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番外編【ネタバレ注意】

三巻販売御礼の番外編第二弾 ルンバとリリアン

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この話は三巻発売のお礼として書きました。

三巻のネタバレもあるので読んでない人、これから読む予定の人は気をつけて下さい。

ミヅキと会ったリリアンとルンバのお話です。











「はぁ…」

朝起きてお腹を撫でるとため息をひとつ…隣を見ると旦那のルンバが朝の仕事の支度のためにもうベッドを抜け出ていた。

私、リリアンは冒険者仲間だったルンバと結婚して念願だった冒険者達の為のお店も持った。

夫婦仲も良好、口数の少ない男だけどとても優しく、怖い顔でオドオドする姿がまた可愛らしい。

そんなところに惚れて私からアプローチして告白したが蓋を開ければ向こうもずっと私を好きだったと言うパターン。

店もそこそこお客が入り生活するには十分な安定がもてた。そんな順風満帆な出だしだったが…唯一の気がかりは「子供が出来ないこと」だった。

ルンバは授かり物だからといつも優しく声をかけてくれる…私もあの人も子供が好きだからとすぐに子作りに励んだが私達の元に子供が授かることはなかった…

そんな憂鬱な気持ちもお店に出ればおくびにも出さない、明るい声と笑顔で冒険者達を迎え入れてお腹いっぱいにさせて送り出す。

まぁでっかい子供が沢山いると思えばいいかと子供の事は諦めかけた頃にあの子はやってきた。

手のかかる冒険者の一人のベイカーさんが連れてきた幼い女の子で名は「ミヅキ」と言った。

可愛いらしい容姿には似つかわしくない真っ暗で大きな従魔を従え、自分の事に無頓着ながら料理の知識は抜群というチグハグな幼女は何となくほっとけない子だった。

しかし愛嬌もあり、時折大人っぽい言動や仕草から何やら訳ありな過去が垣間見れた…まだ幼い子供に何があったのと心配になるが本人は話す気が無いようで周りもそれを温かく見守る事にした。





「リリアンさん!」

ミヅキは明るい性格からすぐにここに慣れたようで私達にもすごく懐いてくれた、それが可愛くてミヅキを自分子供のように可愛がりいつしか子供が出来ないことなど気にならなくなっていた。

「ふふ…」

夜にふっと昼間のミヅキの事を思い出し笑っていると

「なんだ?」

まだ起きていたルンバから声がかかった。

「あら、ごめんなさい。まだ起きてたのね」

「いや、大丈夫だ。それより何に笑ったんだ?」

「ふふ、今日ねミヅキちゃんが間違えて私の事をお母さんって呼んだのよ。その後間違えちゃったって恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてて…ふふ、本当に可愛い子ね」

「そうか…」

ルンバからは少しだけ不満そうな声が返ってきた。

「あら?何拗ねてるの?」

「なんでもない」

くるっと背中を向けてしまったルンバに声をかける。

「あっ!わかったあなたもお父さんって呼ばれたかったのね」

「うっ…」

図星らしい、本当に可愛い人だ。耳まで赤くしている。

「本当に子供が出来なくてもいつかミヅキちゃんがそう呼んでくれるかもよ」

私は大きなルンバの背中にそっと寄り添った…

「リリアン…」

心配そうに振り返ったルンバに私は笑顔で微笑んだ、決して強がりではなくそれでいいと思えたからだ。

「ああ、あの子は俺たちの本当の子供だな」

「ええ…」

その日深く愛し合い、お互いの気持ちを確かめ合った私達は次の朝、盛大に寝坊する事になったのだが……

「おはよう!ミヅキちゃん」

朝慌てた様子でミヅキちゃんに会うと顔をじっと見られた。

やだ、なんかわかるのかしら…

キョロキョロと自分の身だしなみを確認するが一応大丈夫そうだ。

「なに?ミヅキちゃん」

私は膝を曲げてミヅキに目線を合わせると…

「なんか…今日のリリアンさんすごく綺麗!それに…ここが暖かい!」

ミヅキはお腹にギュッと抱きついてきた。

時折甘える仕草が愛しく思わず抱き返す……やっぱりこの子は私達の天使だ。

その数ヶ月後…

「オェ…」

突然の嘔吐に私はトイレへと駆け込んだ!

数日前からなんだかモヤモヤして胸の辺りがスッキリしなかった。

変な物でも食べたかしら…

お店を開く者としてさすがに食べ物に当たったなどきまり悪いので、こっそりと医者にかかると思わぬ事を言われる。

「おめでただね」

「おめでた?食中毒が?」

「何言ってるんだい、赤ちゃんだよ!リリアンおめでとう」

「うそ…」

「そんな事で嘘なんかつかん!どうする?ルンバには言うかい?」

顔なじみのおばあちゃんの医者は私達が子供が来ない事に悩んでいたことを知っているだけ嬉しそうにしくれた。

「よかったね、わたしゃ悪いがあんた達に子供は無理だと思ってたよ…ここまで出来ないと何らかの原因がある可能性が高いからね」

「そ、そうなんですか!?」

「ああ、どうにもできる事じゃないから言わないがね…しかしよかった。なんか周りに変化でもあったのかな?」

そう言われてミヅキの笑顔が浮かんできた。

あの子が来てからお店は繁盛するし、夫婦仲はさらに良くなるし、いいこと尽くしだった。

「そういえば…」

ミヅキにお腹をギュッと抱きしめられた事があったことを思い出す。
そういえばあの日から月ものが来ていない。

「まさか…」

私は少しだけ迷ってルンバにはまだ赤ちゃんの事は内緒にする事にした。

安定期に入れば問題ないと言われたのでそれまでは…もしダメだった時にあの人に悲しい思いはさせたくなかった。

しかし不安も他所に何事もなく順調に過ごしている時王都に行く話が飛び込んできた。

ルンバは悩んでいたが私が後押しして王都へと行くことになった。

「なら、ミヅキも連れていかないか?」

王都へはミヅキに教えてもらったハンバーグの店を出して欲しいとのお願いだった。

ルンバとしては発案者のミヅキがいなくては話にならないらしくミヅキが行くならと首を縦に振る。

そこでミヅキにお願いしてみると行ってみたいと答えが返ってきた。

王都へは娘として付いてきて欲しいと説明すると恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに頷いてくれた。

そしてあれからお母さんとなかなか呼んでくれないミヅキに「お母さんって呼んでいいのよ」と言うと思わぬ返事が返ってきた。

「それはリリアンさん達の子供に取っておいてあげたいので…」

そう言って私のお腹を優しく見つめるミヅキはまるでその日が確実に来ることを知っているかのようだった…

この子は…

ふっと力が抜けると思わずまだルンバにも言ってないことをミヅキに話してしまった。

「この子ならきっとそれを許してくれるわ」

その言葉だけでミヅキは察してくれた、驚き自分の事の様に喜んでくれる。

この子のお姉ちゃんになってね…

私は大事な大事な娘に感謝を込めて強く抱きしめた。
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