に乗って私を温めてくれる。
【ありがとう…温かい】
心配そうにプルシアやコハク達も近づいてくれた。
みんなに囲まれて冷えきっていた心も体も温まる。
【みんなありがとう、みんなの事本当に大好きだよ】
私はひとりひとりを見つめてニコッと笑った。
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私は改めて心に誓った。
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