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11章

626.エリクサー2

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【さっきまでの感じだと結晶の量と溶かす時間がやっぱり重要みたいだね。今度はさらに魔石を増やしてみよう】

ミヅキは残っていた結晶を全部使って溶かしてみる、もうこれで今日作れる分は無くなった。

【これで出来なかったらまた明日だね…】

ミヅキはゆっくりゆっくりと瓶を揺らして大事に作った。

【あと少し…】

最後の結晶の欠片がすうーっと水に溶けた瞬間、赤かった液体が水色に変わり光り出した。

【な、なんか今までと違う…】

冷ましていないのに熱さを感じない…水色に輝く水はずっとキラキラと光続けていた。

ミヅキは早速鑑定をすると…

《エリクサー》
完成品。最上級品。生物ならその命を不死に出来る。飲めば死ぬ事は出来なくなる。

【で、出来た…けど…どうしよう、なんか怖い…】

ミヅキの顔が泣きそうに歪んだ。

【どうした?】

【大丈夫?】

シルバ達が心配して真っ青な顔のミヅキにそっとその体を近づける。

【エリクサーができたの…】

【よかったじゃないか?何をそんなに怖がっているんだ?】

シルバが聞くと

【これがエリクサーの完成品なんだって…でもねこれを飲んだら死ぬ事が出来なくなるの…それってすごく怖い事な気がする】

【そうだな…】

シルバはミヅキから流れる涙を舐めると

【大切な人の死を見続けなきゃいけないって事だよね…二度とみんなに会えなくなるって事だよね。もしかして…シンクもそうなの?】

ミヅキはシンクを見ると

【僕はちょっと違うよ。確かに記憶はあるし何度も再生してるけど僕は僕。前の鳳凰と全く同じ…って訳じゃないよ。だから心配しないで優しいミヅキ…】

シンクが安心させるように説明するとにっこりと笑う。

【ならいいけど…辛かったら言ってね。何もしてあげられないかも知らないけど…そばにいるよ】

ミヅキはシンクを抱きしめた。

【やっぱりこの薬は二度と作らない方がいいね…だから前に作った人達も広めることをしなかったんだね…私もコレを最後にする】

【そうだな、愚かな者はその怖さがわからずに欲して争いを生み出す。ミヅキが作れる事はここにいる奴らしか知らないから大丈夫だろ】

シルバ達が優しく話しかけるとミヅキも少し落ち着きほっと息を吐いた。

使った物を片付けてミヅキはベイカーさんたちの元に行くと…

「ロブさんできたよ」

ミヅキはエリクサーを見せた。

「えっ!ほ、本当か!」

ロブさんが駆け寄って来ると

「うん、でもこれね…やっぱり大変でもう二度と作れないと思う…」

ミヅキが顔を逸らしてそう言うと…

「そうか!いや一個ありゃ十分じゃ!ミヅキに負担かけて悪かったな…わしに出来ることがあれば言ってくれなんでも力になるぞ」

「うん、ありがとう…でも今は大丈夫だよ」

ミヅキが笑うとベイカーがサッと側に来ると声をかけた。

「ミヅキ、ちょっと料理の事で聞きたいんだ…ちょっといいか?」

ミヅキがコクッ…と頷くとベイカーは移動するからとミヅキを抱き上げた。

ミヅキが収納から出してくれた食材の方に向かうと…周りに聞こえないようにそっと声をかけてきた。

「どうした?元気ないけど…エリクサーの事でなんかあったのか?」

ベイカーがミヅキの顔を覗くと…ミヅキは驚いた顔を見せた。

「そんな…変な顔してた?」

ミヅキは自分の顔を触る…自分では必死に普通にしていたつもりだった。

「いや…ロブさん達は気がついてないだろ」

「あのね…」

ミヅキはエリクサーの効果の事を話した。

「そうか…そりゃ怖い薬だな」

「うん…薬って言えるのかな…」

ミヅキは不安になる…あれを薬と呼んでいいのか…人に寄っては呪いの劇薬ではないのかと…

「大丈夫、もうあれしか作れないんだろ?」

「それは…作ろうと思えば作れるけどもう作りたくない」

