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11章

681.失敗

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「ギルマス、進捗はどうですか?」

ギルマスはセバスの声に顔をあげるとニコッと笑ったセバスと目が合った、そしてまた書類に顔を戻す。

「見ての通りじゃ…これしか進まん…」

まだ大量に残された書類の山を指さす。

「まぁ地道にやればすぐに終わりますよ、それより獣人の国の事を作業しながらで良いので聞いてもいいでしょうか?」

「ああ」

ギルマスは問題ないと頷くとセバスが話し出した。

「ダンジョンに潜ったとありましたが…そこでは何事もなく?」

「いや、少し難易度が高くなっていてな。ミヅキやシルバ達従魔がいないと厳しかったかもしれん…それと後で報告する事もある」

「今でもよろしいですが?」

「いや、ギルドの奴らもいるからな…黒い魔石の件だ」

そう言ってチラッと扉の方を見るとすぐに顔を戻す。

「わかりました…他には何かありましたか?」

「後は…獣人の王子達が魔法で洗脳されててな、アルフノーヴァ達のおかげで解けたんだが…」

「さすがですね、一緒に居たのが師匠で良かった」

「そうじゃな…まぁ色々あったが…とりあえず獣人達も皆無事で良かったわい」

「そうですねぇ…あと報告する事はありますか?」

「あと?そうだなぁ…あっ!そういやロブは覚えとるか?」

ギルマスが聞くと

「ああ、ギルマスのライバルだとよく言ってた方ですね。似たもの同士の…」

「何処が似とる!?わしの方が何倍もイケメンじゃ!」

「それは髪の毛だけでしょう?」

「いや、それがな…あいつ今やフサフサなんじゃ…」

「ほう…」

セバスは片眉をあげて、興味深そうにする。

「そこら辺も後でじっくりミヅキが来てから報告するわい」

「ええ、お願いします……後は…ミヅキさんは料理などはやはり振る舞われたのですか?」

「ああ!もう恒例だな!」

ギルマスは料理を思い出し舌なめずりをするとお腹がグルル~と鳴った。

「その時ミヅキさんは何処に?」

「ミヅキか?そんときは…確か連れ去られてなぁ~まぁ毎度の事ながらあれは慣れんな…焦ったわい」

「そう…ですね」

セバスが少し間をおいて同意するとギルマスは自分の発言にギョッとして慌てて否定する。

「あっ!いや違うぞ。ちょっと離れただけだ」

「ちょっと何処に離れたのですか?」

「あ…と…えー、何処だったかな?」

ギルマスが変な汗が出ながら目を泳がせる。

「まぁいいでしょう…他には?」

「いや!何も無い!他はもう無い!俺は仕事に集中するからもう終わり!話しかけるな!」

ギルマスはガバッと書類をかき集めて一心不乱に書類をながめた。

「よくわかりました…お仕事中にすみませんね…報告はそれが終わったらゆっくりと聞きます。まぁ終わるには三日ほど徹夜をしないといけませんがね」

「な、ずっと休憩無しでやれと!?」

ギルマスが書類を読んでいた振りをやめて顔をあげるとセバスと目があってしまった。

「いえ、休憩になりましたらその間は先程の件の報告をしてもらいます…それはもう包み隠さず根掘り葉掘りにね」

セバスが楽しそうににっこりと笑う姿にギルマスは背筋が寒くなった。

こ、これはもうバレた?

いや…バレる要素などなかったはず!気のせいか俺達の様子にカマをかけているだけかも知れない…

しかし…

ギルマスは究極の選択を迫られた…しかしどっちにしても待つのは地獄だけ、ならばとギルマスは口を開いた。





私達はセバスさんに肉の調達とエルフさん達の様子を見に行く許可をもらいにギルドに戻ってきた。

「セバスさ~ん!」

私がギルドに入るなり声をかけると…

シーン…

ギルドに静寂が訪れる。

え!?なに?

驚き歩いてた足が止まり立ち止まると…

「ミヅキちゃん…」

ギルドの冒険者のみんなが一斉にこちらを見つめてきた。

その顔には憐れみが見て取れた。

「呼びましたか?」

すると奥からセバスさんが顔を出した、その瞬間息を吹き返した様にギルドのみんなが機械のように動き出した。

「さぁ依頼に行ってこようかな…」

「そうだな!」

「俺は武器の買い足しに…じゃあそういう事で…」

「私らは体を鍛えに行こうかな…誰か行かない?」

「「「はい!」」」

残ってた人たちも次々に用事を思い出しギルドの中が空っぽになった。

「さてと…俺も家の様子を見に行こうかな…」

いち早く危険を察知したベイカーさんがギルドを出ようとすると…

「はい、そこの人達話があります。ここに座りなさい」

セバスさんの言葉に皆金縛りにあったように動けなくなった。

「ああ、ギルマスとアランはもう既に捕まえてありますから気にせずに…さぁここに」

セバスさんは優雅に笑うと近くのテーブルを指さした。

こんな恐ろしい場面なのに私はセバスさんの笑顔にかっこいい…と思わず頬を赤らめた。

私達お互いの顔を見合わせて頷きあうとテーブルに座った。

それを確認してセバスさんがギルマス達を呼んで来ますと部屋を出ようとすると…何かを思い出した様に振り返る。

「ああ、逃げてもいいですけど必ず捕まえますからね。ベイカーさん」

「な、な、なんで俺だけ!?」

「だって逃げようとしてますよね?」

「そ、そんな事は…」

「そうですか?ならなんで足が外の方に?あなたの今のその顔、逃げ出す時の顔にそっくりなんですよね」

「え…」

ベイカーさんは慌てて自分の顔を触った。

その様子に微笑むとセバスさんがいなくなる。

するとようやく喋ることが出来た。

「ベイカーさん逃げるなんてズルいよ」

「そうですよ!ここはもう諦めて一緒に怒られましょう」

コジローさんは覚悟を決めたようだ。

「きっとバレちゃったんだね…」

「くそ…誰がバラしたんだ!アランさんか!?」

「じいちゃんもアランさんも捕まってるみたいだね…でも嘘ついてたのが悪かったんだよ、ここは素直にみんなで謝ろうよ」

私がそう提案するとコジローさんもそれがいいと同意してくれた。

しかしベイカーさんだけは渋い顔をしている。

「ベイカーさん、どうしたの?謝るの嫌なの?」

「ミヅキもコジローも甘い!お前らは本当のセバスさんの恐ろしさを知らないんだ、だからそんな悠長な事を言えるんだ」

「「え?」」

私達はベイカーさんの真剣な顔に顔を見合わせた。
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