上 下
601 / 687
12章

703.出迎え

しおりを挟む
「ミヅキ…嫌だった?」

カイルはセバスさんに手を掴まれても慌てずににっこりと笑って私を見つめる。

「え?あ…嫌じゃないけど…キスは…ねぇ…」

あははと笑って誤魔化した…こんな時の対応がよく分からない。

だって友達だし…国によってはキスは挨拶だったりもするからなぁ…

「ほら、本人もいいと言ってますよ」

「ミヅキさん、嫌なら嫌ときちんと言った方が彼らの為ですよ。少しでも希望があると勘違いさせては可哀想ですからね」

セバスさんがなんか不機嫌そうに笑いながらこっちを見つめる。

「そうだ、望みがないと前もってはっきり言ってやれ。それが優しさってもんだ」

ベイカーさんまで眉間をピクピクさせながら笑顔を浮かべてる。

一体どうしたんだ!?

「セバスさんもベイカーさんも大丈夫?私なら平気だから気にしないでね…この二人は友達だもん!ただの挨拶だし全然平気!」

私が安心させるように笑うとベイカーさん達がやっとほっとしたような笑顔をみせた。

「そうか、友達だよな」

「ええ、友達との挨拶なら仕方ないですね」

なんか知らんが二人の機嫌が直ったようだ。

その代わりにレオンハルトとカイルが肩を落としてため息をついた。


「どうやら、先にどうにかしないといけないのは保護者よりもミヅキの鈍感さのようです」

「違いない」

カイルとレオンハルトがなんかコソコソと話している。

「なになに?何の話?」

二人に近づこうとすると…

「ミヅキ、男の話に首を突っ込まない。特にあいつらには近づくな…この国の王子と宰相の息子だぞ…ろくな事がない」

確かに…

ベイカーさんの言葉に納得して頷くと、二人に近づくのはやめることにした。

しかし…

「ベイカーさん残念ですけどミヅキはしばらくお借りすることになります」

カイルがにっこりと笑ってベイカーさんを見上げた。

「はぁ!?なんでだ!」

ベイカーさんが納得いかないとカイルを睨みつける。

「ミヅキには他の国の王子や王女達の橋渡しを頼みたいんだ」

するとレオンハルト王子が説明を始めた。

どうやら今回のお祭りに他の国の王族達も集まるのに彼らの共通の知り合いが私らしい。

しかもどの国も私に会いたいと言ってくれているらしく…

「確かに私もみんなに会いたいなぁ…」

この世界に転生して、ベイカーさん達に出会いウエスト国にお世話になる事になって色んな国にも行った。

海の国ではアクアやリバイアさんに会って、サウス国ではピース達と遊んだし、エルフの国にも行ってオリビアが私達の町に住むようになった。

最近は獣人の国でお世話になって、バイオレッドやアルフレッドをもふらせてもらったし、ロブさんやロバートさんにもまた会いたいなぁ~

今まで出会った人達の笑顔がうかんでくる。

そんな私の考えが読まれたのだろうか…

「彼らも会えるのを楽しみにしてるって言ってたよ」

カイルの言葉に心が揺らぐ。

「ベイカーさん…セバスさん…行ってもいい?」

うかがうように恐る恐る保護者達に聞いてみる。

「はぁ…こうなると思った…」

「そんな顔で頼まれて嫌とは言えませんね」

二人は仕方なさそうに頷いてくれる!
ちゃんと私の気持ちを優先してくれる本当に優しく保護者達だ!

「よし、うるさい保護者の了承は得たな!ミヅキ、明日には海の国の人達が着く予定だ。早速迎える準備のいい案を考えてくれないか?」

レオンハルト王子が握れとばかりに手を差し出してくる。

まさかそれが目当てで声をかけてきたのか?

ジロっと二人を見つめた。

すると頬を赤らめて目をそらされた、目を逸らしたって事は後ろめたいのかも…まぁいいけどね。

「私もみんなには気持ちよく滞在して欲しいし…協力するよ」

レオンハルトの手を掴みギュッと握り返した。



さすがにベイカーさんやセバスさんは王族達の集まりに着いてくるのは断念した。

その代わりにシルバ達に私の事をよく頼んでいた。

「シルバ!いいか目を離すなよ…目を離すとろくな事にならないからな!あとな…どこかの国の王子に口説かれたら邪魔するんだぞ…」

「ガウ!」

なんかシルバとベイカーさんがコソコソと話している。

話はできないはずなのに意思疎通がバッチリ取れていることに驚きだ。

「ではシンクさんとプルシアさんミヅキさんをよろしくお願いしますね。手を出す輩がいたら…まぁかろうじて息がある程度に生かしておいて下さい…裏で手を引く者がいないかきっちりと聞かないといけませんからね。殺すのは何時でもできますから」

「クゥ~!」

「グルル…」

違う場所ではシンクとプルシアがニコニコと笑うセバスさんと 話している。

まぁあっちは変な話などしてないだろう。

【じゃあシルバ、シンク~みんな行くよ~】

レオンハルト達が早速移動するので私はみんなとここで別れることになった。

「なにかあったらすぐに戻ってくるんだぞ」

「はーい」

「寂しくなったらでも構いませんよ」

「う、うん…」

ベイカーさん達に見送られて私は王宮の奥へと進んで行った。

「はぁ~やっとあのうるさいのがいなくなったな…」

レオンハルトはニヤッと笑うと話しながら私の隣に寄ってくる…すると…

「グルルル…」

シルバが間に割り込んだ。

【このガキ、ミヅキの隣は俺達と決まってるんだ】

【本当に~やだね節度を守らない人って~だからモテないんだよ(ミヅキに)】

シンクが定位置の私の頭にちょこんと座った。

後ろからはプルシアとコハクにムーにレムもピッタリと着いてくる。

頼りになるボディーガード達がしっかりと周りを取り囲んでいた。

【みんなそんなに近づいてきてどうしたの?】

まぁ可愛いからいいんだけど…

【ミヅキは気にするな、それよりも道は長いからな背中に乗れ】

シルバに背に乗らさせて私はゆうゆうとみんなの後をついて行った。

「クッ…面倒な保護者が居なくなったと思ったら…もっと面倒な従魔が残ってた」

レオンハルトが悔しそうに呟くと…

「面倒って…聖獣達ですよ。あれを離すのは無理だよね、やっぱり少しずつ距離を縮めて行くのが良さそうだ」

カイルは冷静に分析をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩
ファンタジー
「ほっといて下さい」のもうひとつのお話です。 本編とは関係ありません。時系列も適当で色々と矛盾がありますが、軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ✱【注意】話によってはネタバレになりますので【ほっといて下さい】をお読みになってからの方がいいかと思います。

フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!

荒井竜馬
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。  赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。  アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。  その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。  そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。  街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。  しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。  魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。  フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。  ※ツギクルなどにも掲載しております。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました 。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。 令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。 そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。 ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。