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11章

684.シルバのおしおき

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ギルドを出ると、外でお利口に待っていたシルバ達のところに向かう。

【遅かったな】

シルバが起き上がると私のそばに来ようと立ち上がった。

「お待ちください」

すると、セバスさんが私の前に立ちシルバの行く手を阻んだ。

【何をする…】

シルバが私に寄らせないセバスさんを睨みつけた。

「先程聞きましたが、シルバさんも肉を食べつくしてミヅキさんを困らせたとか?」

【な、何故それを!?】

シルバが動揺すると、その様子にセバスさんが呆れた。

「その様子ですと本当のようですね」

「でもシルバもお肉禁止にしてるんだよ」

私は思わずシルバの味方をする。

「しかしシルバさんはそのせいでミヅキさんのそばを離れたと聞きましたが?」

【うっ…】

シルバが痛いところをつかれて眉間にシワがよる。

「そこら辺はどうなんですか?」

【そ、それは…】

シルバが珍しく私以外に耳を下げた。

「セバスさん!シルバはすごく反省して、しばらく肉はいらないって言ってくれたの!シルバがだよ!?」

私はシルバの首に抱きつくとセバスさんを見上げた。

「私もね、いけなかったから…シルバと一緒に断食する!」

【だ、断食だと!?】

シルバの狼狽える声がするがそのくらい言わないとセバスさんのお許しを貰えないかもしれない!

反省しろと丸刈りにでもされたら…

シルバの顔だけ毛の残ったアルパカのような姿を想像する。

ぶるぶる!

頭を振ってシルバの情けない姿を相殺する。

駄目!そんなの絶対耐えられない!

【シルバ!一緒に反省しよ!】

私はシルバの顔を掴むとじっと間近でその目を見つめた。

【あ、うっ…はい…】

シルバは何かと葛藤するように唸ったあと…コクリと項垂れるように頷いた。

「セバスさん!シルバも断食するって!」

私とシルバのやり取りにセバスさんは苦笑している。

「気持ちはわかりましたが、ミヅキさんは成長期です。そんな時期に断食などはよくありません」

【なら!】

シルバが顔を輝かせると

「ですのでお野菜ぐらいは食べましょうね」

「はい!」

【野菜…】

シルバはこの世の終わりのような顔をしていた……

【大丈夫、お野菜も美味しいよ】

【そうだよ!ミヅキが作るものならなんでも美味しいよ】

【そ、そうだな。まぁミヅキと離されるよりはよっぽどいいな】

「なんかシルバさんほっとした顔をしていますがシルバさんは断食ですよ?お野菜も駄目です」

【え!】

シルバが驚いているとセバスさんが笑った。

「最近シルバさんもあの馬鹿に毒されてきてますからね。ここら辺できっちりと躾をしておいた方がいいと判断しました。でないと取り返しのつかない事になりますからね。あんな男になってもいいのですか?」

「あ、あんな男?」

私は誰だろうと考えていると

「責任ある立場からの解放で好き勝手してるあの男です…やはりもう一度王都に戻した方がいいでしょうか?」

セバスさんが本気で悩むように深くため息をついた。

「ア、アランさんだっていい所あるよ!いるとみんなが明るくなるし…大丈夫!これからはちゃんとアランさん達にしっかりするように言うから!」

私は必死にお願いした!

セバスさんは慌てる私の様子にニコッと笑うと

「あれ?私、アランて言いましたっけ?」

「あっ!」

ついそんな人物はアランさんしか思いつかなくて…

口を手で覆った!

セバスさんが意地悪そうな笑顔を見せる。

「まぁミヅキさんも主人として気をつけて下さいね」

「はい…」

また王都に言って兵士になるとしたら今みたいに会えなくなっちゃう…それは寂しい!

と思ってつい言ってしまった。

「わかりました…私ももう少し厳しくするようにしますね」

「は、はい!お願いします」

頭を下げるとシルバが嫌そうに不貞腐れる声がした。

「シルバさんもしっかりしないとダラダラとしたアランと同じになりますよ…」

私はグーダラ寝るシルバを想像する…

んーそれはそれで可愛い…

いやいや!シルバはやっぱりカッコよくて優しくないと…ここは心を鬼にして!

【シルバ、頑張ろ!】

【ミヅキ…め、飯抜き…は…】

【その代わり終わったらご馳走作るからね!】

セバスさんに聞こえていないのはわかるけどそっとシルバに呟いた。

【うっ…ミヅキが言うならわかるが…セバスに言われたと思うと…アランやベイカー達と同等の扱いが気にいらん!】

そこは…本当に同等のような…まぁ口にはしないけど…

渋るシルバの様子にセバスさんはさらに話しかけた。

「もし、シルバさんの行動をシンクさんやプルシアさんがしたらどう思いますか?彼らのせいでミヅキさんが怪我をする事になったとしたら…」

【そ、それは…】

「まぁ彼らならなかなかありえないので想像しにくいかも知れませんが…それがベイカーさんなら?アランなら?」

【殺す!】

シルバ!なんて事を…

シルバの唸る姿にセバスさんはにっこりと笑う。

「そういう事です」

シルバは何も反論出来ずにただただ頷いた。

「まぁ期限はベイカーさん達と同じで良いでしょう。あの人達も仕事が終わらなければ食事どころではないでしょうから」

「え!?それだとコジローさんは可哀想じゃ…」

「ああ、大丈夫です。ギルドの職員にそこら辺の言は伝えておきましたから。決してギルマス達に食事を用意しないように…と、コジローさんは後でこっそりと渡しますからね」

セバスさんが抜かりないとウインクした。

さすがです!

セバスさんに任せて置けば安心だな!

私は安心して任せることにした。



ギルドでは、ギルマスに仕事を振られてベイカー達が書類整理をしていた。

「おい、じじい!この書類はどこにあるんだよ」

アランが必要な書類を探すが一向に見つからずにディムロスに声をかけた。

「あっ?そりゃB級の魔物の資料だな…それだとあの棚のどこかにある」

そう言って大きなギッリシ詰まった本棚を指さした。

「こ、ここから探すのか…」

「セバスなら場所を把握してるんだが…」

「くっ…お、おい、この魔物の資料知ってるか?」

アランは近くにいたギルド職員に声をかけた。

「えっと…僕らセバスさんから皆さんの手伝いはしないようにきつく言われていて…」

すみませんと頭を下げる。

「あの野郎!本当に昔っからネチネチと細かい野郎だ!だからモテないんだよな!」

アランはセバスがいないのをいい事に悪口を言いまくる。

「だいたいあいつはいっつも俺の相手の女を取るんだぜ!ベイカーも知ってるよな!」

仕事を頑張るベイカーに話しかける。

「あれはアランさんの相手が勝手にセバスさんに惚れたんだろ?しかもセバスさん断ってたし」

「くっ…そうだった…なんなんだよあいつ!今度寝てる間に眉毛繋げてやろうかな!おい、コジロー一緒にやらないか?」

「お断りします、アランさんはい、資料ありましたよ」

コジローはアランに構わずに資料を用意した。

「おっ!ありがとうよ!」

アランは資料を受け取るとサラサラと書類を片付けた。

その様子にギルド職員は……

「アランさん…真面目にやれば絶対にモテるのにな」

「本当に…あの書類あんなに仕上げられる人なかなか居ないのに」

残念そうな人を見るように見つめていた。
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