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11章

687.殲滅

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【フハハハハ!】

シルバは笑いながらゴブリン達の間を駆け抜ける!

すると風圧とシルバの風魔法で作った透明な盾にゴブリン達は何が起こったのかも気が付かないまま死を迎えていた。

シルバが通るところはまさにゴブリンの屍しか残らなかった…

【楽しそうだな、では私も…】

プルシアは様子を見た後シルバとは反対方向から同じように小さい体のまま飛んでゴブリン達の体を貫通していく。

弾丸のような速さで貫くドラゴンにゴブリン達はなすすべがなかった。

いくら頭の悪いゴブリン達でもこの二人に勝てるわけないと気が付き目標をセバスに切り替えた。

ゴブリン達に一斉に注目を浴びる。

「まぁ気持ちはわかりますがあなた達の相手をするのは彼らですよ」

セバスは笑うとゴブリン達が逃げられないように土魔法で周りを囲った!

【おお!一箇所に集まって殺りやすい】

【この壁どんどん狭まっているな】

セバスの作った壁は徐々に厚みをまして中心へと向かっていく、ゴブリン達は動く壁に追い詰められ中かはシルバとプルシアの攻撃と逃げる場所が無くなっていた。

「では、私は周りの確認に行きますので中のゴミ処理はよろしくお願い致します」

「ガルル!」

シルバの声を了承と捉えてセバスはゴブリンの住処に入っていった。

谷底にいくつか開いた洞穴へと入っていくと内の様子を確かめる。

「うっ…防壁をしてても少し臭いますね…」

ハンカチを取り出し口と鼻に当てて奥へと向かった。

「これは…」

そこには床に散らばる骨がいくつも落ちている…形からして人間の骨のようだった。

やはりミヅキさんを置いてきてよかった…

セバスは自分の判断が正しかったと確信する。

きっとミヅキさんがこんな所を見れば悲しみ、何も出来なかったと悔やむに違いない…何も悪くないのにあの小さい肩に色々と背負い嘆く姿が目に浮かぶ。

ミヅキさんは優しすぎますからね…

しかしそれを悪いことだとは思えないセバスはなるべくそんな場面をミヅキに見せないようにするしか出来なかった。

せめて助けられる命があればいいが…

中の様子を伺うが出てくるのは残っていた残党のゴブリンだけ、こっちの姿を見ると躊躇なく襲ってくる。

セバスは淡々と返り討ちにすると全部の洞穴を確認した。

一匹残らずゴブリンを殲滅したが生きた人は確認出来なかった…

まぁここで生き延びていても辛いだけだけですね…

セバスは土魔法で洞穴を全て埋めると手を合わせた。

穴の中を確認してる間に外ではシルバ達がとっくにゴブリンを全て動かない肉片に変えていた。

【やはりゴブリンなどでは運動にもならんな】

【ああ、ただ飛んだだけなのに気がつけばみんな死んでいる】

プルシアもつまらなそうに欠伸をした。

そんな二人の様子を見てセバスは苦笑すると…

「お二人ともご苦労さまです。本来ならこの規模のゴブリンの巣でしたら討伐隊を組まないとならないところでしたが、一瞬でしたね。後でギルマスに報奨金を出すように言っておきますから」

【うむ、金か…】

プルシアが頷くとシルバはそんなものは腹にもたまらんと顔を背けた。

「シルバさん、その様子ですとお金などいらない…というところでしょうか?しかしお金があればミヅキさんに好きな物を買ってあげられますよ」

【なに!?】

【それはいいな】

お金には興味無いがミヅキが喜ぶと聞いて顔色が変わる。

「前回の獣人の国では大変な思いをさせたようですし、何かプレゼントを買うのもいいのでは?」

【うむ、悪くない提案だ!】

【そうだが私達だけでは買い物が出来ないぞ】

プルシアの顔が曇る。

【そうだな…まぁコハクがいれば大丈夫だろ!あとはコジローを使ってもいい】

二人が何やら話している様子にセバスはニコニコと笑って伺っている。

国を一瞬で潰せる聖獣が一人の子供のために焦りながらも楽しそうにしている。

その姿を見るだけでミヅキの周りが平和なのだと確認できた。

「お二人共、ご相談はまた後でにしましょう。ミヅキさんを残しているとまた大変な事になるかもしれませんからね」

【そうだ!早くミヅキにあってこの臭い匂いを払拭せねば】

【私も今日は風呂にいれてもらおうかな…】

二人とも防壁を張っていたので返り血などは付いていないが臭いだけは移ってしまっていた。
自分の体の匂いを嗅いで顔をしかめている。

「軽く水を浴びますか?」

【いや、ミヅキが気になるから先に帰ろう】

シルバが首を振るのでセバスは頷くと上を見上げる。

「お二人共先に帰ってて下さい。私はゴブリンの亡骸を埋めてから向かいますので」

シルバ達は頷くと崖の少しある足場を登り上に向かった。

セバスも少し上に上がり足場を見つけるとゴブリン達の臭いも一緒に土の中に閉じ込めた。

「よし、これでいいでしょう」

上を見上げシルバ達と同じように崖を登ると既に上ではシルバ達がミヅキのそばに寄ろうとして拒否されていた。

「シルバ!くっ、臭い!」

【ミ、ミヅキ!!】

ミヅキに拒否されてシルバの耳と尻尾がこれでもかとペタンと垂れ下がる。

【あっ!ご、ごめんね!シルバ達頑張ってきたのに…でもその臭いやばいね。すぐにお風呂に入ろう!】

【風呂!?いや!これくらい水でサッと流せば…】

【ダメダメ、絶対そんなんじゃ落ちないよ!ちゃんと石鹸で泡立てないと!】

ミヅキとシルバのやり取りにセバスさんが近づいてきた。

「あれ?どうしました?」

「あっ!セバスさんおかえりなさい!…ってセバスさんも臭いがすごいです…」

ミヅキが駆け寄ろうとしてその手前で止まってしまった。

しっかり受け止めるつもりで出した両手が寂しく制止する…思わず笑顔も固まってしまった。

「あっ!べ、別にセバスさんが臭いわけじゃないですよ!セバスさんいつもいい香りだし…」

少し頬を染めながら伺うように少し離れたところから覗き込んだ。

「シルバさん、プルシアさん」

セバスは真剣な顔で二人に声をかけた。

【なんだ…】

【……】

二人ともミヅキに触って貰えずそれどころではなく素っ気なく答えると

「今すぐお風呂に入りましょう」

セバスさんの提案に二人はすぐに頷いた。
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