ミヅキが下を向くとベイカーがポンと頭に手を乗せて自分の胸に引き寄せた。

「それでいい、お前が作りたくないのであれば作れないって事だ…」

「うん…」

「あれは人にやるわけじゃ無いからな心配するな、それにそんな事にもしなったら俺が必ず取り返して捨ててやる」

「ベイカーさんが?」

ミヅキが上を向くとベイカーが笑顔で頷いた。

「大丈夫、俺はA級冒険者だぜ」

【そうだミヅキ心配するな、俺達もいる】

シルバに乗ったシルクやプルシア、コハク達がウンウンと頷く。

「ありがとう…そうだね。あれはダンジョンに使うんだしもう作らないから大丈夫だよね」

「ああ」

ベイカーさんの笑顔にミヅキはほっとして肩の力が抜けた。

すると…

くぅ~…ミヅキの腹から可愛い音がする。

「あっ…」

ミヅキがお腹を押さえると

「ほっとしたらお腹空いてきた」

ミヅキが頬を染めてベイカーさんを見ると

「俺達が飯を用意したからな!まぁ…味は保証出来んが…」

ちらっと大きな寸胴をかき混ぜるコジローさんがいる…

「味付けはあいつらだから不味かったら文句はコジロー達に言ってくれよ」

「そんな事言わないよ、一生懸命作ってくれた人に文句とか言うのは失礼だもん。楽しみだな!」

ミヅキはベイカーさんに腕から飛び降りるとコジローさんの元にかけて行った!

ミヅキの元気になった様子にベイカーはほっと息を吐いた。

「大丈夫そうだな…よかった」

笑ってミヅキの後を追おうとすると

「グルル…」

シルバはよくやったとベイカーの足を踏んずけて先にミヅキの元に駆け寄った。

「コジローさん!ご飯出来ましたか?何か手伝おうか?」

ミヅキが声をかけると

「ミヅキ、大丈夫だよもう完成だからね」

ミヅキは完成した料理を覗き込むと…

「これは…なんて料理?」

そこには茶色いようなクリーム色のようなスープ状の物にたくさんの野菜がぶち込まれた物があった。

「匂いは…悪くないね。カレー入れたの?」

くんくんと鼻を動かす。

「前にミヅキが作ってくれたカレーに牛乳をたくさん入れてみたカレーが美味しかったからそれにポルクスさんの牛乳シチューを混ぜてみた」

ま、混ぜちゃったんだ…

ミヅキがあはは…と笑うと

「美味しいものと美味しいものを混ぜれば美味しいものしか出来ないだろ?」

「あ、相性とかあると思うけど…でも美味しそうな匂い出し大丈夫でしょ!食べてみよう」

コジローさんが器に盛ると

「俺はたくさん肉を切ったんだぞ、たくさん入れてくれ!」

アランさんがコジローに頼むと

【なに!?コジロー俺にも肉をたくさん頼むぞ】

【は、はい!】

コジローはシルバ達にもよそってみんなに料理が行き渡ると

「じゃあコジローさんにロブさんみんなも料理作ってくれてありがとうございます!いただきます!」

ミヅキはスプーンいっぱいにすくうと大きな口でぱくんっと食べる。

「ど、どうだ?」

コジローが緊張しながらミヅキに聞くと…

「んっ!!美味しい!最初はカレーの味だけどシチューの味もする!不思議な感じだけど美味しいよ!」

ミヅキがさらに食べるとコジローは安心して自分も食べた。

「ん!本当だ!野菜の甘みや肉の旨みが溶けて美味い!」

「コジローさんもロブさんも料理が上手だね!」

「おい、ミヅキ俺達も肉を切ったんだぞ」

「お前は肉だけだろ!」

アランさんの言葉にじいちゃんが突っ込むと

「お肉も柔らかいし野菜も揃ってて美味しい!二人ともありがとう~」

「ミヅキに喜んで貰えてよかった」

コジローさんが嬉しそうに食べるのを見ると

「今度ユキさんにも作ってあげてね」

「ユキに?」

コジローさんが首を傾げると

「うん!こんな料理好きだって言ってたから教えてあげて」

「そうなのか?ユキも料理頑張っていたもんな…今度帰った時に作ってやろう」

コジローさんが約束すると

【これならまた食べてやってもいいな、また頼むぞ】

シルバにも褒められてコジローは恐縮していた。
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